▼ 住民無視 除染廃棄物中間施設構想
-原発廃棄の道筋を考える-
ついに原子力ムラの本音が出た。石原伸晃環境相の発言だ。自らの責任を放棄し、除染廃棄物の中間貯蔵施設設置の押しつけの強要に「金目の問題」という、被災住民の心を逆なでする本音を吐いたのだ。謝罪行脚を繰り返そうと、それは弥縫策でしかない。原子力行政、廃棄物処理について基本的な考え方を明らかにする。
東電福島第一原発の事故は、多量の除染廃棄物を生み出した。政府はこの除染土などを保管する「中間貯蔵施設」を福島県双葉町、大熊町などに造る企画を立て、住民説明会を開いてきた。石原伸晃環境相は16回に及ぶ説明会に一度も出席しなかったが、東京で記者団の質問に、「最後は金目(かねめ)でしょ」と答えた。これは住民を愚弄するだけでなく、多くの問題を浮き彫りにしている。
▼ 金目では済まないこと
事故の放射能拡散によって、住民は長期避難を強いられている。一方では除染によってさほど遠くないうちに帰還できそうに言われ、とくに先祖代々の土地に強い愛着を持ち、墓を守ってきた住民は、淡い期待をもっている。他方ではそこに、あるいはそのすぐ近くに、あらためて大量の放射性廃棄物が持ち込まれるとなると、穏やかではない。あいまいにされたままの長期的な生活支援策や用地買収価格に、住民から多くの質問が出たのは当然のことだ。
▼ 30年後の搬出はどうなる
安倍政権や環境相は、30年以内に県外に搬出するという。これを誰が信じるだろうか。30年後にどこに受け入れるところがあるだろうか。
中間貯蔵施設は、30年ももてばよいという設計になるだろう。しかし30年では、放射性セシウムもストロンチウムも、半減するだけだ。千分の一に減衰するためには、300年を要する。
▼ 発生者責任をどう取らせるか
すでに第一原発敷地は、高レベル汚染水のタンク等々であふれている。発生者責任によって各種の放射性廃棄物を管理保管するためには、第二原発の敷地の活用はもとより、その間の土地と周りも含めて、東電が事故以前の価格で買い取って活用するのが筋というものである。住民の推薦する専門家と自治体による任意の立ち入り検査を保障しながら、東電と国との責任で管理保管していくことが必要である。
▼ 廃炉処理計画は誰の金目か
東電と政府はメルトダウンした原発を40年もかけて廃炉処理する計画である。
メルトダウンした核燃料(デブリ)を取り出すためには、極めて高い放射線を遮蔽しなくてはならない。
そのために格納容器を満水にして、頂上に穴をあけ、圧力容器(原子炉本体)の上ぶたを外し、両容器の底にある(とされる)デブリを削り取るという。その後で原子炉も格納容器も解体撤去するという。それには先ず格納容器の水漏れ部分を探し出し、そこを修理しなくてはならないとする。
これらの仕事には、それぞれの作業に適したロボットを開発中であるが、三菱、日立、東芝がこれを担っている。彼ら独占資本にとっては、何十年かにわたって、原発の建設に劣らぬ特別な利潤が保障されているらしい。彼等にこそすべての仕事は金目であり、利潤目的である。
他方では、ロボットをいかに遠隔操作しても、それを近寄せてエネルギーを補給したり、修理したりのメンテナンスだけでも、労働者は高い被曝を受ける。
▼ 原子炉も格納容器も新プールに収めよ
高レベル汚染水の増加は、格納容器底部の地下室に地下水が日に400トンも流入していることによる。かねて指摘してきたように、建屋周囲に遮断壁を設置することが不可欠である。
上流の井戸から地下水をくみ上げて海に放流する方策も、わずかな流入減が見込めるだけだ。しかも上流におかれた安普請(安倍晋三が請け負ったの意)のタンクから漏れ出す汚染水はこの井戸水にも入っていく。地下凍結(凍土)方式も、流れの速いところまでは遮水できないし、長期的な安定性は期待できず、良策でないことは始めから指摘してきたとおりである。
底部も含めて、地下水の流出入を完全に遮断する遮水壁を早急に造ることこそ必要である。原子炉も格納容器等も、建屋周囲の堅固な遮断壁に囲まれてできるプールに収めてしまうことこそが最善と思われる。
▼ 高レベル廃棄物を拡散させるな
これによって、高レベル汚染水の果てしない増加から解放されるだけではない。原子炉や格納容器等をプールに収めることによって、水による完全循環冷却システムを造ることができる。プールには一定の屋根を設けても、崩壊熱の減少とともに、やがて窒素循環冷却等々に移行することもできる。
原子炉も格納容器も、半永久的に解体しないで、このようにして管理保管してゆくのがベターである。前述の手順で始まる解体撤去作業は、第一に被曝労働をいよいよ深刻化させずにはすまない。第二に持って行き場のない各種の放射性廃棄物をむやみに増やし拡散させることになる。
デブリをどこから取り出すにせよ、大半は圧力容器や格納容器に溶けあって固くへばりついている。除染土のような比較的低レベルの廃棄物でさえ30年後でも行き場は定まらない。ましてやこれら高レベル廃棄物を搬出できるところなどありはしない。(原野人)
『週刊新社会』(2014/7/1)
-原発廃棄の道筋を考える-
