パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 半年隠された米兵少女レイプ被疑事件

2024年07月08日 | 平和憲法

  =たんぽぽ舎です【TMM:No5048】「メディア改革」連載第155回(2024/7月/日)=
 ☆ 外務省は去年から5件の性暴力事件を隠蔽

浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

 鹿児島県警本部長による犯人隠匿事件が明るみになる中、6月25日、大阪と沖縄で二つの凶悪事件が大きく報道された。
 大阪地検検事正を務めた北川健太郎弁護士が検事正時代に部下に対する準強制性交の疑いで大阪高検に逮捕された。

 また、同日、沖縄の民放テレビ局が在沖縄米軍の25歳兵長が少女(16歳未満)へのわいせつ目的誘拐と不同意性交罪で起訴されていることがわかったと報道。事件は昨年12月24日に起きた。

 沖縄県警は、米軍が兵長の身柄を確保していたため、逮捕できなかった。県警は3月11日に那覇地検に書類送検し、地検が同27日に在宅起訴した。日米地位協定に従って、米軍が起訴後に被告人(兵長)の身柄を日本側に引き渡した。

 県警は事件の発生、送検を県警記者クラブに広報(公表ではなくクラブ加盟の企業メディア記者に限定した便宜供与)せず、地検広報官もクラブへ広報しなかった。
 県警は、過去の米兵による事件は発生・逮捕時に速やかに広報してきた。

 起訴の段階で捜査当局から事件を知った外務省の岡野正紀事務次官がエマニエル駐日米大使に抗議した。
 ただ、外務省はこの際、沖縄県に情報を伝えなかった。沖縄のテレビ局記者は那覇地裁の事件簿を見て、米兵が被告人になった事件があるのを見つけて、関係先に取材して独自に報じた。報道の直後に、林芳正官房長官らが事件を認め、県にも連絡したと述べた。

 県警、地検、裁判所、外務省は6月25日にテレビ局が報道するまで、事件の発生、捜査経過を秘匿してきた。鹿児島県警であったことが、全国各地で起きているのだ。玉城知事は「信頼関係において著しく不信を招くものでしかない」と抗議した。県民も強く反発した。

☆ 「被害者のプライバシー」理由はウソ

 これについて外務省の小林麻紀外務報道官は、26日の記者会見で「個別具体的な事案の内容に応じて適切に判断して対応している。特に本件のように被害者のプライバシーに関わるような事案については、慎重な対応が求められると考えている。常に関係各所にもれなく通報することが必要だとは考えていない」と述べた。
 小林氏の、対応は適切だったという認識は異常だ。
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240626/k10014493001000.html

 会見から2日後の6月28日の閣議で、3年前の岸田内閣の発足以来、内閣広報官を務めてきた四方敬之氏を退任させ、後任に小林外務報道官を起用する人事(7月1日に発令)を決めた。小林氏は、東京都出身の57歳。中南米局長などを歴任した。

 その後、今年1月にも記者クラブで広報していない米軍関係者による性暴力事件があったことが判明。また、林官房長官は7月3日、この2件の他にも同様の広報していない事案が3件あると明らかにした。
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240703/k10014500071000.html

 政府は「被害者のプライバシーへの配慮」を理由にしている。
 NHKによると、政府は5日、沖縄県内での同様の事件については、捜査当局が公表しないものでも可能な範囲で県に情報を伝える運用を始めた。捜査当局が公表しないものでも県に情報を伝えるというのだが、県警などはこれからも事件の発生、立件に関して広報しないのだ。

 沖縄では1995年9月に金武町で、米兵3人による女子小学生への集団強かんがあった。
 2001年6月には、米空軍嘉手納基地所属の軍曹が北谷町の駐車場で女性をレイプ。
 08年2月には、米海兵隊員が女子中学生を強かん。
 12年10月には、米海軍兵2人が通行中の女性を連れ去って強かんした。
 16年は、3月、米海軍兵が那覇市のホテルで寝ていた女性を暴行。
 さらに同年4月、うるま市でウォーキングをしていた20歳の女性を米軍属の男が鈍器で殴りつけて草むらに引き込み、強姦したうえナイフ等で刺殺した。

☆ 琉球メディアは被害者匿名を徹底保護

 外務省などは事件情報の隠蔽について、被害者のプライバシーへの配慮などを理由に挙げているが、沖縄では女性団体、弁護士会、マスコミ労協、書店商業組合などが事件被害女性の人権を守ってきた
 ヤマト(本土)の週刊誌などが米兵の勾留理由開示裁判で読み上げられた被害者女性の住所、氏名、職業、年齢などをもとに関係先の取材をしたことで、裁判所も被害者の特定につながる個人情報を伏せている

 01年の事件では、家族関係、仕事を書いた「週刊新潮」「週刊文春」の県内での販売を拒んだ。沖縄弁護士会人権擁護委員会(永吉盛元委員長)は「一部週刊誌から侮辱的な取材を受け、名誉とプライバシーを侵害された」と、人権救済の申し立てを行い、弁護士会はいちはやく会長声明を出して、メディア界に警告した。
 ヤマト(本土)と違い、沖縄では女性記者を中心として、性暴力犯罪の取材と報道について、被害者を守り抜く枠組みができている。私も関わってきた。「被害者のプライバシー」を理由にした、米兵事件の隠蔽を私は許さない。

 


コメント    この記事についてブログを書く
« ☆ 都知事選、小池百合子候補... | トップ | ◆ これからの「D-TaC(松田)... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

平和憲法」カテゴリの最新記事