=たんぽぽ舎です。【TMM:No4125】「メディア改革」連載第54回=
◆ 菅首相長男・菅正剛氏が総務省幹部4人を違法接待
また「週刊文春」が大きな仕事をした。2月4日発売の「週刊文春」11日号は、<菅首相長男 高級官僚を違法接待 決定的瞬間をスクープ撮>と題した9頁(白黒写真グラビアを含む)の記事で、菅義偉首相の長男で株式会社「東北新社」統括部長の菅正剛氏らが総務省の幹部4人を違法接待していたと報じた。
森喜朗氏の女性差別問題が大問題になっているが、首相「長男」による贈収賄被疑事件も重要だ。
◆ 長男は元総務相秘書官で衛星放送会社役員コロナ禍で高級店会食
菅正剛氏は、菅首相が安倍晋三第一次政権で総務相に就任した2006年から2007年にかけて、25歳の若さで総務相秘書官を務めた。縁故、血縁、公助だ。
正剛氏は衛星放送などの業務を行う東北新社のメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長で、同社の子会社である株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役を兼ねている。
正剛氏らは昨年10月から12月、都内の1人4万円を超す高級料亭や割烹、寿司屋で接待し、手土産やタクシーチケットを渡していた。
接待を受けたのは、今夏に事務次官就任が予定されている谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送などの許認可にかかわる情報流通行政局の秋本芳徳局長、その部下で同局官房審議官の湯本博信氏の計4名だ。
◎ 総務省は放送事業の許認可権を持つ所管官庁。接待の時期は、東北新社が株主であるスターチャンネルの更新(5年ごと)時期だった。
4人は、割り勘であっても1人当たりの金額が1万円を超える際に義務付けられている役所の倫理監督官への届出も出していなかった。正剛氏は4回の接待のすべてに同席していた。
菅氏は3日夜に行われた官邸で番記者のぶら下がり取材に、「私自身は全く承知していない。今、総務省のほうで適切に対応される。(長男に聞くことは)考えていない」と述べた。
しかし、黒岩宇洋衆院議員(立民)らが4日の予算委で追及した。は良かった。
菅氏は「文春のグラビア写真で長髪の男性は首相のご子息か」と聞かれ、「分からない」と答えた。黒岩氏は質疑の中で、「予算委理事会は文春記事を参考資料として議場で示すことを禁じた」と明かした。
NHKで中継されるので、文春記事を資料として認めなかったのだろうが、自公による不当な検閲だ。
接待を受けた4人のうち審議官の谷脇、吉田両氏は衆院予算委への政府参考人としての出席を拒否した。「次官級だから」という理由だ。
秋本局長とその部下の湯本氏だけが出席した。これも自公の不当な審議妨害だ。
◎ 正剛氏の接待問題は、3日からネットの文春オンラインで報道されていたが、テレビ、新聞は正剛氏を仮名にして、東北新社の社名を伏せたテレビもあった。テレビでは、総務省幹部4人も仮名だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210203/k10012848491000.html
◆ 首相は「別人格の民間人」と詭弁
菅氏が「私の親族ではあるが、民間人だ」「長男は40歳になり、(最近)ほとんど会ってもいない。長男は私と全くの別人格で、家族もいて、名誉やプライバシーに関わる」と強調したのは、通用しない理屈だ。菅内閣は、「首相の子どもは私人」という閣議決定でもするのだろうか。
◎ 菅氏は、40歳にもなって、「親の七光り」を使う情けない長男に「自助」はきちんと教えなかったようだ。菅氏は聞かれてもいないのに、東北新社の創業者社長(2年前に死去)は同じ秋田県出身で親しく、選挙の支援をしてもらったと明かした。
黒岩氏の追及に、「息子に電話して、勤務先で調査があれば、しっかり協力するよう、(息子に)申し上げた」と答弁した。
その後も、何度か、「息子に申し上げた」と子どもに敬語を使った。
菅氏の日本語はおかしい。答弁では、「こした」「そした」「…ちゅう」とよく言うのも耳障りだ。
◆ 報道各社は正剛氏「実名」隠し
◎ 「週刊文春」は正剛氏と総務省の4人の実名を掲載し、5人に直当たり取材もしている。グラビア特集で、正剛氏の写真に黒の目隠しを入れたのは残念だが、正剛氏の学歴、職歴も書いた。総務省幹部(夏に事務次官就任予定ら)4人の実名、横顔もしっかり書いている。
ところが、新聞・通信社は正剛氏を仮名にしている。政権反対党の議員が衆院予算委でこの事件をしっかり追及しているが、首相への質問で、正剛氏を「ご子息」「ご長男」などと仮名にしているのも問題だ。
