諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

250 幸福をどうするか #03 統計の輪郭(国際調査)

2024年11月17日 | 幸福をどうするか
のんびり八ケ岳🈡 赤岳鉱泉からの径を楽しみながら、美濃戸口登山口に到着。コスモスがバス停横で咲いていました。

目に見えない幸福が部分的な尺度で測って合算すると、それなりに「幸福」が見えてくる。
それを「幸福度」として数値で表す。
統計的に幸福が定義できうるのか、ということでもある。

今回は、幸福度の国際規格を見てみよう。

世界幸福度ランキング 2024

有名な「世界幸福度ランキング」である。
下の図が2024版である。(「rootus」さんHPから)



この調査での日本の「幸福度」の順位は143か国中51番目である。
年々下落していることが話題になったりする。
この印象が一人歩きしていて、これをどう理解するべきなのか。条件で違いの大きいフィンランドの人の幸せと日本人の幸せを比べられるのか?

内容に立ち入ると、幸福度を決定する因子は7項目である。
※印は客観値

1 一人あたりGDP:(※)
 〇 ただしドル換算のため為替ルートが関係する。主観は入らない。
2. 社会的支援・周囲のサポート
 〇「困ったことがあったら、必要なときにいつでも助けてくれる親戚や友人がいますか?、それともいませんか」という質問に対する回答の全国平均値による。
3.健康寿命:(※)
 〇 WHOの統計による客観値。
4.人生の自由度
 〇「あなた自身の人生における選択の自由について、満足ですか?」という問いに「yes」と答えた人の割合
5. 他人への寛容さ・ボランティア活動
 〇「過去1カ月にいくら募金しましか?」という問いを一人あたりGDPで調整した割合
6. 国への信頼度・腐敗の少なさ
〇「あなたの国の政府に汚職/腐敗が蔓延していますか?」「ビジネスに汚職/腐敗が蔓延していますか?」という問いに「yes」と答えた人の割合の平均
7.基準値・残差(カントリルラダー)
〇 上の6つの因子で表せなかった主観的な幸福度

これらによって、各国ので約1,000人のサンプルをとって行われるらしい。
評価は、10段階で、可能な限り最高の人生を10、最悪の人生を0とし、回答者に自分の人生が0から10のどの段階にあるかを評価してもらうという。

注)なお、日本語のオフィシャルなHPが見当たらす、英語の原典?のサイトからPDFの「Report」をダウンロードするらしい。

さて、この7つの因子でその国の「幸福」を示しているという。
そしてそのうち5因子は回答者の主観(感覚)が含まれている。特に7番目の「基準値・残差(カントリルラダー)」は今の実感としての幸福感を率直に聞くと言う因子である。

「51位」の実態
総ポイントで比較するとフィンランドが77点に対して、日本は61点である。
つまり、フィンランドの幸せ風船より2割程度日本の幸福風船は小さいことになる。

ところが、7つの因子ごとで見てい行くと様相が異なってくる。
上のグラフの色別の因子の幅を見ていただきたい。

《scoreの高い因子》
因子1~4までは統計的にも順位は低くない。
つまり、「GDP」、「社会的支援」、「健康寿命」、「人生の自由度」だけなら、なんのことはない20位のイギリスより日本は「幸福」な国ということになる。

《scoreの低く見える因子》
ところが因子5~7が低い。
しかし、そこには疑問を感じる面がある。
因子5の「他への寛容さ」は、質問項目が募金の頻度なのである。
そもそもキリスト教では教会への献金、イスラム圏では「喜捨」が半ば習慣化しているのである。
その点日本では、「お布施」といっても1カ月の間隔では行わないし、あるいは被災地への募金や共同募金もそれほどの頻度があるものではない。
飲多くの人の感覚として募金を他に「対する寛容」と解釈するのに違和感があるだろう。
また、因子6の「汚職/腐敗」指摘することが習慣であることが幸福かというと多くの日本人には感覚的に難しい。

このように、日本人の幸福度を下げている因子5と因子6について世界各国の共通の尺度になりにくい面があると言えるだろう。

そして同じように日本人は、「基準値・残差(カントリルラダー)」も同じように低いことに注目したい。
この調査では東アジアの国々では、国民性でこの因子を控え目に回答する傾向を認めらているらしい。
ただ、日本のこの因子の低調さを、単なる国民性と解釈するのは早計な気がする。
かえってそこに現在の日本人のリアルな問題を表しているように思う。

この国際調査は、不備を指摘することはたやすいのだが、国際比較の中で次の2点が問題としてまとめられるように思う。

日本人の平均的な幸福感は「60点」であること。
この国際調査のスコアーが「6.060」であるのに対し、前回紹介した内閣府の「生活の質に関する調査結果」の中の、「現在の幸福感」の平均値がやはり「6.1」ポイントだったのである。
2つの調査の調査因子は異なるのだが、いずれにしても幸福感は「60点」というのは偶然の一致ではないように思う。

若い世代にはポイントが低い
また、国際調査でも日本の若い世代の幸福感は低いらしく、同じく国内調査でも顕著に20代前半の幸福感が低いのである。(前回参照)
実際、不登校の増加や自死の問題など、若い世代の活力の足掛かりについて懸念されているわけだが、幸福感の観点からも、若い世代の展望の希薄さが現れているように思われる。

そこには若い世代中心に、幸福への手ごたえが想像以上に低いことが窺われるのである。

次回、ユニセフの子どもの幸せの調査を見に行くことにする。





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