諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

188 近未来からの風#24 挑むコンピテンシー!

2022年10月09日 | 近未来からの風
秋の山で4 瑞牆山

「VUCA」(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)(不安定,不確実,複雑,曖昧)という未来像での学校教育はどうあるべきか、各国の有識者はどう考えるのか「OECD(経済協力開発機構) Education 2030 プロジェクト」から見て行きたい。
テキストは、
白井 俊『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来:エージェンシー、資質・能力とカリキュラム』ミネルヴァ書房 (2020/12/22)
参考のHP
OECDにおける Agencyに関する議論について - 文部科学省

第4章 2030年に求められるコンピテンシーの要素 

この章では、以前に話したコンピテンシーについてより具体的になっていく。
コンピテンシーについてもう一度定義を確認しておく。

知識や〔認知的、メタ認知的、社会・情動的、実用的な〕スキル、態度及び価値観を集結することを通じて、特定の文脈における複雑な要求に適切に対応していく能力

既存の日本語の無理に翻訳すると“学力観”とか“能力群”もっとくだけて“身に着けさせたい力”と言ったら良いのだろうか。
ともかくも、この章では不安定,不確実,複雑,曖昧な近未来に向けての必要なコンピテンシーを探求していくという難事業を行うわけである。

まず、第4章のプロットを先に上げておく。
1 2030年に求められる「知識」
(1)知識の類型
(2)知識とスキルの関係
(3)教科の知識
(4)教科横断的な知識
(5)エピステミックな知識
(6手続き的知識
2 2030年に求められる「スキル」
(1)スキルの類型
(2)認知的スキル
(3)社会・情動的スキル
(4)身体・実用的スキル
3 スペース2030年に求められる「態度及び価値観」
(1)態度及び価値観の重視へ
(2)態度及び価値観と知識・スキルの発達
(3)AI時代における態度及び価値観
4 3つのドメインの構成要素(コンストラクト)
(1)コンストラクトのリスト
(2)エージェンシーや変革をもたらすコンピテンシーのコンストラクト


このそれぞれの内容を学び、紹介したいが、他の章以上に本ブログ扱い切れない。
そこで各節ごとのキーセンテンスなどを未熟ながら私の主観で抜粋し、エッセンスでもお伝えできればと思う。

1 2030年に求められる「知識」
(1)知識の累計

最終的に、①教科の知識、②教科横断的な知識、③エピステミックな知識、④手続き的知識の4つに分類することにされた。

(2)知識とスキルの関係
特に、批判的思考力や創造的思考力などのスキルの重要性が強調されることの裏返しとして、例えば、「Googleで調べれば、知らない知識もすぐに補充することができる」といった意見が出されたこともある。確かに、すぐに調べることができる知識もあるだろうが、そうした知識は同時にすぐ忘れてしまうような知識であり、必要な場面で取り出して使うことができないタイプの知識でもあろう。

OECDのラーニング・コンパスにおいても、すべての生徒が未知の状況にも的確に対応していくことが出来るようなツールとして、基盤となる教科の知識や、様々な学問分野における思考パターンを身に付けることの重要性が強調されている。

実際、『学び方を学ぶ』といっても、これを何かを学ぶことから独立して考える事は不可能である。我々の立場は、知識と発達の両方の様子が重要であり、その両方が確実に担保されるような慎重な政策手段が取られねばならないとするものである。

(3)教科の知識
「教科の知識」が重要なのは、それらが、新しい知識が生み出されるための原材料(raw materials)としての役割を持つからであり、「教科の知識」は、「教科横断的な知識」、「エピデミックな知識」、「手続き的知識」という他の3つの知識の類型の基盤になるものだからである。

「教科の知識」が、新しい知識を身に付けたり、教科横断的な知識やエピステミックな知識、手続き的知識を獲得していくための基盤となる以上、これが欠落している場合、その生徒は将来の可能性が奪われてしまうことにもなりかねない。

教科の知識は2030年においても引き続き不可欠なものであることには変わらないだろう。


(4)教科横断的な知識
重要なのは、知識の断片ではなく、構造化された知識であって、そのためには、カリキュラムが、各教科の学問原理(ディシプリン)に基づいた順序性や体系性、学習の過程に照らして適切なものとなっていることでありそうした観点に留意することが求められるのである(OECD、2030a)。