総務省の4人の実名もあまり出ない。
5日の朝日新聞は、「総務省によると」として4人の実名を載せたが、他紙は<谷脇康彦総務審議官ら審議官ら幹部>と報じ、3人は仮名だった。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210203-OYT1T50235/
6日の東京新聞は一面トップ(山口哲人記者)の記事で、4人を実名報道した。社説でも、「政官癒着の典型ではないか」と断じ、徹底的な真相解明を求めた。朝日新聞も3、4面記事と「菅首相 人ごとではない」と題した社説で詳しく報じた。
公人中の公人でも、広報がないと仮名にするのがキシャクラブメディアの「実名原則」だ。正剛氏の実名を報道しない報道各社は、なぜ、仮名にするのかを読者・視聴者に説明すべきだ。
◎ 政府・総務省は事実関係を認めたが、「首相長男」の事件に及び腰だ。予算委に出席して答弁に立った秋本局長は接待の事実を認め、飲食代・タクシー代を2日に返金したと答えた。8日の衆院予算委では、秋本、湯本両氏が正剛氏と「平均すると年に1回ずつ会食してきた」と答弁した。
しかし、秋本氏は、誰に返金したかなどは「公務員倫理審査会で調査されている身なので、答弁は差し控える」とした。「衛星放送の話が出たか」という問いには、「記憶にない」と答え続けた。
◆ 元特捜検事が「贈収賄事件に発展の可能性」を指摘
◎ 総務省ナンバー2らの幹部が2時間半の会食をしたのは、菅首相の息子だったからとしか考えられない。モリ・カケ・サクラと同根の縁故主義・依怙贔屓、行政の私物化だ。
この違法接待は、公務員倫理に反するだけでなく、贈収賄被疑事件の可能性があると、あの若狭勝弁護士(元東京地検特捜部副部長)がコメントしている。
菅首相が国会で、正剛氏について、「別人格」「民間人」と主張したことが妥当か、社会全体で議論すべきだ。自民党は、「凶悪事件」で起訴される少年の実名報道を強く進めてきた。
コロナ禍の給付金を詐取した疑いで逮捕された大学生は晒し者にされ、プロ野球界にいた祖父のことまで報道された。
特措法改定で、時短命令に従わない飲食店名などを公表することになったのに、贈収賄事件に絡む首相の長男(会社役員)の実名を書かない、書けないメディアが人民の信頼を得ることはできない。
◆ 菅首相長男・菅正剛氏が総務省幹部4人を違法接待
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
また「週刊文春」が大きな仕事をした。2月4日発売の「週刊文春」11日号は、<菅首相長男 高級官僚を違法接待 決定的瞬間をスクープ撮>と題した9頁(白黒写真グラビアを含む)の記事で、菅義偉首相の長男で株式会社「東北新社」統括部長の菅正剛氏らが総務省の幹部4人を違法接待していたと報じた。
森喜朗氏の女性差別問題が大問題になっているが、首相「長男」による贈収賄被疑事件も重要だ。
◆ 長男は元総務相秘書官で衛星放送会社役員コロナ禍で高級店会食
菅正剛氏は、菅首相が安倍晋三第一次政権で総務相に就任した2006年から2007年にかけて、25歳の若さで総務相秘書官を務めた。縁故、血縁、公助だ。
正剛氏は衛星放送などの業務を行う東北新社のメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長で、同社の子会社である株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役を兼ねている。
正剛氏らは昨年10月から12月、都内の1人4万円を超す高級料亭や割烹、寿司屋で接待し、手土産やタクシーチケットを渡していた。
接待を受けたのは、今夏に事務次官就任が予定されている谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送などの許認可にかかわる情報流通行政局の秋本芳徳局長、その部下で同局官房審議官の湯本博信氏の計4名だ。
◎ 総務省は放送事業の許認可権を持つ所管官庁。接待の時期は、東北新社が株主であるスターチャンネルの更新(5年ごと)時期だった。
4人は、割り勘であっても1人当たりの金額が1万円を超える際に義務付けられている役所の倫理監督官への届出も出していなかった。正剛氏は4回の接待のすべてに同席していた。
菅氏は3日夜に行われた官邸で番記者のぶら下がり取材に、「私自身は全く承知していない。今、総務省のほうで適切に対応される。(長男に聞くことは)考えていない」と述べた。
しかし、黒岩宇洋衆院議員(立民)らが4日の予算委で追及した。は良かった。
菅氏は「文春のグラビア写真で長髪の男性は首相のご子息か」と聞かれ、「分からない」と答えた。黒岩氏は質疑の中で、「予算委理事会は文春記事を参考資料として議場で示すことを禁じた」と明かした。
