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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

進む集団的自衛権の実体化(中)

2014年09月10日 | こども危機
 ◆ 半強制の宿泊防災訓
   防衛省は「広報活動」と位置付け

永井栄俊(元都立高校教員)

 ◆ 都の軍事教育化への意図
 都教委が2012年度から実施している都立高校の防災訓練は、昨年度の都立田無工業高校生の朝霞駐屯地での訓練が大きな衝撃を与えた。まさに軍隊での基礎訓練が高校生に実施されたのである。
 同校は、翌年(2014年)2月にも夢の島の東京スポーツ文化館(BUMB)で2学年全体を対象にした2泊3日の防災訓練を行った。12人の現役自衛隊が参加し、迷彩服を着た隊員が体育館の生徒の前に居並ぶ姿は異様だった。
 このようにして生徒達の中に軍隊に対する意識が次第に浸透していくことになり、この意識注入こそがこの自衛隊連携訓練の真の目的でもあることは言うまでもない。
 防衛省東京地本の側では、この都教委からの防災訓練を「広報活動」として位置づけられている。つまり自衛隊の募集活動なのである。そして重大なのは、生徒の参加が半強制的であったことだ。
 宿泊を伴う学校行事は、その参加について保護者の承諾書が必要だ。学校が発行したその承諾書を見ると、不参加の場合はその理由を詳細に記入することが求められている。従って、参加についての強制力が強い理由書なのである。
 このために、参加予定者が155名であったが、実際に参加したのは127名であった。通常の学校行事は100%に近いのが通例だが、今回の82%の参加率を見ると、直前欠席者が多かったことが分かる。保護者や生徒本人の中に違和感を持っていた人が多かったことがうかがえる。
 他方、都教委の側では、防衛省と全く別の位置づけが行われていると考えられる。このBUMBへの宿泊訓練に都教委から16人が参加し、その中に金子指導部長の顔があった。
 この事実から、田無工業高校のこの訓練が都教委あげての取組みであったことを見て取ることができる。
 さらに、予算の支出も異常だ。都教委がBUMBへ支払った総額は236万2720円であつた。その内訳は、施設使用料等が131万1820円であり、一般需用費として105万900円の支出が計上されている。その総額は教育費として処理されているのであるが、同じ金額のBUMB発行の領収書があり、「生徒食事代として」と書かれているのである。
 本来、修学旅行等で生徒の食事代を都教委の予算で支出することはあり得ない自己負担が原則だ。他校の防災訓練では、自校の体育館で宿泊と食事をしているが、これはカンパン、アルファ米などの備蓄食で、同じく都の予算で支出していると言っても意味が全く異なっている。宿舎のおいしい生徒の食事代を都から支出させるために「教育費」の名目として、科目改ざんしているのである。
 このような姑息な工作をしてまで支出するこの自衛隊訓練は、都教委にとって特別の意味があると言える。つまり軍事教育化への道が秘策されているからである。そして、都教委は本年度予算として8300万円が「防災訓練」として大幅増額され計上されているのである。集団的自衛権の実態化として教育の中に軍事教育を持ち込もうとする意図を見ることができるのである。
 ◆ 防災の名で自衛隊連擁
 昨年度の田無工業高校と同じように今年もまた自衛隊施設での防災訓練校が実施される予定だ。今年は大島高校が11月26日(水)~28日(金)の日程で神奈川県横須賀の自衛隊武山駐屯地で2年生33名が実施予定だ。
 大島高校の年間行事予定にこの訓練は入っていない。したがって、今年度になり急きょ、都教委からの指導で自衛隊訓練校に名乗りを上げた形になっている。
 大島は昨年の台風26号で大きな災害を被った。そのことが今回の自衛隊訓練にうまく利用されている形となっている。
 大島高校の「申込書」には、災害の状況が示され、「防衛省自衛隊等の国の機関の行動は町中の人々が感謝している」と自衛隊をもちあげ、「自治体のマンパワーには限界があり、防衛省自衛隊の規模や支援行動の大きさを目のあたりにしてきた生徒は、復興に貢献する力量の大きさに驚くばかりであった」と賛美し、強引に自衛隊訓練に結びつけているのである。
 しかし、大島の災害には消防隊も大きな役割を果たしており、自衛隊のみが強調される文面は作為的だ。昨年の大島の災害にこじつけて神奈川県の自衛隊施設で隊内訓練に結びつけているのである。しかし、神奈川県の自衛隊は、大島と何ら関係がないことを知るべきであろう。
 また今年、体育館など自校で行われた宿泊を伴う防災訓練で、すでに、自衛隊との連携が実施された学校がいくつかある。
 都立小笠原高校は、5月23・24日の自校訓練に海上自衛隊が参加した。小笠原父島に海上自衛隊施設があることからその連携となった形だ。
 また、都立秋留台高校(7月11・12日)と都立八潮高校(5月30・31日)も昨年に続き自衛隊との連携を行っている。自衛隊員が講話と言う名の宣伝活動を行っている。
 さらに、都立葛飾総合高校(6月12・13日)も昨年に続き自衛隊との連携を実施したが、この学校では、かまどつくり、お湯沸かしなどの実施訓練に自衛隊員が指導を行った。講話は消防庁からの話であった。
 いずれの学校も昨年に続いての自衛隊連携訓練であり、常態化していくことが危惧される。
 この宿泊を伴う防災訓練は、今年は特別支援学校も強制化されることになっている。学校での宿泊だが、果たして特別支援学校での訓練がどこまで必要なのであろうか疑問だ。
 都立高校のこの宿泊を伴う防災訓練は、生徒の規律化・統制化の訓練へと発展している状況を見て取ることができる。
 それはそのまま国民全体の規律・統制化へとつながっていく。これが自衛隊との連携による教育の軍事化に向かう傾向にあり、私たちはこれに警鐘を鳴らさねばならない。
『週刊新社会』(2014/8/26)

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