☆ 二審も都側が敗訴
職員の残業代未払い訴訟
都職員の坂本通子さん(五九)が、都に未払いの残業代を支払うよう求めた裁判の控訴審で、東京高裁は二十八日、都に約十三万八千円の支払いを命じた一審判決を支持し、都側の控訴を棄却した。
判決では一審同様に、坂本さんが都教育庁多摩教育事務所に勤務時の二〇〇五年十二月から〇六年三月分の超過勤務手当が、一部しか支払われなかったと認定。その理由について「事務所に超過勤務の実績に見合う予算がなく、手当を抑制するため」と指摘した。
判決について都教育庁は「大変遺憾。判決内容を詳細に確認して、今後の対応を検討していく」とした。
『東京新聞』(2010/7/29【地域の情報】)
※一審地裁勝訴判決時(2010/3/25)の原告・弁護団・労組声明
1.東京都職員として現在も勤務中で、都庁職教育庁支部の組合員でもある原告坂本通子は、超過勤務を行ったのに「超過勤務手当」を超勤時間に相当する分支給されていないのは不当であるとして、被告東京都に対し未払いの超過勤務手当452,740円の支払い等を求め、2008年5月28日、東京地方裁判所に提訴した。東京地方裁判所は本日午後1時30分、原告の主張をほぼ全面的に認め、被告東京都に対して超過勤務手当として、金137,910円を支払うよう命ずる判決を下した。
2.本件で、被告東京都は、原告坂本が勤務した多摩教育事務所において、超過勤務手当の支給は東京都勤務時間条例に基づき適正に支給されていること、原告坂本は超過勤務を命じたことがないにもかかわらず、勤務をしていたもので、同条例によって必要性、緊急性が認められない場合には超過勤務手当を支給しなかったこと、仮に超過勤務手当が発生していても大部分は時効により消滅すること等を主張した。
これに対し本判決は、「原告を含む一般職の地方公務員に対し…労働基準法37条も原告に対して適用される」とした上で、「原告は、現に正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられ、そのために正規の勤務時間以外の時間や休日に担当分掌上の業務を行っていること、原告の超過勤務は、いずれも、これが行われなければ、多摩教育事務所の公務が渋滞するなど、公務の円滑の遂行に必要な行為であったこと、これら超過勤務の実績については、管理課長において、その勤務ぶりを常日頃から現認しているばかりか、原告から補助簿の提出を受けるなどして不定期ではあるけれども業務の報告を受けることにより知悉していた上で、かかる超過勤務を容認していたこと、また、超過勤務の実績に見合うだけの予算措置が講じられていなかったために補助簿記載の超過勤務時間数の一定割合のみを命令簿に記載させて超過勤務手当の申請を事実上抑制していたこと(なお、超過勤務手当について予算等の財源措置を講じていないからといって、被告が地方公共団体としてその負担すべき超過勤務手当の支給を拒み得ないのは当然であり、かかる取扱いが不相当であることは明らかである。)からすれば、原告に対しては、各超過勤務をするに当たっては、管理課長から黙示的に超過勤務命令があったものと認めるのが相当である。」と判断し、原告に対して被告が超過勤務手当を支払わなければならないことを明快に認定した。
その上で、消滅時効については、東京都当局が原告に超過勤務手当の支払いがされるであろうとの信頼を惹起させて原告の時効中断措置をとることを怠らせるなどの信義に反する行為をした事実がないこと等に照らし原告の主張を認めなかった。
以上により、平成17年12月支給分以降の超過勤務手当の支払いを命じたものである。
3.本判決は、東京都の職場で、予算措置を講じることなく、時間外労働に対しその割り増し賃金を支給しない違法なシステムが存在していたことを認定し、このような違法な事態は許されないことを明快に断じた点に意義がある。
労働の現場においては、労働基準法をはじめ、労働法は遵守されなければならない。これに違反する事態は、労働者の生活そのものを脅かすこととなる。現在の「格差社会」「ワーキングプア」の諸問題の原因の一つに、使用者による法令の無視、遵守しない態度がある。「名ばかり管理職」の問題をはじめ、時間外の就労に対する賃金未払いも、こうした問題として世間の注目を集めている。
原告坂本は、金額の多寡にかかわらず、自らにされた仕打ちに対する怒りと共に、東京都の誤ったシステムをただす契機とし、東京都の職場環境の是正、ひいては日本の職場全体について、労働法を遵守し、労働者の生活と権利を守っていくため、本件提訴を行った。
本判決は、原告、東京都の職員、ひいては全国の労働者の願いに正面から応えたものである。原告だけでなく、都庁職員全体、ひいては全国の自治体労働者、民間企業の労働者にとっても、大きな意義を持つ、画期的な判決である。
4.私たちは、被告東京都が本判決を真摯に受け止め、以下のことを誠実に実行することを要求する。
(1)控訴を行わず、地裁が認定した不払い超過勤務手当をただちに原告に支払うこと。
(2)東京都の多くの職場で発生している超勤手当の不払いをやめ、すべての職員に超勤手当を全額支給できるように、通達を出すなどして周知徹底すること。
(3)恒常的な超過勤務をなくすために、業務執行体制の見直しを行い、業務に必要な人員を配置するなどの改善を直ちに行うこと。
『日本自治体労働組合総連合』(2010-03-30)
http://www.jichiroren.jp/modules/topic/index.php?page=article&storyid=1124
職員の残業代未払い訴訟
都職員の坂本通子さん(五九)が、都に未払いの残業代を支払うよう求めた裁判の控訴審で、東京高裁は二十八日、都に約十三万八千円の支払いを命じた一審判決を支持し、都側の控訴を棄却した。