NHKで中継されるので、文春記事を資料として認めなかったのだろうが、自公による不当な検閲だ。
接待を受けた4人のうち審議官の谷脇、吉田両氏は衆院予算委への政府参考人としての出席を拒否した。「次官級だから」という理由だ。
秋本局長とその部下の湯本氏だけが出席した。これも自公の不当な審議妨害だ。
◎ 正剛氏の接待問題は、3日からネットの文春オンラインで報道されていたが、テレビ、新聞は正剛氏を仮名にして、東北新社の社名を伏せたテレビもあった。テレビでは、総務省幹部4人も仮名だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210203/k10012848491000.html
◆ 首相は「別人格の民間人」と詭弁
菅氏が「私の親族ではあるが、民間人だ」「長男は40歳になり、(最近)ほとんど会ってもいない。長男は私と全くの別人格で、家族もいて、名誉やプライバシーに関わる」と強調したのは、通用しない理屈だ。菅内閣は、「首相の子どもは私人」という閣議決定でもするのだろうか。
◎ 菅氏は、40歳にもなって、「親の七光り」を使う情けない長男に「自助」はきちんと教えなかったようだ。菅氏は聞かれてもいないのに、東北新社の創業者社長(2年前に死去)は同じ秋田県出身で親しく、選挙の支援をしてもらったと明かした。
黒岩氏の追及に、「息子に電話して、勤務先で調査があれば、しっかり協力するよう、(息子に)申し上げた」と答弁した。
その後も、何度か、「息子に申し上げた」と子どもに敬語を使った。
菅氏の日本語はおかしい。答弁では、「こした」「そした」「…ちゅう」とよく言うのも耳障りだ。
◆ 報道各社は正剛氏「実名」隠し
◎ 「週刊文春」は正剛氏と総務省の4人の実名を掲載し、5人に直当たり取材もしている。グラビア特集で、正剛氏の写真に黒の目隠しを入れたのは残念だが、正剛氏の学歴、職歴も書いた。総務省幹部(夏に事務次官就任予定ら)4人の実名、横顔もしっかり書いている。
ところが、新聞・通信社は正剛氏を仮名にしている。政権反対党の議員が衆院予算委でこの事件をしっかり追及しているが、首相への質問で、正剛氏を「ご子息」「ご長男」などと仮名にしているのも問題だ。
総務省の4人の実名もあまり出ない。
5日の朝日新聞は、「総務省によると」として4人の実名を載せたが、他紙は<谷脇康彦総務審議官ら審議官ら幹部>と報じ、3人は仮名だった。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210203-OYT1T50235/
6日の東京新聞は一面トップ(山口哲人記者)の記事で、4人を実名報道した。社説でも、「政官癒着の典型ではないか」と断じ、徹底的な真相解明を求めた。朝日新聞も3、4面記事と「菅首相 人ごとではない」と題した社説で詳しく報じた。
公人中の公人でも、広報がないと仮名にするのがキシャクラブメディアの「実名原則」だ。正剛氏の実名を報道しない報道各社は、なぜ、仮名にするのかを読者・視聴者に説明すべきだ。
◎ 政府・総務省は事実関係を認めたが、「首相長男」の事件に及び腰だ。予算委に出席して答弁に立った秋本局長は接待の事実を認め、飲食代・タクシー代を2日に返金したと答えた。8日の衆院予算委では、秋本、湯本両氏が正剛氏と「平均すると年に1回ずつ会食してきた」と答弁した。
しかし、秋本氏は、誰に返金したかなどは「公務員倫理審査会で調査されている身なので、答弁は差し控える」とした。「衛星放送の話が出たか」という問いには、「記憶にない」と答え続けた。
◆ 元特捜検事が「贈収賄事件に発展の可能性」を指摘
◎ 総務省ナンバー2らの幹部が2時間半の会食をしたのは、菅首相の息子だったからとしか考えられない。モリ・カケ・サクラと同根の縁故主義・依怙贔屓、行政の私物化だ。
この違法接待は、公務員倫理に反するだけでなく、贈収賄被疑事件の可能性があると、あの若狭勝弁護士(元東京地検特捜部副部長)がコメントしている。
菅首相が国会で、正剛氏について、「別人格」「民間人」と主張したことが妥当か、社会全体で議論すべきだ。自民党は、「凶悪事件」で起訴される少年の実名報道を強く進めてきた。
コロナ禍の給付金を詐取した疑いで逮捕された大学生は晒し者にされ、プロ野球界にいた祖父のことまで報道された。
特措法改定で、時短命令に従わない飲食店名などを公表することになったのに、贈収賄事件に絡む首相の長男(会社役員)の実名を書かない、書けないメディアが人民の信頼を得ることはできない。
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