◆ 卒業式の状況と私たちの闘い (被処分者の会通信)
(卒入学式対策本部・川村)
10.23通達から14回目の卒業式が終わりました。卒入学式対策本部で今年特に力を入れたのは、若い教員にこの問題を伝えていくことです。
SEALDsでは、集会などで話す言葉を「誰にでも伝わるかどうか」徹底的に練りに練るそうです。私たちも今まで以上に分かりやすい言葉で「伝える」ことに、もっともっと力を入れていかなければならないと思います。
その手始めとして、いつも作っているパンフに若い教員向けのコラム集を入れてみました。来年度は全分会員に配布することも考えています。
☆ 2.18集会 ☆
2月18日には、「卒業式直前五者総決起集会」が行われました。
前半は、澤藤弁護士から結審を迎える四次訴訟の状況についてのお話、田中弁護士から、最高裁判決を控えた再雇用拒否撤回第二次訴訟についてのお話をいただきました。
後半は、今年の卒業式の状況についての説明の後、職場交流が行われました。
「担任になりたくて教員になったのに、処分されてから13年間担任を外され続けている。教員がものを考えなくなった。ものを考えない教員はものを考えない生徒を作る。『日の丸・君が代』強制によって、『公民』を育てようとしているのだと思う。」
「授業で(国歌斉唱時に起立しなかった)キャパニック選手のことを教材にした」
「若い教員が多く、10.23通達以後のやり方が当たり前になっていて、それをおかしいと思わなくなっている」
「校内人事はトップダウンで、管理職は育ボス宣言を出したり、定時に退勤しろとやたら勧めたりする」
など現場の状況が次々に語られました。
中でも焦点となったのは、定年退職を迎え再任用の任用が決まった教員の問題でした。
2014年の退職者から無年金期間が生じることに伴い、再任用については、無年金の期間は希望者全員(過去に処分歴があっても)の雇用が保障されることになっています。けれど任用が決まった年の卒業式で処分があった場合、本当に任用が取り消されることはないのかが、前例がないのでわからないのです。年金が支給されない中、もし任用が取り消されたなら、失うものがあまりにも多すぎます。
様々な意見が出ましたが、明確な結論はもちろんでませんでした。
☆ 今年の卒業式の状況 ☆
今年も例年通り1月の校長会、副校長会で卒業式に向けた都教委からの詳しい指示・説明がありました。
今年新たに加わったことは「生徒への指導」の問題です。「生徒への指導が適正か、教職員の指導状況を確認」するよう指示が出されたのです。
さらに卒業式の3週間前までに都教委に提出する卒業式の進行表の中に生徒の不起立に対する対応が書かれていないと「司会は、生徒の不起立者多数の場合『ご起立ください』と言う」という文言をいれるよう、都教委から強い指導をうけるようになりました。
2008年から多くの学校で、進行表に「不起立の生徒がいたら司会が起立を促す」という文言が入れられるようになったのですが、これまでは、その文言がなくても都教委は受け取っていました。けれど、今年度は受け取ってもらえなかったのです。
これは10.23通達のターゲットが生徒であることを明確に示す指導であり、絶対に許すことはできません。今後、各学校の進行表の内容について調査し、都教委を厳しく追及していくことが必要だと思います。
小池都知事が、全都立学校の校長・副校長にメールで卒業式のお祝いのメッセージを送り、卒業式の祝電メッセージの冒頭で読むこと、メッセージを校内に掲示することを指示するということもありました。
都教委は3月6日の校長連絡会でも指示を出しましたが、6日以前に卒業式があった学校には指導部から管理職のもとに何度も念押しの電話がありました。
小池都知事はこの指示を出すにあたって、選挙違反にならないか弁護士に相談したそうです。選挙違反にならないとしても、これは明らかに地位を利用した事前選挙運動ともいえる行動であり問題です。
☆ 3.31集会 ☆
不起立を現認され処分を前提とした事情聴取を受けた教員が二人いましたが、処分が発令されないまま、抗議集会を迎えました。
「何度も処分はまだなのかと校長に確認した」「発令されるかもしれないのでぎりぎりまで学校にいた」と、該当者は「まるで処分を待ち望んでいるかのような行動をとってしまった」と冗談めかして言っていましたが、これは初めての事態でした。
