とあるスナックで
小林
コーさん、なぜ日銀は、国債の直接引き受けをやらないんですか。
コー
うーん、これはおれのまったくの想像だけど、こういうことじゃないんだろうか。
たとえば景気が悪い、デフレだ。そこで政府が国債を発行してそれを直接日銀が買う。もちろん「万年筆マネー」で、そして政府はそのお金でいろいろな事業をしたり、また国民にお金を配る。高橋是清がやったように。当然世の中の実物経済のお金の量が増え、消費が増え、生産が増え、景気が良くなる。そして当然物価が上がる。そうすると次は、悪性インフレを起こさないようにしなければならない、どうするかだ。高橋是清がしたように政府の支出を抑えようとしなければいけないし、時には増税をしなければならないわけだ。対策をしなければ、簡単に言ってしまえば、第一次世界大戦後のドイツやベネズエラのような悪性インフレが起こる可能性があるわけだ。
これが簡単にできるかということだと思う。
昨日まで政府から使え使えとお金をもらっていて、今度はインフレになるからお金はやれない。やれないどころか反対に増税。
これが簡単に納得できるかということだと思う。
高橋是清もこれが大変だったんだと思う。当時は軍部、軍人がいばっていた時代だったからね。
軍部は当然いうだろうよ。インフレ、それがどうした。国防が一番大事だろう。国体、国の防衛があって初めて国が、国民があるんだろう。インフレがなんだ、デフレがなんだ、ふざけるなって。
悪性インフレは国を亡ぼすということが、はたして理解できるのかということだ。
日銀は、高橋是清の「国債を日銀が直接引き受ける」という政策を失敗として考えているのは、この理由だと思う。実際その後、日本の軍部は戦線を拡大していき、日本を破滅に追い込んでいったわけだからね。
これが日銀のトラウマなんだろうな。
小林
なるほど、わかるような気もしますね。去年までお金を配ってもらえていたのが、今年からもらえなくなったら、所得の少ない人ほどダメージは大きいわけですから。物価が上がってくればなおさら、もっともっとお金をもらわないと困るわけでしょうから。
うーん、難しいところですね。