<退学率を読む(5)>
◆ 親の懐具合 学生を直撃
「卒業直前の悲劇を知ってほしい」というメールを首都圏の短大教授(58)からもらった。
退学率上昇の背景には、学生自身にはどうしようもない経済的事情も横たわっているという。
教授の短大は単位取得と授業料全額納付が卒業の要件だが、毎年、年額約120万円の授業料が払えず、卒業間際に退学に追い込まれる学生が後を絶たない。このケースは「除籍」扱いとなり、取得した単位はすべて無効。学歴は「高卒」のままだ。就職が内定していても取り消されるという。
昨年まで2、3人に過ぎなかったのが、今年は約20人に。いずれも、親の失業で授業料が払えないといった、最近の不況に端を発したものだ。奨学金を受けている学生もいたが、生活費に回されていた。親から窮状が伝わっておらず、卒業式になって初めて、自分が卒業できないことを知る学生さえいる。
周囲の大学関係者に聞いても、今は珍しくない現象だという。「一生懸命勉強してきた学生を、こんな形で挫折させていいのか」。確たる救済手段がないのが悔しいと教授は嘆き、訴える。「国などで特別奨学金貸与の制度を設け、支えてもらえないか」
親の懐具合に左右されず、子どもの力をはぐくむ――学びの場にはそんな機能もあっていい。せっかくの全入時代。学生は社会資源という認識を持ち、悲劇に幕を下ろす方策を探りたいものだ。(松本美奈、2010年3月5日掲載)
(2010年4月13日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/campus/jitsuryoku/20100409-OYT8T00653.htm
<退学率を読む(6)>
◆ 経済的ピンチ 寄り添って
前回、親の経済的事情で授業料が全納できないため、卒業直前に除籍になり、取得単位がすべて無効と帰してしまう学生の窮状を紹介したところ、東京家政学院大学(東京)の山田順子准教授から、「うちの大学は違います」というメールが来た。
「親の経済状態で単位がすべて無効とは、むごすぎる」。憤りをこめての一報だった。
同大の場合、たとえ4年次の授業料は全納できなくても、3年までの単位は無効とはならない。いったん除籍になった後も入学金の半額15万円を納めれば再入学を認めており、実際、来月には、昨年除籍の学生が4年に再入学するという。他大学への編入学も可能だ。
大学によって対応が異なるのは、学費納入と単位の認定について明確に定めた共通の規定が公にはないからだ。すでに認定された単位まで無効になってしまうのは理不尽のように感じるが、「違法状態とまでは言えない」(文部科学省大学振興課)。
長引く不況で、在籍期間を通した親の懐事情の予測は難しいだけに、学生のピンチにどれだけ柔軟に寄り添えるかといった側面からも、「大学の実力」が問われる。
逆に受験生側は、緊急時の奨学金を用意しているか、授業料の分納制度はあるか……大学の学則を丹念にチェックし、オープンキャンパスなどで積極的に尋ねてほしい。それが、「受験生の実力」だ。(松本美奈、2010年3月12日掲載)
(2010年4月15日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/campus/jitsuryoku/20100412-OYT8T00312.htm
◆ 親の懐具合 学生を直撃
「卒業直前の悲劇を知ってほしい」というメールを首都圏の短大教授(58)からもらった。
退学率上昇の背景には、学生自身にはどうしようもない経済的事情も横たわっているという。
教授の短大は単位取得と授業料全額納付が卒業の要件だが、毎年、年額約120万円の授業料が払えず、卒業間際に退学に追い込まれる学生が後を絶たない。このケースは「除籍」扱いとなり、取得した単位はすべて無効。学歴は「高卒」のままだ。就職が内定していても取り消されるという。
昨年まで2、3人に過ぎなかったのが、今年は約20人に。いずれも、親の失業で授業料が払えないといった、最近の不況に端を発したものだ。奨学金を受けている学生もいたが、生活費に回されていた。親から窮状が伝わっておらず、卒業式になって初めて、自分が卒業できないことを知る学生さえいる。
周囲の大学関係者に聞いても、今は珍しくない現象だという。「一生懸命勉強してきた学生を、こんな形で挫折させていいのか」。確たる救済手段がないのが悔しいと教授は嘆き、訴える。「国などで特別奨学金貸与の制度を設け、支えてもらえないか」
親の懐具合に左右されず、子どもの力をはぐくむ――学びの場にはそんな機能もあっていい。せっかくの全入時代。学生は社会資源という認識を持ち、悲劇に幕を下ろす方策を探りたいものだ。(松本美奈、2010年3月5日掲載)
(2010年4月13日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/campus/jitsuryoku/20100409-OYT8T00653.htm
<退学率を読む(6)>
◆ 経済的ピンチ 寄り添って
前回、親の経済的事情で授業料が全納できないため、卒業直前に除籍になり、取得単位がすべて無効と帰してしまう学生の窮状を紹介したところ、東京家政学院大学(東京)の山田順子准教授から、「うちの大学は違います」というメールが来た。
「親の経済状態で単位がすべて無効とは、むごすぎる」。憤りをこめての一報だった。
同大の場合、たとえ4年次の授業料は全納できなくても、3年までの単位は無効とはならない。いったん除籍になった後も入学金の半額15万円を納めれば再入学を認めており、実際、来月には、昨年除籍の学生が4年に再入学するという。他大学への編入学も可能だ。
大学によって対応が異なるのは、学費納入と単位の認定について明確に定めた共通の規定が公にはないからだ。すでに認定された単位まで無効になってしまうのは理不尽のように感じるが、「違法状態とまでは言えない」(文部科学省大学振興課)。
長引く不況で、在籍期間を通した親の懐事情の予測は難しいだけに、学生のピンチにどれだけ柔軟に寄り添えるかといった側面からも、「大学の実力」が問われる。
逆に受験生側は、緊急時の奨学金を用意しているか、授業料の分納制度はあるか……大学の学則を丹念にチェックし、オープンキャンパスなどで積極的に尋ねてほしい。それが、「受験生の実力」だ。(松本美奈、2010年3月12日掲載)
(2010年4月15日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/campus/jitsuryoku/20100412-OYT8T00312.htm
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