こうして「3.31.集会」は本来は「卒業式処分発令抗議・該当者支援総決起集会」なのですが、「処分をするな」集会になったのです。
「4回目の不起立の処分量定をどうするか迷っている」「卒業式が遅かった人がいる」「該当者に退職者・異動者がいない」など、様々な理由が考えられますが、とにかく年度内に処分を発令する必要がないと都教委が判断したということです。
処分はいっ発令されるのか、4回目の不起立の方の処分量定はどうなるのかなど、今後注視する必要があります。
該当者の一人Sさんの学校では、今回卒業証書授与の呼名を担任が生徒一人一人の顔を見ながら壇上で行うということをして、とても感動的な式になったという心温まるエピソードもありましたが、異常な事態も起こったということでした。
不起立の現認の際、副校長が「S先生、平成年29年2月○日に出された包括的職務命令、2月○日に渡された個別職務命令に従って起立斉唱してください!命令に従わないんですか!平成29年3月○日○時○分、S教諭の不起立を現認しました。卒業式終了後ただちに校長室にお越しください。」と、周りの人が振り向くほどの大きな声で35秒ぐらいずっと言い続けたというのです。
S教諭が注意しても声を小さくすることはなかったそうです。
もう一人の該当者の時には例年と同じような現認の仕方がなされたということです。
副校長連絡会での都教委の説明は台本通りのことしか言わないので、支援センターの違いによる差はないはずです。従って、これは都教委の意向を「忖度」した結果の行き過ぎであったと考えられます。
今学校現場では都教委の意向や校長の意向を「付度」した行き過ぎがいたるところでみられます。けれど、そういう学校現場の「空気」を動かすのは我々であり、我々が変えていかなければならないと、Sさんは訴えました。
もう一人の該当者0さんの勤務校は三修制を行っている定時制高校です。0さんは3学年の担任で、三修制で卒業する生徒が一人いました。
来年の卒業式のこともあるので、休暇を取るか出席するかとても悩んだそうです。「卒業生が一人だから休暇を取っていいということはないと思い式に出席し、卒業生を見送ることができたことはよかったし、後悔はしていない。けれど、担任はおろされてしまった。」と語る0さんの苦しさ、悲しさは計り知れないものがあると思います。
今年3学年の担任で卒業式に休暇を取ってしまったために、決まっていた新1学年の担任をはずされた人もいました。
卒入学式に参列しなくてもいい2学年の担任しかやらせてもらえないという人もいます。
特別支援学校でも、不起立の可能性のある教員の卒入学式からの排除が続いています。
週休日に行われた前任校の卒業式に参列し(出張ではなく、保護者席の後ろに座らされ)起立しなかったことを校長から追及されたというとんでもないこともありました。
10.23通達が発出されてから今まで、卒業式での処分が途絶えたことはありません。そこに私は都立学校の教員の底力や闘いの歴史の厚みを感じます。
けれど、不起立の数だけに注目するのは間違っています。不起立の数だけではわからない様々なドラマや抵抗の形があるのです。
「教員が日々どのようなふるまいをしているかが、生徒に影響を及ぼしている可能性がある。理不尽へのあきらめや、権力への服従や、責任のごまかしや、生徒たち以上の閉鎖性などが、もし教員の間に広がっていれば、それは生徒におそるべき教育効果を発揮しているだろう。」
これは、月間JTU(2017.3)に掲載された、東大の本田由紀さんの文章です。
教員という仕事の意味を考えるからこそ私たちは間違った命令に従えないのだと思います。
0さんが集会で訴えていたように、私たちはただ卒入学式で国旗国歌の強制をなくすことだけを求めて闘っているのではありません。
今東京の教育現場に広がる、あきらめや、権力への服従や閉塞感等を打破し、自由で闊達な教育を取り戻したいとの思いがそこにあるのです。
抵抗を続ける教員の存在が、周りの教員や生徒に伝えるものは大きいと信じて、私たちはこれからも闘い続けます。
『被処分者の会通信 第110号』(2017/4/4)
(卒入学式対策本部・川村)
