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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

大江・岩波 高裁でも勝訴

2008年11月09日 | 平和憲法
沖縄戦裁判大阪高裁判決についての三団体共同声明

2008年11月5日
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

1.2008年10月31日、大阪高等裁判所第4民事部(小田耕治裁判長)は、平成20年(ネ)第1226号 出版停止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第7696号)、いわゆる大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判控訴審で、「本件各控訴および各控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする」との判決を言い渡した。

2.大阪高裁判決は基本的に原審を維持し、ふたたび、沖縄戦の真実を歪曲した控訴人(原告)らの主張の誤りを明確にしたばかりでなく、控訴人らの主張の信用性を立証するための裏付け調査等がなされた形跡もないことなど、きわめて問題だと指摘し,控訴人ら弁護士の立証活動が科学的、実証的なものではなく,いい加減なものであったと指摘したものと言える。

3.それにかかわって、控訴人梅澤が「自決するな」と言ったという主張を明確に否定し、住民に玉砕(自決)を求める方針を決して変更しなかったことも認定したことは重要である。さらに控訴人らが持ち出した宮平秀幸新証言を虚言と断じ、それを擁護し補強を試みた藤岡信勝意見書なども採用できないと断言したことも重要である。

4.戦隊長梅澤・赤松の玉砕(自決)命令については、「伝達経路が判然としない」という原審を訂正し、「住民への直接命令」と狭く限定したうえで、証拠上からそれを認定するのは無理があるとした。本来ならば、事実上の戒厳令下の「合囲地境」にあった慶良間列島において、命令の伝達経路は明確にされており、隊長命令なしに集団死が起こり得なかったことを判示すべきだったと考える。

5.しかし重要なことは、もっとも狭い意味での隊長命令の存在を認定しなかったからといって、それが、隊長命令がなかったことを意味するものでもなく、総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうると、高裁判決が明言していることである。

6.そのさい、国家機関としての裁判所は本訴訟の主題である名誉毀損等の成否にかかわる限りで歴史事実についての判断をするべきであって、本来、歴史的事実の認定は歴史研究の場において研究し論議を蓄積していくべきものであるとしたのは妥当な判断であり、それは控訴人らが集団死についての軍命の存在を否定することを裁判所に求め、それをもって教科書を書き換え、国民の歴史認識を歪曲しようとしたことの不当性をいっそう明らかにしたものといえる。

7.高裁判決は、新たに、日本国憲法が保障する言論表現の自由を最大限に尊重することが民主主義社会の基盤であるという立場から、出版差し止めが成立するための条件を明確にし、それにもとづいて出版差し止め請求を棄却した。これは憲法が定める権利の保障をいっそうすすめるうえで貴重な判断である。とりわけ公務員に関すること、いいかえれば国家権力の行為についての自由な言論の保障の必要性が高いことを明確にしたことは重要である。この判断に従うならば、国家権力を構成する軍隊の行為について教科書においても自由な言論が保障されるべきである。教科書記述を政府が認める特定の枠のなかにとじこめようとする教科書検定、とりわけ今回の沖縄戦検定の不当性は、この点からもいっそう明らかになった。

8.よって文部科学省に対し、沖縄戦に関する2006年度検定意見をただちに撤回し、「集団自決」における軍の強制・命令の記述の復活を含め、記述の再訂正による改善を直ちに認めることを強く要求する。

9.控訴人らは最高裁に上告するとのことであるが、最高裁に対し、すみやかに上告を棄却することを求める。

連絡先:大阪市北区芝田2-4-2牛丸ビル3階「うずみ火」編集部
電話・FAX 06-6453-2448


高裁判決についてのコメント

大江 健三郎

 ベルリン自由大学での講義のためにベルリンに滞在しており、判決を直接聞くことができませんでした。いま、私たちの主張が認められたことを喜びます。

 私が38年前にこの『沖縄ノート』を書いたのは、日本の近代化の歴史において、沖縄の人々が荷わされた多様な犠牲を認識し、その責任をあきらかに自覚するために、でした。
 沖縄戦で渡嘉敷島・座間味島で七百人の島民が、軍の関与によって(私はそれを、次つぎに示された新しい証言をつうじて限りなく強制に近い関与と考えています)集団死をとげたことは、沖縄の人々の犠牲の典型です。それを本土の私らはよく記憶しているか、それを自分をふくめ同時代の日本人に問いかける仕方で、私はこの本を書きました。

 私のこの裁判に向けての基本態度は、いまも読み続けられている『沖縄ノート』を守る、という一作家のねがいです。原告側は、裁判の政治的目的を明言しています。それは「国に殉ずる死」「美しい尊厳死」と、この悲惨な犠牲を言いくるめ、ナショナルな氣運を復興させることです。
 私はそれと戦うことを、もう残り少ない人生の時、また作家としての仕事の、中心におく所存です。


『大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会』
http://okinawasen.web5.jp/index.html

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