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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

都教委が教科書選定に介入

2013年07月22日 | 暴走する都教委
 ◆ 君が代強制問題触れた教科書
   ~都教委が「使用不適切」全高校校長らに通知

永野厚男(教育ライター)

 東京都教育委員会は6月27日、「一部自治体で公務員への君が代強制の動きがある」などと記述した来年度使用高校日本史教科書2種を名指しし、「選定するな」と委員総員で議決。都立高校等に通知した。「教育内容への不当介入」と抗議声明が続出している。
 ◆ 木村孟教育委員長「私が指示」~抗議する傍聴席に大声で「黙れ!」
 都教委は6月27日の定例会で、来年度使用高校教科書のうち、実教出版の新課程版の『高校日本史A』(近現代史。以下『日A』)『高校日本史B』(通史。『日B』)を名指しし、「委員総意の下、使用することは適切ではないと考える」と議決し、同日付で全都立高校・中等教育学校等の校長宛、通知した。
 発出理由は、『日A』『日B』の国旗・国歌法を巡る「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述が、「都教委の考え方と異なる」からだ、と明記している。
 都立高校で使用する教科書は、5月に教科書会社が送ってくる次年度の見本本を、各校の教科担当教諭が比較調査し一社に選定。校内の教科書選定委員会(責任者は校長)で決定し7月下旬、都教委指導部に報告。教育委員会の会議で全校一括採択される。
 『日A』は昨年3月、『日B』は今年3月に文科省の検定に合格しており、教委が特定の教科書を名指しし、選定を禁じた例はない。
 都教委は昨年、当時の増渕達夫高校教育指導課長らが233都立高中、1年生で日本史を学ぶ17校の校長に、『日A』を選定しないよう電話8月23日の都教委定例会で『日A』は採択校ゼロにされた。
 都教委管理課の担当者によると、今年は6月13日の都教委定例会終了後、非公開の懇談会で、木村孟(つとむ)教育委員長(75歳)が「『一部の自治体で……』の記述は、『卒業式等の国歌斉唱適正実施は、児童・生徒の模範となるべき教員の責務』とする都教委の考え方と異なるものである」などと記述した通知文案を読み上げ、教育委員一人ひとりに聞いていき、今年新任の乙武洋匡・山口香両氏を含め全員賛成した、という。
 これを受け6月27日の公開の場の"審議"では、木村氏が「私が比留間英人・都教育長に対し、教育委員の意見を踏まえ見解をまとめさせ、校長に周知するよう指示した」と発言し、金子一彦指導部長に通知文案を読み上げさせ、委員は誰も発言せず決定。傍聴席から抗議の声が出ると、木村氏は「黙れ!」と大声で叫んだ。
 だが今年4月18日の都立高副校長連絡会では、「使ってはいけない教科書のリストはあるのか」との質問に、江本敏男新課長が「そういうものはない」と答弁していた。
 このため7月1日、文科省の中教審部会に出ていた比留間氏に、会議後、会場外で傍聴の市民らが「江本答弁と違う通知発出は、つくる会系など外部団体の圧力があったからか」と質問。比留間氏は「都教委は昨年から実教出版を選定しないよう言っている。外部からの圧力などない」と回答した。
 ある高校教諭は、「ILOユネスコの『教員の地位に関する勧告』で国際的に認知されているように、生徒の実態を知る教員が教科の専門性から選んだ教科書が採択されるべき。権力行使(通知発出)し特定の教科書を使わせないのは、教員の士気を削ぎ言語道断。生徒の習熟度や興味関心に一番合う『日A』を昨年選定したら、校長が別の教科書に変更させた。一番影響を受けるのは生徒だ」と語った。
 教科書ネットは6月28日、被処分者の会は7月1日、都高教組も6月29日の定期大会で、「教育内容への不当な支配・介入であり、断じて容認できない」などとする抗議声明を出した。出版労連も7月1日、「教育行政による違法行為、憲法21条で保障された出版の自由の侵犯である」という抗議文を都教委に出した。
 なお都教委は6月27日、「学習指導要領の各教科の目標等を踏まえ、各教科書の特徴や違いが明瞭に分かるよう作成した」とする『教科書調査研究資料』(各校に送付され、選定時、参考にするよう指示する校長は多い)の「特別調査研究事項」に、昨年の"国旗国歌・領土"に続き、今年は"オリンピック・パラリンピックの扱い"も加え、政治色を一層増した。
 ◆ 背景に「由(よ)らしむべし知らしむべからず」の施策
 都教委は03年、卒業式等で"君が代"強制を強化する通達発出後、校長に職務命令を出させ、不起立教員に懲戒処分を連発。生徒に対しても「憲法は思想・良心の自由を保障しており、起立・不起立は各自の判断で」などと説明することを禁じている。また多くの校長が、式の進行表に「不起立の生徒がいたら司会の主幹教諭はマイクを使い『起立しなさい』と2~3回発声する」よう記載している。
 不起立教員への再発防止研修でも、都教職員研修センターの統括指導主事らが「教員が起立・斉唱し生徒に範を示す。生徒は教員の姿を見て学ぶ」と発言。
 "君が代"強制の実態は明白。強制の事実に触れた教科書の選定を妨害し、生徒に事実を伝えさせない都教委の施策は、「由らしむべし知らしむべからず」なのだ。
『週刊新社会』(2013/7/16)


 ◆ 都教委による教科書選定介入の問題で市民ら撤回要請
 教科書選定に介入した木村孟氏ら発出の都教委通知の撤回と関係者・都民への謝罪を求め、大学名誉教授や都立高教員ら市民、出版労連が2013年7月9日、都庁記者クラブで会見した。
 はじめに教科書ネットの俵義文事務局長が「都教委は12年1月の最高裁判決から『卒業式等の校長による君が代起立斉唱の職務命令は、憲法19条(思想・良心の自由)に違反するとはいえない』という箇所のみを引き、通知を正当化。だが76年の最高裁学テ判決は、教委など教育行政機関は改定前教育基本法第10条の『不当な支配』とならないよう配慮しなければならない拘束を受けるとし、教師に一方的教育内容を強制してはならない、と判じている。小法廷で判じた前者より、後者の大法廷判決の方が重い」と発言。
 都立高非常勤教員で日本史を教えている鈴木敏男さんは高校教科書採択システム(詳細は上記の記事3段目)を説明後、「学校現場は、都教委が『白は黒』と言ったら、黒と言わざるを得ない状況に追い込まれており、ある高校の副校長は『実教出版を選定したら都教委に(膨大な書類を)書き直しさせられるから、先生たちは夏休みもなくなりますよ』と言っている」と脅迫めいた実話を紹介。「学校現場が委縮すれば生徒に波及する」と警鐘を鳴らした。
 高嶋伸欣・琉球大学名誉教授は「都教委は拡大解釈で『教科書採択権は教委にある』と言っているが、採択権は本来、カリキュラム編成権を保障するものとして教員一人一人にある。特に高校の教科書は有償であり、小中のように教科書無償措置法の制約もないから、保護者が『採択妨害するな』と都教委を訴えることもできる」と発言。
 被処分者の会の近藤徹事務局長(元都立高教諭)は「10・23通達後、450人もの不起立等教員を懲戒処分していて『強制でない』と言う都教委は非常識だ」と語った。
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