10.23通達から14回目の卒業式が終わりました。卒入学式対策本部で今年特に力を入れたのは、若い教員にこの問題を伝えていくことです。
SEALDsでは、集会などで話す言葉を「誰にでも伝わるかどうか」徹底的に練りに練るそうです。私たちも今まで以上に分かりやすい言葉で「伝える」ことに、もっともっと力を入れていかなければならないと思います。
その手始めとして、いつも作っているパンフに若い教員向けのコラム集を入れてみました。来年度は全分会員に配布することも考えています。
☆ 2.18集会 ☆
2月18日には、「卒業式直前五者総決起集会」が行われました。
前半は、澤藤弁護士から結審を迎える四次訴訟の状況についてのお話、田中弁護士から、最高裁判決を控えた再雇用拒否撤回第二次訴訟についてのお話をいただきました。
後半は、今年の卒業式の状況についての説明の後、職場交流が行われました。
「担任になりたくて教員になったのに、処分されてから13年間担任を外され続けている。教員がものを考えなくなった。ものを考えない教員はものを考えない生徒を作る。『日の丸・君が代』強制によって、『公民』を育てようとしているのだと思う。」
「授業で(国歌斉唱時に起立しなかった)キャパニック選手のことを教材にした」
「若い教員が多く、10.23通達以後のやり方が当たり前になっていて、それをおかしいと思わなくなっている」
「校内人事はトップダウンで、管理職は育ボス宣言を出したり、定時に退勤しろとやたら勧めたりする」
など現場の状況が次々に語られました。
中でも焦点となったのは、定年退職を迎え再任用の任用が決まった教員の問題でした。
2014年の退職者から無年金期間が生じることに伴い、再任用については、無年金の期間は希望者全員(過去に処分歴があっても)の雇用が保障されることになっています。けれど任用が決まった年の卒業式で処分があった場合、本当に任用が取り消されることはないのかが、前例がないのでわからないのです。年金が支給されない中、もし任用が取り消されたなら、失うものがあまりにも多すぎます。
様々な意見が出ましたが、明確な結論はもちろんでませんでした。
☆ 今年の卒業式の状況 ☆
今年も例年通り1月の校長会、副校長会で卒業式に向けた都教委からの詳しい指示・説明がありました。
今年新たに加わったことは「生徒への指導」の問題です。「生徒への指導が適正か、教職員の指導状況を確認」するよう指示が出されたのです。
さらに卒業式の3週間前までに都教委に提出する卒業式の進行表の中に生徒の不起立に対する対応が書かれていないと「司会は、生徒の不起立者多数の場合『ご起立ください』と言う」という文言をいれるよう、都教委から強い指導をうけるようになりました。
2008年から多くの学校で、進行表に「不起立の生徒がいたら司会が起立を促す」という文言が入れられるようになったのですが、これまでは、その文言がなくても都教委は受け取っていました。けれど、今年度は受け取ってもらえなかったのです。
これは10.23通達のターゲットが生徒であることを明確に示す指導であり、絶対に許すことはできません。今後、各学校の進行表の内容について調査し、都教委を厳しく追及していくことが必要だと思います。
小池都知事が、全都立学校の校長・副校長にメールで卒業式のお祝いのメッセージを送り、卒業式の祝電メッセージの冒頭で読むこと、メッセージを校内に掲示することを指示するということもありました。
都教委は3月6日の校長連絡会でも指示を出しましたが、6日以前に卒業式があった学校には指導部から管理職のもとに何度も念押しの電話がありました。
小池都知事はこの指示を出すにあたって、選挙違反にならないか弁護士に相談したそうです。選挙違反にならないとしても、これは明らかに地位を利用した事前選挙運動ともいえる行動であり問題です。
☆ 3.31集会 ☆
不起立を現認され処分を前提とした事情聴取を受けた教員が二人いましたが、処分が発令されないまま、抗議集会を迎えました。
「何度も処分はまだなのかと校長に確認した」「発令されるかもしれないのでぎりぎりまで学校にいた」と、該当者は「まるで処分を待ち望んでいるかのような行動をとってしまった」と冗談めかして言っていましたが、これは初めての事態でした。
