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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

馬鹿げた主幹=宦官制の導入(前編)

2010年05月18日 | 暴走する都教委
 《教育の現場から》
 馬鹿げた主幹=宦官制の導入、その受験を奨励した組合!(前編)

T.D (現職、高校教員)

 前回(『馬鹿げた教育行政』リンク)は、現在実施中の、お上に楯突かない教員の育成方法について簡単にご報告したが、その後、「現在の学校現場の状況について教えてほしい」との要望が寄せられたので、なるべく多くの現場の友人たちから情報を集め、拙稿をお送りする次第である。
 結論から言えば、比較的熱心な組合員であった自分が口にするのも悲しく、もしも全盛期の組合員であった諸先輩方が読めば慨嘆に堪えないことと思うが、都高教の労働運動は実質的に終焉し、教育現場には身分制が確実に浸透し始めている。
 周知の通り、18世紀末のイギリスの団結禁止法制定と、これに対抗したラッダイト運動が労働(組合)運動の端緒とされるが、その際に詩人・バイロンは、次のように謳った。
 「海の彼岸の自由な若者はその自由を安価に、血潮で購った(*アメリカ独立運動を指す)。われわれ若人も、自由に生きるか、さもなくば死を賭して戦おう!」。
 しかし、今の教育現場には、死を賭してまで戦おうとする団体も連帯も、そして個人的な気概さえも存在しないのが現状である。
 労働運動の本質は、労働力の対価として賃金を受け取る、資本家に比して絶対劣位にある労働者たちが「人とカネ」、現在の公務員の世界で言えば「人事と給与」を守る、勝ちとるために団結して戦うことにある。
 然るに、現在の都高教は、ミクロのレベルで言えば校内人事、マクロのレベルで言えば学校間人事異動に完全に無力であり、昇給や減給など給与の面においても、まったく影響力を持たない。
 仮に、藤田さんのような諸先輩方が現在の学校で往年の組合運動を実践すれば、確実にその時点で校長から「戦力外通告」を受け、次の年には異動となる。そして、伝聞によれば、多くの場合、学校の勉強のレベルの低い方へ、低い方へと異動させられていくようで、困難校に勤務した方ならば誰でも容易に想像できると思うが、齢を重ねてからの困難校勤務は単純に「きつい」。
 無論、人事委員会に提訴するなど、往年の烈士の方々は黙っていない気がするが、明確にそれが救われるほど、現在の教育行政は柔ではない。
 なぜそこまで一気に?思えば、ここ数10年の間に、勤評闘争や研修日闘争など、権利が奪われていくさまざまな段階があったが、やはり最も、しかし多くの善良な組合員が予見していた通りに学校現場を劇的に悪化させたのは、「異動期間の短期化」を布石として打ち、職場の団結を脆弱にしておいてから満を持して導入してきた「主幹・主任制」に間違いない。
 布石としての異動の短期化は、ほぼ完璧に導入されている。新人で4年、その他で6年、それ以上長く平教員が勤務し続けることは原則としてできない。よって、かって10年20年と勤務した、学校の主のような先輩がその現場の成り立ちや慣習を教え、時には酒席で懇懇と薫陶したような、古き良き時代の学校の姿はもうそこにはない。
 ピッタリ同期で6年、異動のタイミングがずれればたった1~2年のつきあいしかない同僚ばかりになってしまったので、端的に言って気心が知れる、ということがない。これは即ち団結の核を失った状況、団結しづらい状況に直結している。
 同時に、かっては「どうせ2~3年しかいないんだろう?!」よ教員から恫喝されたような校長職にとって、逆に存分に采配を揮いやすい状況になっている。先述の「戦力外通告」を出しやすくなり、経営方針に従わない場合には、たったの1・2年で強制的に異動させる。そして・・・それを分会も誰も・・・止めることができない。
 現場経験のある方ならばご存じの通り、「その現場にとどまりたいかどうか」という教員の判断には、実に千差万別の思惑が介在する。困難校から早く出たいとか、多少困難でも家から近いし、職場での存在感もあるからもう少し残ってもいいかな、とか。もっと勉強のできる学校ー重点進学支援校という凄い名前がついている!-に行きたいなあとか、でもあの進学校にはあいつがいるから避けようとか[苦笑]、教員として労働者として、実にバラエティに富んだ理由で各々が異動について考えている。
 そこに主幹・主任制、特に企画調整会議という職員会議よりも上位の機関に参加し、学校経営の一翼を担うという主幹制が導入されたらどうなるのか?
 (続)

 『藤田先生を応援する会通信』(第40号 2010/4/8)

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