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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

都立高図書館に「民間」司書

2011年03月03日 | 暴走する都教委
 ◆ 都立高図書館に「民間」司書

 東京都立高校の一部で四月から、図書館の管理運営業務が民間委託される。若者の読書離れなどに対し、学校図書館館の重要性が指摘される中、学校司書を委託化することに、懸念や疑問の声が出ている。(境田未緒)
 ◆ 教師との連携などに不安

 東京都台東区の都立忍岡高校図書館。昼休みの館内は、次々訪れて本を探したり、畳敷きスペースに座って雑誌を読んだりする生徒で活気にあふれていた。同校は、普通科と生活科学科の全日制単位制高校。
 司書歴三十九年の学校司書、大ロ和枝さん(59)は毎日、帰宅途中に書店で新刊をチェックし、週末には新聞五紙の書評に目を通す
 「学校によって生徒が求める本、必要な本は全く違います」。館内には若者に人気の本や雑誌がずらり。国語教諭と相談し、限られた予算の中で、生徒が授業で一斉に使えるよう確保した古語辞典四十冊も並ぶ。
 図書を選ぶには、知識の上に生徒や教師との密な会話が必須。蔵書数は多くないのに、図書委員長で二年の望月香菜さん(17)は「授業でこういう本が必要、と思ったら大抵ある」と驚きを込めて話す。
 東京都は〇三年度から、専門講習を受けた「司書教諭」の各校配置に伴い、全日制・定時制併置校に二人いた学校司書の定数を一人に減らした。以後、新規採用は全くせず、一〇年度には、都立高校全体のうち七校で欠員が生じている。
 一方で新年度から、十八校で図書館業務を民間委託。全日制にも全・定併置校にも司書を複数配置し、委託化で浮く費用の一部を、図書館管理システムの全校導入に振り向け、蔵書検索などをしやすくする。
 都教育庁高校教育課の藤本龍夫課長は「全・定併置校でも生徒がいる間ずっと開館できる。夏休みなどの開館も可能」委託化の利点を強調。「司書教諭を中心に学校全体で読書活動を推進する」と語る。
 ただ学校司書は教師と連携・協働し、調ぺ学習などの支援もしている。民間委託後の司書は、業者の担当者を間に介し、学校や教師から直接、指示や指導を受けられない臨機応変な対応は難しくなりそうだ。
 蔵書選びや図書委員会活動などで負担が増える司書教諭は、授業や部活動に忙殺されているのが現状。毎年の入札で委託先が決まるため、事業の継続性の問題も指摘される。委託業者に雇われる司書の給与も低く抑えられる可能性が高い。
 忍岡高の大口さんは「司書になりたい若者は多いのに、不安定な立場で働かせていいのか。新たな官製ワーキングプアです」と嘆く。
 学校図書館に詳しい八洲学園大の高鷲忠美教授は「職員が足りていて、施設や蔵書がよく見えても、駄目な図書館はたくさんある」と都教育庁の方向性をチクリ。「司書には、司書教諭との連携、他校司書との交流、研修も必要。経済性だけで考えてはいけない」と委託に疑問を投げかける。
 ◆ "民営化"自治体で温度差
   長野:民間委託は見送りに
   三重:10年度から採用復活


 高校図書館業務の民間委託が、以前、行財政改革の一環として検討された長野県では、各界から反対の声が出て見送られた。県教委の担当者は「委託だと、司書は校長の直接の指揮命令下に入らず、委託先と協議しなければいけない。生徒とかかわる問題が発生しても、速やかに対応できない懸念がある」と理由を語る。
 高校では、学校司書の配置率が全国で約七割と、小・中学校よりも高く、正規職員の割合も多い。だが近年の人件費抑制で退職補充をせず、臨時職員として雇う自治体が増えている。
 一方、学校図書館活用を重視する鳥取県は、片山善博総務相が知事だった〇二年度から五年間かけて、全県立高校に正規職員の司書を配置
 三重県は一〇年度採用試験で、〇六年度から途切れていた司書採用を復活した。県教委は「学校司書は重要な存在。継続して図書館活動をやってもらいたい」と話す。
 ※学校司書と司書教諭
 学校司書は、学校図書館の管理、運営などを担当する職員。法的規定はないが、司書資格を必要とされる場合が多い。
 司書教諭は12学級以上の学校で配置が義務付けられ、所定の講習を受けた教師が任命される。

『東京新聞』(2011/2/24)

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