諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

249 幸福をどうするか #02 統計の輪郭(国内)

2024年11月04日 | 幸福をどうするか

のんびり八ケ岳 緩やかな帰り道  秋の針葉樹と沢の音

ユートピアの語源は「ウ・トポス」というラテン語で、「どこにもないところ」という意味らしい。
「幸福」についても青い鳥のように見える人にしか見えないものもしれない。
幸福はこうしたものだから、あまり正面から論じられてこなかった。
ところが、頂上が雲で見えないこの幸福という山を本気で登る試みがはじまっている。
幸福へ直登ルートをたどってみよう。


1 統計ルート(国内)

 幸福に幸福度という尺度をあててみると、実態感が出てくる。
気体は目に見ないが、袋に入れて口をギュッと縛れば測れる対象となりうる。
その「幸福」それが幸福という全体像にどの程度近似しているか分からないが、最近いろいろな尺度で幸福を測る取り組みが進んでいる。
その一つが、内閣府経済社会総合研究所 幸福度研究ユニットによる「生活に質に関する調査結果」である。2019年から始まり今年からインターネットでの調査になった。政府も幸福に直接アクセスしようとしているのがわかる。
※ 行政のPDF資料から引用します。引用は一部なので直接リンク先から参照してください。

第 1 回 生活の質に関する調査結果(インターネット調査)

また、2019年からの推移が次のベージでわかる。

満足度・生活の質に関する調査報告書2024 ~我が国のWell-beingの動向~(概要)

で、この調査は、幸福の尺度を次の14種類を設定している。

①主観的幸福度、②協調的幸福感尺度、③生活満足度、④感情バランス、⑤心理的機能に基づく幸福度、⑥生活領域での満足度、⑦不安感、⑧子育てに対する感じ方、⑨制度への信頼、⑩一般的信頼感、⑪自己有用感、⑫一般的サポート、⑬ニート・ひきこもり、⑭うつ尺度等

そしてそれぞれの偏差状況を数値化し、日本人の年ごとの幸福度ということにしているのである。
少しだけ取り上げるてみる。

① 主観的幸福度
まず、各論の前に実感としの幸福感を聞いている。



◆ 主観的な幸福度は60点ぐらい!今ひとつ冴えないという印象。
◆ 分布を見ると「5」前後と、「7~8」との2極がわかる。「4」以下も少なくない。一種の格差? 

男女別、年代別である。
◆ 女性の方が少し主観的幸福感が高い
◆ 10代後半から20代前半が低い。その後はほぼ横ばい

大まかにそんな傾向がわかる。


④ 将来の幸福感


 

◆ 「0」付近が中心で、「将来が明るい」とは言えない、現状維持感?の現れ。

⑩ 幸福とかかわる様々な心の働き
 
◆ すべの観点で20代が低いことが顕著。20代のリアルが一定現れているのではなか。

これらのデータでわかるのが、幸福度は60点、今後も明るくは感じていない、そしてその思いは20代で顕著であると言える。

以上、ごく一部を取り上げたが、アンケートと集計によって、大まかではあるが日本人の幸福度が見えてくる。
ネット調査を利用した統計的調査によって、今後ますます幸福度は数値に置き換えらるのだろう。
そして、内閣府は2019年からの推移を示しながら、改善傾向ということを述べているが、国際調査と相対すると推移のレベルでは小さい変化といわざるえないだろう。

 

そして、デジタル庁が力を入れているのが、地域別(自治対別)の「Well-Beingの実態」である。

デジタル田園都市国家構想実現に向けた 地域幸福度(Well-Being)指標の活用

例えば、東京都 千代田区を検索すると、次のようなページがあらわれる。




同様にこのサイトの「ダッシュボード」から全国の地域の「Well-Being」がわかるようになっている。
このサイトの特徴は、23の尺度(因子)を「客観データ」と「主観データ」が併記されていることである。
たとえば、千代田区は客観的には「医療・福祉」51ポントとあまり高くないのに、住民の意識(主観)では72ポイントと上々ということになる。
同じように住民の主観が重要な因子ではそれを参考にして政策を立案することが、多分住民本位ということになるだろうし、財政面でも有効である。
ただし、防災などは専門性も必要な因子では民意を過信してはいけない面もある。

まだ立ち上げたばかりの統計としてサンプル(調査参加者)の数や年代層のばらつきなどがあるなど不備もあるが、統計処理の所産で、都道府県レベル、市町村レベルの地域改善の方針や推進の根拠として活用されていくだろう。

地域Well-Beingの尺度(因子)は以下の通り、

医療・福祉、買物・飲食、住宅環境、移動・交通、遊び・娯楽、子育て、初等・中等教育、行政、公共空間、都市景観、事故・犯罪、自然景観、自然の恵み、環境共生、自然災害、地域とのつながり、多様性と寛容性、自己効力感、健康状態、文化・芸術、教育機会の豊かさ、雇用・所得、事業創造

以上のように、「幸福」は統計学の手法をつかって近似値的に輪郭が鮮明化できるのではないかとう試みが急速である。
文学賞を獲得した本が売れる時代から、ユーザー(読者)の評価がネット上で集約され、それも有力な評価になっているが、
「幸福」もネットの統計によるユーザー志向によりその中身が規定されつつあるのだろう。

ただし、これらの統計は、行政サービスのための幸福の定義であって、いかにも享受されるものとして幸福がある。
このことは今後とも幸福を考える大きな視点でもある。

ところで、子どもたちのWell-Beingはどうなっているのか。
新設された子ども家庭庁の調査が待たれるのだが、子どもには教育やそれぞれの成長・発達の尺度もある。
子どもの尺度を、UNICEFはどう考えればいいのか、次回は、

子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か

をとおして子どもたちのWell-Beingの測り方を見ていきたい。


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