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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「10・23通達」は憲法94条違反

2011年10月17日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 《10・14東京「君が代」裁判 第3次訴訟 第6回口頭弁論 陳述要旨-2-》
 ◎ 裁判長も認めた「新しい主張」
   ~国旗国歌条項には法的拘束力があるから通達・命令は違法違憲になる
弁護士 山田由紀子

 第2 10・23通達の憲法94条、地方自治法14条1項違反

 憲法94条地方自治法14条1項により、条例は『法律の範囲内で』、国の『法令に違反しない限りにおいて』認められと規定されている。
 10・23通達は、「通達」という形式で発せられたものであって、「条例」ではないが、仮に同じ内容のものが「条例」という形式で発せられた場合に違憲・違法となるのであれば、これを「通達」という形式で発した10・23通達は、なおさら違憲・違法となるはずである。
 そこで、ここでは、仮に10・23通達と同じ内容が条例で定められた場合、その条例が憲法94条、地方自治法14条1項に照らし、合憲・合法と言えるかを検討する。
 10・23通達の内容に関係する法令としては、国旗国歌法と学習指導要領があるから、10・23通達と同一内容の条例の合憲性・合法性は、該条例が国旗国歌法および学習指導要領との関係で「法律の範囲内」「法令に違反しない限り」と言えるか否かにかかることになる。
 まず、国旗国歌法との関係について、検討する。
 国旗国歌法の規定内容、立法過程を見ると、同法が全国的に国旗を日章旗・国歌を君が代と定めることのみを目的とし、国民や教師・生徒にこれを強制しないとの趣旨であることは明らかで、最高裁昭和50年9月10日判決の言う「国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨」とは到底考えられない。
 よって、10・23通達と同一内容の条例は、地方公共団体の条例制定権を逸脱し、国旗国歌法との関係で、「法律の範囲」を越え、「法律に違反した条例」となり、憲法94条に反する違憲な条例、地方自治法14条1項に反する違法な条例となる。
 次に、学習指導要領との関係について、検討する。
 学習指導要領の法的性質について、旭川学テ最高裁判決が判示しているところによれば、
 A 「ある程度細目にわたり、かつ詳細に過ぎ、また必ずしも法的拘束力をもって地方公共団体を制約し、又は教師を強制するのに適切でな」い事項や「教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点」は、「大綱的基準としての性格」をもつものとは言えず、法的拘束力を持たない。つまり単なる「指導助言文書」としてのみ適法ということになる。
 B 逆に、細目にわたらず、詳細に過ぎず、法的拘束力をもたせることが適切でないとは言えない事項や、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するものでない点は、「大綱的基準としての性格」をもっものと言え、法的拘束力を持つ、ということになる。
 国旗国歌条項が、A、B、いずれに当たるかであるが、学習指導要領自体にも、学習指導要領解説にも、「国旗掲揚と国歌斉唱を指導する」とあるのみで、10・23通達が内包している実施指針が規定するような「国旗は舞台壇上正面に掲揚」、「式次第に『国歌斉唱』と記載」、教職員の起立・斉唱・ピアノ伴奏などという一律で画一的な方法が規定されているわけではなく、ましてや処分をもってしてまでこれを強制すべきことなど、どこにも書かれていない。
 したがって、これが「細目にわたる」とか「詳細に過ぎる」とは言えず、教師に対して一律の画一的に限定された指導方法を強制しているとも読めない。よって、AではなくB、つまり、「大綱的基準としての性格をもち」、その範囲で「法的拘束力を持つ」ものと言える。
 それでは、条例が、最小限の基準を超えて、国旗国歌条項を10・23通達のように国旗国歌の取り扱いを画一的かつ詳細に定め、教師に対し起立・斉唱・伴奏を強制するものと定めることができるか。
 最高裁昭和50年9月10日判決は、「特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないとき」や「両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない。」と判示している。
 被告の主張によれば、10・23通達の目的は、学習指導要領の国旗国歌条項を適正に実施することにあると言うのであるから、仮にこれと同一内容の条例を想定した場合でも、その条例の目的が国旗国歌条項とは「別の目的に基づく規律を意図する」ということはあり得ない。
 学習指導要領は最小限の基準であるから、一般的には、この最小限の基準を充たす限り、それぞれの普通地方公共団体がその地方の実情に応じた教育を実施することが予定されている。しかし、国旗国歌条項は、「教師に対して強制するものではない」が故にBの大綱的基準としての法的拘束力をもつものである。したがって、人の権利に対する規制に関わる点で、最高裁昭和50年9月10日判決の言う「国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨である」とは到底解されず、むしろ、「規制しないこと」自体が国の法規たる国旗国歌条項の内容であると言える。したがって、これを「規制する」条例は、「法律の範囲」を超え「法令に違反」する条例となり、憲法94条地方自治法14条1項に違反する、違憲・違法な条例となる。
 10・23通達自体は、狭義の条例でないことはもちろん、教育委員会の規則でもなく、それより下位の示達にすぎないのであるから、なおさらのこと、憲法94条に反して違憲であり、地方自治法14条1項に反して違法なのである。
 第3 10・23通達の地方自治法14条2項違反
 地方自治法14条2項は、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定している。ところが、10・23通達は、法令に定めがない場合に、条例にもよらずに、原告らに義務を課し、原告らの権利を制限するものである。したがって、10・23通達は、地方自治法14条2項にも違反して違法である。
 第4 10・23通達の地方自治法2条16項違反
 地方自治法2条16項は、「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」ものとしている。
 ところが、10・23通達は、国旗国歌法にも学習指導要領の国旗国歌条項にも違反し、憲法94条、地方自治法14条1項2項にも違反するものであるから、被告東京都が「法令に違反してその事務を処理」したものであり、当然、、地方自治法2条16項にも違反する。
 第5 10・23通達の地方自治法2条2項違反
 地方自治法2条2項は、「普通地方公共団体は、〈地域における事務〉及び〈その他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの〉を処理する。」と規定する。
 ところが、国旗国歌に関しては、国旗国歌法はもちろん、他の法律にも政令にも、都道府県等が処理する事務としたものはなく、これに関する特別の定めもないから、「法令により処理することとされるもの」でないことは明らかである。
 それでは、「地域における事務」と言えるかであるが、これについては、憲法92条の「地方自治の本旨」から考えるほかない。「『地方自治の本旨』には、住民自治と団体自治の二つの要素がある。」しかし、国旗国歌に関する事項は、国家の象徴に関する国家的規模の問題であり、県旗・県歌などと異なり、住民自治にも団体自治にも関わりがない。したがって、「地域における事務」とは言い難い。よって、10・23通達は、地方自治法2条2項に反して違法である。
 以上

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