ついに原子力ムラの本音が出た。石原伸晃環境相の発言だ。自らの責任を放棄し、除染廃棄物の中間貯蔵施設設置の押しつけの強要に「金目の問題」という、被災住民の心を逆なでする本音を吐いたのだ。謝罪行脚を繰り返そうと、それは弥縫策でしかない。原子力行政、廃棄物処理について基本的な考え方を明らかにする。
東電福島第一原発の事故は、多量の除染廃棄物を生み出した。政府はこの除染土などを保管する「中間貯蔵施設」を福島県双葉町、大熊町などに造る企画を立て、住民説明会を開いてきた。石原伸晃環境相は16回に及ぶ説明会に一度も出席しなかったが、東京で記者団の質問に、「最後は金目(かねめ)でしょ」と答えた。これは住民を愚弄するだけでなく、多くの問題を浮き彫りにしている。
▼ 金目では済まないこと
事故の放射能拡散によって、住民は長期避難を強いられている。一方では除染によってさほど遠くないうちに帰還できそうに言われ、とくに先祖代々の土地に強い愛着を持ち、墓を守ってきた住民は、淡い期待をもっている。他方ではそこに、あるいはそのすぐ近くに、あらためて大量の放射性廃棄物が持ち込まれるとなると、穏やかではない。あいまいにされたままの長期的な生活支援策や用地買収価格に、住民から多くの質問が出たのは当然のことだ。
▼ 30年後の搬出はどうなる
安倍政権や環境相は、30年以内に県外に搬出するという。これを誰が信じるだろうか。30年後にどこに受け入れるところがあるだろうか。
中間貯蔵施設は、30年ももてばよいという設計になるだろう。しかし30年では、放射性セシウムもストロンチウムも、半減するだけだ。千分の一に減衰するためには、300年を要する。
▼ 発生者責任をどう取らせるか
すでに第一原発敷地は、高レベル汚染水のタンク等々であふれている。発生者責任によって各種の放射性廃棄物を管理保管するためには、第二原発の敷地の活用はもとより、その間の土地と周りも含めて、東電が事故以前の価格で買い取って活用するのが筋というものである。住民の推薦する専門家と自治体による任意の立ち入り検査を保障しながら、東電と国との責任で管理保管していくことが必要である。
▼ 廃炉処理計画は誰の金目か
東電と政府はメルトダウンした原発を40年もかけて廃炉処理する計画である。
メルトダウンした核燃料(デブリ)を取り出すためには、極めて高い放射線を遮蔽しなくてはならない。
そのために格納容器を満水にして、頂上に穴をあけ、圧力容器(原子炉本体)の上ぶたを外し、両容器の底にある(とされる)デブリを削り取るという。その後で原子炉も格納容器も解体撤去するという。それには先ず格納容器の水漏れ部分を探し出し、そこを修理しなくてはならないとする。
これらの仕事には、それぞれの作業に適したロボットを開発中であるが、三菱、日立、東芝がこれを担っている。彼ら独占資本にとっては、何十年かにわたって、原発の建設に劣らぬ特別な利潤が保障されているらしい。彼等にこそすべての仕事は金目であり、利潤目的である。
他方では、ロボットをいかに遠隔操作しても、それを近寄せてエネルギーを補給したり、修理したりのメンテナンスだけでも、労働者は高い被曝を受ける。
▼ 原子炉も格納容器も新プールに収めよ
高レベル汚染水の増加は、格納容器底部の地下室に地下水が日に400トンも流入していることによる。かねて指摘してきたように、建屋周囲に遮断壁を設置することが不可欠である。
上流の井戸から地下水をくみ上げて海に放流する方策も、わずかな流入減が見込めるだけだ。しかも上流におかれた安普請(安倍晋三が請け負ったの意)のタンクから漏れ出す汚染水はこの井戸水にも入っていく。地下凍結(凍土)方式も、流れの速いところまでは遮水できないし、長期的な安定性は期待できず、良策でないことは始めから指摘してきたとおりである。
底部も含めて、地下水の流出入を完全に遮断する遮水壁を早急に造ることこそ必要である。原子炉も格納容器等も、建屋周囲の堅固な遮断壁に囲まれてできるプールに収めてしまうことこそが最善と思われる。
▼ 高レベル廃棄物を拡散させるな
これによって、高レベル汚染水の果てしない増加から解放されるだけではない。原子炉や格納容器等をプールに収めることによって、水による完全循環冷却システムを造ることができる。プールには一定の屋根を設けても、崩壊熱の減少とともに、やがて窒素循環冷却等々に移行することもできる。
原子炉も格納容器も、半永久的に解体しないで、このようにして管理保管してゆくのがベターである。前述の手順で始まる解体撤去作業は、第一に被曝労働をいよいよ深刻化させずにはすまない。第二に持って行き場のない各種の放射性廃棄物をむやみに増やし拡散させることになる。
デブリをどこから取り出すにせよ、大半は圧力容器や格納容器に溶けあって固くへばりついている。除染土のような比較的低レベルの廃棄物でさえ30年後でも行き場は定まらない。ましてやこれら高レベル廃棄物を搬出できるところなどありはしない。(原野人)
『週刊新社会』(2014/7/1)
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