【生活図鑑】(No.152)2007年4月22日
課題多い★最低賃金
生活保護下回り 格差拡大
賃金はその最低額が法的に保障されています。もし最低賃金以下で労働者を働かせると罰則の対象となります。しかし、わが国の最低賃金額は主要国に比べ高くありません。また、生活保護と比べても見劣りがすると指摘され、最低賃金法の改正が進んでいます。現状と課題は?
最低賃金は、原則、正社員、パート・アルバイト、臨時など雇用形態や名称にかかわらず最低、支払わなければならない賃金です。
最低賃金には、地域の実情を考慮し決定する地域別最低賃金と、特定の産業ごとに設定される産業別最低賃金の二種類があります。仮に最低賃金額より低い賃金を労使で合意しても無効になり、最低賃金額と同額の取り決めをしたものとみなされます。
最低賃金については課題があります。まず地域間格差の拡大です。
●時給で最大109円の格差
地域別の最高額(二〇〇六年度)は、東京都の七百十九円に対し、最低額は青森、岩手、秋田、沖縄四県の六百十円と、百九円の開きがあります。しかも差は年々拡大する傾向にあります。
主要国の最低賃金額を比較できる〇五年で見ると、わが国の地域別最低賃金の平均額は一時間あたり(時給)六百六十八円でした。
一方、フランス、英国(一般労働者)は時給千円を超えています。
米国は連邦政府が五・一五ドル(約六百三円)とわが国とほぼ同じレベルの額です。しかし、州によっては独自に最低賃金を決めており、カリフォルニア州は八・五〇ドル(約九百九十五円)と日本を大幅に上回るなど、ほとんどの州が連邦政府基準以上です。カナダも州ごとに決められ、多くの州がわが国を上回っています。
英国、米国はさらに引き上げの方向で、日本は先進国で最低水準にあります。
●「労働意欲」に水を差す
生活保護費との比較でも問題を指摘されています。生活保護の生活扶助と住宅扶助特別の基準合計額と最低賃金額による収入を比べると、最低賃金が生活保護額を下回るケースが多くなっています。
例えば〇六年度の東京都の場合、地域別最低賃金を一カ月(一日八時間で二十二日間労働)に換算すると約十二万六千円でした。ここから社会保険などを差し引くと約十一万円にしかなりません。半面、住宅扶助を加えた生活保護費は約十四万円(都区部の十八-十九歳単身者)です。最低賃金で働いても約一万四千円以上も生活保護費を下回ることになります。
東京だけでなく、県庁所在地では最低賃金が低くなるところがほとんどです。これでは、働く意欲が生まれずモラルハザード(倫理観の欠如)を引き起こしかねません。生活保護以上の最低賃金額が強く求められてきました。
政府もようやく「最低賃金額が生活保護費を上回るように設定したい」(安倍晋三首相)として、最低賃金法を改正。罰則も強化し、最低賃金を下回る場合、罰金の上限を一件あたり二万円から五十万円に引き上げます。
景気が回復しても「働く貧困層」など構造的な問題は残ったままです。いま、最低賃金のあり方が問われています。
『東京新聞』(2007/4/22【生活図鑑】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2007/CK2007042202011223.html
課題多い★最低賃金
生活保護下回り 格差拡大
賃金はその最低額が法的に保障されています。もし最低賃金以下で労働者を働かせると罰則の対象となります。しかし、わが国の最低賃金額は主要国に比べ高くありません。また、生活保護と比べても見劣りがすると指摘され、最低賃金法の改正が進んでいます。現状と課題は?
最低賃金は、原則、正社員、パート・アルバイト、臨時など雇用形態や名称にかかわらず最低、支払わなければならない賃金です。
最低賃金には、地域の実情を考慮し決定する地域別最低賃金と、特定の産業ごとに設定される産業別最低賃金の二種類があります。仮に最低賃金額より低い賃金を労使で合意しても無効になり、最低賃金額と同額の取り決めをしたものとみなされます。
最低賃金については課題があります。まず地域間格差の拡大です。
●時給で最大109円の格差
地域別の最高額(二〇〇六年度)は、東京都の七百十九円に対し、最低額は青森、岩手、秋田、沖縄四県の六百十円と、百九円の開きがあります。しかも差は年々拡大する傾向にあります。
主要国の最低賃金額を比較できる〇五年で見ると、わが国の地域別最低賃金の平均額は一時間あたり(時給)六百六十八円でした。
一方、フランス、英国(一般労働者)は時給千円を超えています。
米国は連邦政府が五・一五ドル(約六百三円)とわが国とほぼ同じレベルの額です。しかし、州によっては独自に最低賃金を決めており、カリフォルニア州は八・五〇ドル(約九百九十五円)と日本を大幅に上回るなど、ほとんどの州が連邦政府基準以上です。カナダも州ごとに決められ、多くの州がわが国を上回っています。
英国、米国はさらに引き上げの方向で、日本は先進国で最低水準にあります。
●「労働意欲」に水を差す
生活保護費との比較でも問題を指摘されています。生活保護の生活扶助と住宅扶助特別の基準合計額と最低賃金額による収入を比べると、最低賃金が生活保護額を下回るケースが多くなっています。
例えば〇六年度の東京都の場合、地域別最低賃金を一カ月(一日八時間で二十二日間労働)に換算すると約十二万六千円でした。ここから社会保険などを差し引くと約十一万円にしかなりません。半面、住宅扶助を加えた生活保護費は約十四万円(都区部の十八-十九歳単身者)です。最低賃金で働いても約一万四千円以上も生活保護費を下回ることになります。
東京だけでなく、県庁所在地では最低賃金が低くなるところがほとんどです。これでは、働く意欲が生まれずモラルハザード(倫理観の欠如)を引き起こしかねません。生活保護以上の最低賃金額が強く求められてきました。
政府もようやく「最低賃金額が生活保護費を上回るように設定したい」(安倍晋三首相)として、最低賃金法を改正。罰則も強化し、最低賃金を下回る場合、罰金の上限を一件あたり二万円から五十万円に引き上げます。
景気が回復しても「働く貧困層」など構造的な問題は残ったままです。いま、最低賃金のあり方が問われています。
『東京新聞』(2007/4/22【生活図鑑】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2007/CK2007042202011223.html