こうして「3.31.集会」は本来は「卒業式処分発令抗議・該当者支援総決起集会」なのですが、「処分をするな」集会になったのです。
「4回目の不起立の処分量定をどうするか迷っている」「卒業式が遅かった人がいる」「該当者に退職者・異動者がいない」など、様々な理由が考えられますが、とにかく年度内に処分を発令する必要がないと都教委が判断したということです。
処分はいっ発令されるのか、4回目の不起立の方の処分量定はどうなるのかなど、今後注視する必要があります。
該当者の一人Sさんの学校では、今回卒業証書授与の呼名を担任が生徒一人一人の顔を見ながら壇上で行うということをして、とても感動的な式になったという心温まるエピソードもありましたが、異常な事態も起こったということでした。
不起立の現認の際、副校長が「S先生、平成年29年2月○日に出された包括的職務命令、2月○日に渡された個別職務命令に従って起立斉唱してください!命令に従わないんですか!平成29年3月○日○時○分、S教諭の不起立を現認しました。卒業式終了後ただちに校長室にお越しください。」と、周りの人が振り向くほどの大きな声で35秒ぐらいずっと言い続けたというのです。
S教諭が注意しても声を小さくすることはなかったそうです。
もう一人の該当者の時には例年と同じような現認の仕方がなされたということです。
副校長連絡会での都教委の説明は台本通りのことしか言わないので、支援センターの違いによる差はないはずです。従って、これは都教委の意向を「忖度」した結果の行き過ぎであったと考えられます。
今学校現場では都教委の意向や校長の意向を「付度」した行き過ぎがいたるところでみられます。けれど、そういう学校現場の「空気」を動かすのは我々であり、我々が変えていかなければならないと、Sさんは訴えました。
もう一人の該当者0さんの勤務校は三修制を行っている定時制高校です。0さんは3学年の担任で、三修制で卒業する生徒が一人いました。
来年の卒業式のこともあるので、休暇を取るか出席するかとても悩んだそうです。「卒業生が一人だから休暇を取っていいということはないと思い式に出席し、卒業生を見送ることができたことはよかったし、後悔はしていない。けれど、担任はおろされてしまった。」と語る0さんの苦しさ、悲しさは計り知れないものがあると思います。
今年3学年の担任で卒業式に休暇を取ってしまったために、決まっていた新1学年の担任をはずされた人もいました。
卒入学式に参列しなくてもいい2学年の担任しかやらせてもらえないという人もいます。
特別支援学校でも、不起立の可能性のある教員の卒入学式からの排除が続いています。
週休日に行われた前任校の卒業式に参列し(出張ではなく、保護者席の後ろに座らされ)起立しなかったことを校長から追及されたというとんでもないこともありました。
10.23通達が発出されてから今まで、卒業式での処分が途絶えたことはありません。そこに私は都立学校の教員の底力や闘いの歴史の厚みを感じます。
けれど、不起立の数だけに注目するのは間違っています。不起立の数だけではわからない様々なドラマや抵抗の形があるのです。
「教員が日々どのようなふるまいをしているかが、生徒に影響を及ぼしている可能性がある。理不尽へのあきらめや、権力への服従や、責任のごまかしや、生徒たち以上の閉鎖性などが、もし教員の間に広がっていれば、それは生徒におそるべき教育効果を発揮しているだろう。」
これは、月間JTU(2017.3)に掲載された、東大の本田由紀さんの文章です。
教員という仕事の意味を考えるからこそ私たちは間違った命令に従えないのだと思います。
0さんが集会で訴えていたように、私たちはただ卒入学式で国旗国歌の強制をなくすことだけを求めて闘っているのではありません。
今東京の教育現場に広がる、あきらめや、権力への服従や閉塞感等を打破し、自由で闊達な教育を取り戻したいとの思いがそこにあるのです。
抵抗を続ける教員の存在が、周りの教員や生徒に伝えるものは大きいと信じて、私たちはこれからも闘い続けます。
『被処分者の会通信 第110号』(2017/4/4)
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