判決では一審同様に、坂本さんが都教育庁多摩教育事務所に勤務時の二〇〇五年十二月から〇六年三月分の超過勤務手当が、一部しか支払われなかったと認定。その理由について「事務所に超過勤務の実績に見合う予算がなく、手当を抑制するため」と指摘した。
判決について都教育庁は「大変遺憾。判決内容を詳細に確認して、今後の対応を検討していく」とした。
『東京新聞』(2010/7/29【地域の情報】)
※一審地裁勝訴判決時(2010/3/25)の原告・弁護団・労組声明
<声 明>
東京都職員坂本通子さんの不払い超過勤務手当の支払いを求める裁判に対する東京地方裁判所の判決についての声明
東京都職員坂本通子さんの不払い超過勤務手当の支払いを求める裁判に対する東京地方裁判所の判決についての声明
2010年3月25日 原告坂本通子・同弁護団・都庁職教育庁支部
1.東京都職員として現在も勤務中で、都庁職教育庁支部の組合員でもある原告坂本通子は、超過勤務を行ったのに「超過勤務手当」を超勤時間に相当する分支給されていないのは不当であるとして、被告東京都に対し未払いの超過勤務手当452,740円の支払い等を求め、2008年5月28日、東京地方裁判所に提訴した。東京地方裁判所は本日午後1時30分、原告の主張をほぼ全面的に認め、被告東京都に対して超過勤務手当として、金137,910円を支払うよう命ずる判決を下した。
2.本件で、被告東京都は、原告坂本が勤務した多摩教育事務所において、超過勤務手当の支給は東京都勤務時間条例に基づき適正に支給されていること、原告坂本は超過勤務を命じたことがないにもかかわらず、勤務をしていたもので、同条例によって必要性、緊急性が認められない場合には超過勤務手当を支給しなかったこと、仮に超過勤務手当が発生していても大部分は時効により消滅すること等を主張した。
これに対し本判決は、「原告を含む一般職の地方公務員に対し…労働基準法37条も原告に対して適用される」とした上で、「原告は、現に正規の勤務時間内に終えることができないような業務を与えられ、そのために正規の勤務時間以外の時間や休日に担当分掌上の業務を行っていること、原告の超過勤務は、いずれも、これが行われなければ、多摩教育事務所の公務が渋滞するなど、公務の円滑の遂行に必要な行為であったこと、これら超過勤務の実績については、管理課長において、その勤務ぶりを常日頃から現認しているばかりか、原告から補助簿の提出を受けるなどして不定期ではあるけれども業務の報告を受けることにより知悉していた上で、かかる超過勤務を容認していたこと、また、超過勤務の実績に見合うだけの予算措置が講じられていなかったために補助簿記載の超過勤務時間数の一定割合のみを命令簿に記載させて超過勤務手当の申請を事実上抑制していたこと(なお、超過勤務手当について予算等の財源措置を講じていないからといって、被告が地方公共団体としてその負担すべき超過勤務手当の支給を拒み得ないのは当然であり、かかる取扱いが不相当であることは明らかである。)からすれば、原告に対しては、各超過勤務をするに当たっては、管理課長から黙示的に超過勤務命令があったものと認めるのが相当である。」と判断し、原告に対して被告が超過勤務手当を支払わなければならないことを明快に認定した。
その上で、消滅時効については、東京都当局が原告に超過勤務手当の支払いがされるであろうとの信頼を惹起させて原告の時効中断措置をとることを怠らせるなどの信義に反する行為をした事実がないこと等に照らし原告の主張を認めなかった。
以上により、平成17年12月支給分以降の超過勤務手当の支払いを命じたものである。
3.本判決は、東京都の職場で、予算措置を講じることなく、時間外労働に対しその割り増し賃金を支給しない違法なシステムが存在していたことを認定し、このような違法な事態は許されないことを明快に断じた点に意義がある。
労働の現場においては、労働基準法をはじめ、労働法は遵守されなければならない。これに違反する事態は、労働者の生活そのものを脅かすこととなる。現在の「格差社会」「ワーキングプア」の諸問題の原因の一つに、使用者による法令の無視、遵守しない態度がある。「名ばかり管理職」の問題をはじめ、時間外の就労に対する賃金未払いも、こうした問題として世間の注目を集めている。
原告坂本は、金額の多寡にかかわらず、自らにされた仕打ちに対する怒りと共に、東京都の誤ったシステムをただす契機とし、東京都の職場環境の是正、ひいては日本の職場全体について、労働法を遵守し、労働者の生活と権利を守っていくため、本件提訴を行った。
本判決は、原告、東京都の職員、ひいては全国の労働者の願いに正面から応えたものである。原告だけでなく、都庁職員全体、ひいては全国の自治体労働者、民間企業の労働者にとっても、大きな意義を持つ、画期的な判決である。
4.私たちは、被告東京都が本判決を真摯に受け止め、以下のことを誠実に実行することを要求する。
(1)控訴を行わず、地裁が認定した不払い超過勤務手当をただちに原告に支払うこと。
(2)東京都の多くの職場で発生している超勤手当の不払いをやめ、すべての職員に超勤手当を全額支給できるように、通達を出すなどして周知徹底すること。
(3)恒常的な超過勤務をなくすために、業務執行体制の見直しを行い、業務に必要な人員を配置するなどの改善を直ちに行うこと。
『日本自治体労働組合総連合』(2010-03-30)
http://www.jichiroren.jp/modules/topic/index.php?page=article&storyid=1124
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