◆ 改善が程遠い記者クラブの弊害
もはや“廃止”の時? (週刊金曜日)
4月12日、衆議院厚生労働委4員会で安部晋三首相は森友学園問題で財務省の交渉記録復元と公表の指示を迫られた。窮地の首相を前に、与党は採決を強行した。今村雅弘復興大臣の「自己責任」発言のほとぼりも冷めていない時期のことだ。
籠池泰典氏の証人喚問も「首相を侮辱した」との口実だった。“ごますり的行動”に歯止めが利いていない。安倍一強体制によるおごりと権力者へのすりよりは、ここまで及んでいる。だがこれほどの驕りを許したメディアの責任は軽くない。とりわけ既存の大手マスコミのそれは重大だ。
そのことを証明しているのが、今村大臣の暴言を引き出したのが、フリーの記者だったという事実だ。記者会見の場にいた大手の記者たちは何をしていたのか。何を尋ねていたのか。何を問い詰めていたのか。
大手の記者たちの大半は記者クラブに属し、情報提供の面で優遇されている。そのことに疑問を感じている記者は年々、世代替わりのたびに減少しているように見える。当コラムでは繰り返し、問題視してきた。事態が改善されているとはとうてい言えない。
折しも『週刊文春』4月13日号のコラム「新聞不信」が「なぜ発表ネタばかり書くのか」と題して、全国紙各紙を批判している。
事例にされたのは文部科学省の天下りあっせん問題の報道だ。文科省の発表を待って複数の紙面しかを埋めたふがいなさを、同コラムは叱った。全く同感だ。
文科省からの天下りについては、多少でも取材をすれば容易に把握できたはずだ。同省は多数の許認可権を掌握している。しかも熟年の大学の理事などを東京に呼び出し、30代そこそこの官僚が頭ごなしに指示をしている。そうしたうした様子を垣間見て新たな歪みが生じるという想像力が、記者たちには欠けていたのではないか。
私学だけではない。国立大学の独立行政法人化によって、理事への天下り枠が急増し、文科省は「わが世の春」を満喫してきた。このことを指摘し注目していたのか?
それだけではない。学校施設の整備基準(指針)も同省が作成している。その指針作成の際の実務幹部が建築設計会社に再就職している。同社はHPで、全国の大学から幼稚園までの建築実績を誇示している。
それが今では、東京・杉並区長による小中一貫校校舎建設問題で、指針違反の工事手順を問われている。だが記者の関心は薄い。
取材せずに、発表ネタの報道が“習い性”となっている記者たちは、ネタの提供元を“付度”(そんたく)していないか、疑われる。独自調査やフリー記者のような鋭い質問を、無意識の内に封印をしているのであれば、ことは深刻だ。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は、辺野古基地建設問題や国会審議で、卑劣な恫喝(どうかつ)や小細工を平然とやってのけている。改めて、会見からフリー記者の排除を画策しはしないか。その際など、大手記者たちの対応次第では、クラブ廃止を論じたい。
『週刊金曜日』(2017年4月21日【メディア一撃】)
もはや“廃止”の時? (週刊金曜日)
高嶋伸欣(たかしまのぶよし・琉球大学名誉教授)
4月12日、衆議院厚生労働委4員会で安部晋三首相は森友学園問題で財務省の交渉記録復元と公表の指示を迫られた。窮地の首相を前に、与党は採決を強行した。今村雅弘復興大臣の「自己責任」発言のほとぼりも冷めていない時期のことだ。
籠池泰典氏の証人喚問も「首相を侮辱した」との口実だった。“ごますり的行動”に歯止めが利いていない。安倍一強体制によるおごりと権力者へのすりよりは、ここまで及んでいる。だがこれほどの驕りを許したメディアの責任は軽くない。とりわけ既存の大手マスコミのそれは重大だ。
そのことを証明しているのが、今村大臣の暴言を引き出したのが、フリーの記者だったという事実だ。記者会見の場にいた大手の記者たちは何をしていたのか。何を尋ねていたのか。何を問い詰めていたのか。
大手の記者たちの大半は記者クラブに属し、情報提供の面で優遇されている。そのことに疑問を感じている記者は年々、世代替わりのたびに減少しているように見える。当コラムでは繰り返し、問題視してきた。事態が改善されているとはとうてい言えない。
折しも『週刊文春』4月13日号のコラム「新聞不信」が「なぜ発表ネタばかり書くのか」と題して、全国紙各紙を批判している。
事例にされたのは文部科学省の天下りあっせん問題の報道だ。文科省の発表を待って複数の紙面しかを埋めたふがいなさを、同コラムは叱った。全く同感だ。
文科省からの天下りについては、多少でも取材をすれば容易に把握できたはずだ。同省は多数の許認可権を掌握している。しかも熟年の大学の理事などを東京に呼び出し、30代そこそこの官僚が頭ごなしに指示をしている。そうしたうした様子を垣間見て新たな歪みが生じるという想像力が、記者たちには欠けていたのではないか。
私学だけではない。国立大学の独立行政法人化によって、理事への天下り枠が急増し、文科省は「わが世の春」を満喫してきた。このことを指摘し注目していたのか?
それだけではない。学校施設の整備基準(指針)も同省が作成している。その指針作成の際の実務幹部が建築設計会社に再就職している。同社はHPで、全国の大学から幼稚園までの建築実績を誇示している。
それが今では、東京・杉並区長による小中一貫校校舎建設問題で、指針違反の工事手順を問われている。だが記者の関心は薄い。
取材せずに、発表ネタの報道が“習い性”となっている記者たちは、ネタの提供元を“付度”(そんたく)していないか、疑われる。独自調査やフリー記者のような鋭い質問を、無意識の内に封印をしているのであれば、ことは深刻だ。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は、辺野古基地建設問題や国会審議で、卑劣な恫喝(どうかつ)や小細工を平然とやってのけている。改めて、会見からフリー記者の排除を画策しはしないか。その際など、大手記者たちの対応次第では、クラブ廃止を論じたい。
『週刊金曜日』(2017年4月21日【メディア一撃】)
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