そうなると、「遠い転移(far transfer)」を可能にしていくためには、生徒が、既有知識と新たな状況の間の概念的な近似性や構造的な近似性を見いだすように、教師が支援していくことが重要になってくる。そうすることによって、当初は生徒が「遠い転移」と捉えていたものも、「近い転移(near transfer)」として認識することができると考えられる。

(5)エピデミックな知識
「各学問分野の専門的知見を有する実践家が、どのように仕事をしたり、思考したりするかと言うことについての理解」とされており、エピデミックな知識を獲得することで、生徒は学習の目的を見つけることができるようになったり、学習したことを適用することについて理解したり、教科の知識を深めることができるとされている(OECD、2019b)。

エピデミックな知識を深めていくためには、例えば、「この教科では何を学んでいるのか、また、それはなぜなのか」「この知識を、自分の生活において活用することはできるのか」「科学者だったらどうするか」「医者だったら、どのような倫理に従っているのか」といった問いに答えていくことが考えられる。そうすることで、獲得した知識が現実的な課題解決に必要か理解することができるし、未来に向けて世界中をより良くしていくためにはどうしたら良いかについても、よりよく考えることができるようになるだろう(OECD、2030b)。

(6)手続き的知識
デザイン思考やシステム思考などの手続き的知識は、上述のように、一定の手順を含んでいたり、問題の特定や解決につながるような思考パターンを重視している。こうした思考パターンについての知識を獲得することで、生徒は、自ら目標に向けて進んでいく(navigate)ことができるのである。

教育の場面において、デザイン思考やシステム思考などの手続き的知識を学ぶ意味は、「物事の仕組みが、目的のためにどのように組織化されているのか、また、もし目的達成につながっていないのであれば、どのように仕組みを維持することが難しいのかを理解する」ことである。


2 2030年に求められる「スキル」
(1)スキルの累計
ラーニング・コンパスの整理では、スキルを① (メタ認知を含む)認知的スキル(批判的思考力、創造的思考力、学びの学習〔learning-to-learn〕、自己調整などを含む)、②社会・情動的スキル(共感性、自己効力感、責任感、共同性を含む)、③身体・実用的スキル(新しいICT機器の活用含む)、の3つに分類することとされている。

(2)認知的スキル
ここで言うメタ認知とは、「自ら学習について自覚しており、また、コントロールしている状態」(OECD、2016a)とされており、自らの知識やスキル、態度及び価値観を、どれだけ身につけているか、あるいは、それらをどのように活用しているか、といった状況を認識する能力が含まれる。

AIにおける仕事の代替はさらに進んでいくと考えられるが、その例外となるのが創造性を必要とする仕事である。現在のAI技術を前提にすれば、「新規なアイディアや優れたアイディアを考えつくことができるような力」いや「創造的な方法で問題を解決する力」を必要とするような職業については、代替えされる可能性は低いと考えられる。

フィンランド、ドイツ、ハンガリー、オランダにおいては、労働者の16%が過去2年間で自分たちのスキルが陳腐化したと認識していると言うことであり、特にデジタルやICT関連のスキルは、陳腐化が早いとも指摘されている。

個別の新しいスキルを獲得すると言うことよりも、新しいスキルを継続的に獲得し、自らのスキルを常に更新(update)していく力と言うことになる。


(3)社会・情動的スキル
単に物理的なお世話をするだけでなく、例えば、気配りや社会性、高齢者に対する敬意などの社会・情動的スキルを、より一層必要とするようになるだろう。こうしたスキルはAIによっては代替えが困難なのである。

他者視点の獲得(perspective-taking)と言う認知的スキルが十分でなければ、他者への共感性といった情動的スキルを育んでいく事は難しくなるだろう。


(4)身体・実用的スキル
こうしたスキルの中には家庭などの環境において自然に身に付くものも多いと考えられるが、そうなると、教育場面においては、実用的スキルについてどのように考えるのかが重要になってくる。この点、コンセプト・ノートでは、「実用的スキルに対する特別な必要性や特定の教育目的を担保すること、また、そのために教育的に介入していく必要性は、状況によって変わってくる」とされている。

若い頃に身に付けた習慣は、大人になっても変わらないことを示しているから、早い段階で健康に関する習慣を形成することが重要になる。


結構な長文になったので今回は途中までです。




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