上の続きです。
なかなか「ポーの一族」まで話がいきつかないのですが、続く花組公演「邪馬台国の風」は、中村さまが、たまたま行ける日に切符が取れたそうで、観劇されました。だからうらやましいことに、中村さまは生でキキちゃんを、見ておられるんです!!!
しかし、劇そのものはとてもつまらなかったという話で、ネットで評判を読んでもそうでした。
花組公演『邪馬台国の風』『Santé!!』初日舞台映像(ロング)
とはいうものの、半端なくキキちゃんはステキだったみたいですし、ショー『Santé!!』はオンデマンドで見たのですが、すばらしいですし、円盤を買う予定でいます。
そして、キキちゃん花組最後の作品「ハンナのお花屋さん」です。
この作品は、評価が二つに分かれるようですが、なにしろ私は、キキちゃんにはまってから円盤を買いましたので、大満足です。
明日海さんの役は、デンマーク人で、オックスフォードを出たフラワーアーティスト、クリス・ヨハンソンです。
クリスは、ロンドンの高級住宅地ハムステッドで、“Hanna's Florist(ハンナのお花屋さん)を開いていますが、ハンナとは、彼の亡き母の名前です。
父親のアベルは生きてデンマークにいます。しかし、クリスは父親と関係をこじらせていて、もう長く会っていません。
明日海さんにお花屋さんが似合うかといいますと、そりゃあ、似合わなくはないんです。なにしろ明日海さんは芸達者ですから、たいていの役はこなされます。
おまけに、花屋さんといいましても、クリスはデンマークの貴族の家の出で、オックスフォード主席卒業。34歳独身、人のいいイケメン店長、というのですから、似合います。
物語は夢で始まります。クリスが幼い頃に暮らした、デンマークの森の夢です。
小鳥がさえずり、花が咲き、妖精が舞う。やさしい父がいて、笑顔の母がいて、自分がいる。
おとぎ話のような懐かしい夢が覚めると、クリスはロンドンの自分の店にいて、花屋の仲間たちが、34歳の誕生日を祝ってくれます。
そこから、フラワーアーティストとして成功したクリスが、店をどう展開していくか、そして、クロアチアからの移民・ミア・ペルコヴィッチとの出会いへと話はすすんでいくのですが、正直、ちょっと山のない展開になっているのではないかなあ、と思います。
わけても、弟を地雷の爆発で失い、心に傷を追ったミアと、クリスがいかに心を通わせていくかは、肝心な部分がネットでのやりとりになっていて、iphoneやMacBookAirが小道具として使われているのは、それなりに楽しいのですが、ちょっと、あまりにも、直にお互いを確かめ、ぬくもりを伝える部分が少なすぎる気がします。
結局、この物語の核は、お花屋さんとは次元のちがう過去で、キキちゃん演じるアベル、舞空瞳さん演じるハンナ、二人の愛にあります。父とのこじれを解消し、父母の愛を確信することで、クリスの指針は定まり、自身の愛にも積極的になれる、というわけなのですから。
時間は短いのですが、アベルとハンナの物語こそが、ロマンティックで、いかにも宝塚的(と、キキちゃん本人が言っていました)な一目惚れにはじまり、深く愛しあいながら、悲劇に見舞われ、ある意味古風な定番かもしれないのですが、キキちゃんと瞳ちゃんの渾身の演技で、生の舞台でもないのに思わず泣いてしまうほど、心に刺さります。
淡いベージュのジレを着て、貴公子然としたキキちゃんの姿は、クリスの夢に登場した瞬間から、目を奪います。そして、誠実さゆえに、義務と愛に引き裂かれるアベル。
「ハンナのお花屋さん」のアルバムには、キキちゃんの歌は、聞くだけで涙腺がゆるむ「消えない罪」しか収録されていません。
♪〜憎しみゆえの悲劇、背負う十字架に、心は血を流し、
愛は消え、世界は闇 失われた愛、失われた命、永久に
しかし、最近、キキちゃんのスペシャルアルバムが発売されまして、こちらには、「 Miracle-Falling in Love-(奇跡-恋に落ちて-) 」「Listen to your Voice(心の声に耳をすませて)」の2曲も収録されました。「Listen to your Voice」の方は、この劇の主題歌とも言えて、何度も繰り返し歌われるのですが、最後に、短く、アベルとハンナ、クリスとミアの4人が歌います。これが、どこにも収録されていなくて、ちょっと残念です。
ハンナ役の瞳ちゃん、現在、星組トップ娘役ですが、このとき、まだ入団して2年目だったそうなんですね。
リトアニアからの移民(第2次大戦後のソ連侵攻から逃れて)の娘でありながら、森の妖精のように現実離れしていて、下手をするとまるっきりリアリティがなくなる役を、見事に演じていました。キキちゃんとの並びも、主役カップル(クリスとミア)をくってしまうほどに美しく、ヒロイン力抜群の娘役さんです。
そして、なんといっても、明日海さんです。ほんとうに、驚くべき芸達者で、あまり宝塚らしくない現代的な役を、きっちりと、情感を持って演じておられました。
おかげをもちまして、この作品は、キキちゃん花組時代の代表作になったと思います。
「ハンナのお花屋さん」の作・演出は、植田景子氏。宝塚初の女性演出家です。
代表作は、この2年後、明日海さんの退団公演に書いた『A Fairy Tale —青い薔薇の精—』じゃないでしょうか。
実は先日、山崎育三郎の武道館コンサートで、ひさしぶりに生明日海さんを見てまいりました。
「ポーの一族」から「哀しみのバンパネラ」を歌われたのですが、これが、実によかったんです!
私にとっての「ポーの一族」は、少女時代の一番お気に入りの漫画でして、小池修一郎氏が、「これを舞台化したくて宝塚に入った」というようなことをおっしゃっていたのには、大きく頷けて、確かに、エドガーは明日海さんにしかできない!と、「桜華に舞え」以来の生宝塚を実現するべく、またも中村さまをお誘いし、宝塚ホテルとセットのSS席を手に入れました。
ただ、私が最初に「ポーの一族」舞台化の話を聞いたときには、確かまだ、キキちゃん宙組転出の話は出ていなくて、「金色の砂漠」をなにかで見た後でしたので、「ジャーのビジュアルってアランにぴったり!」と思ったりしていました。柚香さんはちょっと、アラン役にはきつすぎる気がしまして。
しかしまあ、身長を考えますと、「もしキキちゃんが花組にいたら、ポーツネル男爵の方があってたかも」と、今では思っています。
キキちゃんと明日海さんと漫画といえば、実のところ私は、山岸涼子さんの「日出処の天子」を見てみたかったんです!
この「人ではない」聖徳太子ができるのって、明日海さんしかいません!!!
キキちゃんの身長の高さも、蘇我蝦夷の役ならぴったり! と花組時代の役柄を見ていて、思ってたんですね。
夢に終わりましたけれども。
宙組公演「アナスタシア」のことも書きたいのですが、またもや私は家庭の事情で動けない状態となりまして、ライブ配信で見るつもりでおります。
とりあえず次回は、やっと、「ポーの一族」です。