《教育と個人情報保護を考える会から》
★ ユネスコ;「教育効果についての確固たる証拠はほとんどない」
事務局
★ アナログ教育への回帰
lCT先進国のスウェーデンでは教育のアナログへの回帰が進んでいるという。
「教育新聞」(4月26日)によると、2022年に政権交代して就任した教育大臣は「近年の学校現場のデジタル化は無批判で行き過ぎだ」と批判、「実験だった」にすぎないと総括し、2023年9月の新学期からは、アナログに重点を置いた教育に戻しているという。
同紙によればデジタル化の問題として以下のようなことが取り上げられている。
・紙の教科書の使用が少なく、スクリーンを見る時間が長過ぎる
・紙の本の方が見直しやすく、要点を思い出しやすく、内容をよく理解でき、読書の時間が長くなる傾向がある、といった研究結果
・デジタル・デバイスでは説明を聞きながら他に注意が向きがちで、マルチタスクになり、集中力が低下するため学習を阻害するといった意見
・幼児期にデジタル・デバイスに慣れてしまうと、現実の大人との直接的な関わりが減り、言語発達、注意力、社会的スキルの発達が妨げられるといった批判。
・低年齢の子どもたちでは、手で文字を書く練習が不足することで、運動能力、脳の活性化、言語発達などが低下するとの懸念。
・教育の新しいデジタル化戦略はパブコメで脳科学者や小児科医を中心に強い反対があり、廃案。
・世界保健機関(WHO)の勧告では2歳未満の子どもにデジタル・デバイスは使用させず、2歳以上の末就学児も1日1時間未満に制限すべきとの指摘。
★ 日本は10年遅れで失敗を繰り返そうとするのか
スウェーデンでは2011年から教育のデジタル化が進められてきた。
しかし、10年以上経ち、このままデジタル依存すると取り返しのつかない状態になるとの危機感が出てきたのだろう。
日本では今年度から学校でデジタル教科書の導入が始まったようだが、10年遅れで失敗を繰り返そうというのだろうか。
★ デジタルテクノロジーは教師の代替にならない
国連「ユネスコ」世界報告書(2023年版)が昨年7月に発表された。そこではICT教育に関し、「適切な使用を」求める警鐘を鳴らしている。
長大な報告書であるが、キーメッセージだけでも簡単に紹介したい(グーグルの機械翻訳による)。これが世界の流れであることを共有したい。
まず書かれていることは「教育におけるデジタルテクノロジーの付加価値に聞する確固たる証拠はほとんどない」である。
次に述べていることは、「証拠の多くは、それを販売しようとしている人々から得られている」。
要するに、教育効果があるといっているのは、教育現場の教職員ではなく、デジタルテクノロジーで利益を得る業者であるということだ。
そして、
「テクノロジーの急速な変化は、教育システムに適応するための負担をかけている」
「オンラインコンテンツは、品質管理や多様性の十分な規制がないままに増加している」
と指摘している。
すでに退職した身の私としては、実際に、デジタルテクノロジーで悩んでいる教師たちが多くいるのではないか心配している。
最後にユネスコ事務局長の「序文」の一部を紹介すると、テクノロジーによる個別最適な学びへの誘惑について
「この力強い希望は、教育の中心にある基本的な社会的および人間的な側面を忘れさせます。……教師の人間性を画面に置き換えることはできません。……教師とテクノロジーの関係は補完的な関係でなければならず、決して代替可能な関係ではありません」
この言葉はいま文科省や経産省、そして内閣府が進めようとしているAIを駆使した「個別最適な学び」に対して、痛烈な警告となるのではないだろうか。
『教育と個人情報保護を考える会 NO.47』(2024/12/16)
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