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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

高校無償化や幼保無償化に続き、「緊急給付金」の対象から朝鮮大学校生を除外する差別

2021年03月18日 | 平和憲法
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 「線の外」に置かれた私たち
   ~コロナ緊急給付金からの排除をめぐって

李ミライ(リーみらい・朝鮮大学校4年生)

 ◆ 期待が失望へ

 全世界で猛威を振るい、いまだ終息の兆しすら見えない新型コロナウイルス。コロナ・パンデミックは、私たちの生活に多くの変化をもたらしています。再び「緊急事態宣言」が発令される中、卒業まで約1か月となった私の学生生活は一体どうなってしまうのか、という不安とやり場のない悔しさで胸が一杯です。
 特にコロナ禍によって生活が困窮し、学生生活そのものを継続できないかもしれないと悩む同級生や後輩も多く、不安はさらに募るばかりです。
 そもそも朝鮮大学校にはいかなる公的補助も適用されていません。そのため私を含め多くの学生が勉強やサークル活動の合間を縫って、睡眠時間も削りながらアルバイトをしています。
 アルバイト収入が学費や生活費の少なからぬ部分を支えているのです。
 また、在日3世・4世である私たちは、実家が飲食業など零細な自営業であるケースが多く、そのうえ弟妹の通う朝鮮高校が「無償化」から除外されているため、各家庭に学費負担が重くのしかかり、元来、日本の一般家庭に比べ学びの条件は脆弱です。
 それだけに、日本政府がコロナ禍により困窮する大学生などに向けて「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下、「緊急給付金」)の創設を発表した際、私は当然朝鮮大学校生も給付対象に含まれるものと期待しました。
 ウイルスは人種や民族を問いません。まさかコロナ禍においてまで差別はないだろうと考えていました。しかし、ふたを開けてみると朝鮮大学校で学ぷ私たちは対象に含まれないと知り、期待は失望と怒りに変わりました。
 ◆ 外国人留学生との連帯

 昨年5月に閣議決定された「緊急給付金」の創設は、困窮学生の学びの継続を謳う施策ですが、朝鮮大学校生が除外された以外にも外国人学生に対してきわめて差別的であることが次第に明らかになりました。
 外国人留学生は給付対象となりましたが、日本人学生にはない「成績優秀者」という要件が別途課されました。
 「移住者と連帯する全国ネットワーク」「外国人人権法連絡会」など、5つのNGOの働きかけにより、5月29日に文科省への要請が行われました。私は朝鮮大学校生の代表の一人として要請行動に参加しました。
 私たちの要請に対する文科省の対応は、ゼロ回答に等しい冷たいものでした。
 しかし、私はその場で共に差別に反対し声をあげる外国人留学生たちと出会いました。この出会いを通して、今回の問題を日本に住む外国人学生全体の学びの権利への侵害と捉えるべきであり、当事者である私たちが声を上げ行動を起こすべきであると強く感じました。
 私は留学生のタマンさん、ダカルさんと共に、外国人学生の学びの権利はどうあるべきかを考え、差別に反対するために声を上げる場として、「在日外国人学生の学びの権利を考える会」を立ち上げました。
 そして、文科省に対する再度の要請行動に向けて、すべての外国人学生に対し、「緊急給付金」の公平な給付を求める署名活動を始めることにしました。
 署名を呼び掛ける趣旨文において、私たちは次の二点を主張しました。
 第一に、「緊急給付金」制度において、外国人留学生に対してのみ設けられている「成績要件」を撤回することです。コロナ禍による生活困窮者に対する「学びの継続」のための現金給付こそが本施策の趣旨であるにもかかわらず、困窮状況とは関係のない学業成績による要件を留学生に対してのみ設けることは明らかな国籍差別であるからです。
 第二に、朝鮮大学校生を給付対象に含めることです。文科省は、朝鮮大学校は各種学校であり高等教育機関であることの担保がないという理由で給付対象から除外していますが、大学院入学資格(1999年)、旧司法試験一次試験免除(2004年)、社会福祉士及び介護福祉士受験資格(2012年)など、朝鮮大学校を高等教育機関と同等のものと認め、関係法施行規則を改正した例はいくつもあり、文科省の説明は論理的に破綻しています。
 ◆ 「差別ではない」と言い張る文科省

 国会議員によるヒアリングを兼ねた二回目の文科省要請は7月16日に開催されました。
 ネット署名のフオームが正式に立ち上がったのは7月13日でした。わずか3日間という短い期間でしたが、多くの方々の賛同と協力によって約6800筆のネット署名が集まりました。
 しかし、当日私たちの要請に対応し署名を受け取った文科省職員は、「文科省としてできる限り精一杯手を広げたつもりだったが、引いた線の外にある所からなぜ自分たちは対象外なのかという話を日々聞いている。線を引いた外にある学びを否定しているつもりはないが、現在のスキームが適用できる最大限の範囲がいまの対象だ」と言いました。
 「線の外」という言葉が心に深く刺さりました。
 予算に限りがあり、線を引かなければならないのも重々承知ですが、学びの継続を後押しする今回の施策においては、線引きの基準が「困窮の度合い」であるべきです。しかしなぜ私たちは、異なる基準によって「線の外」に放り出されているのでしょうか。
 11月末に3回目の要請活動を行った際にも文科省の方は、「線を引いて誰かを排除するという考えではなく、高等教育機関という枠の中でどこまで対象とすべきか検討した結果、現在の給付金の対象範囲となっている。『差別や排除という立場で制度をつくっているわけではない』ということは理解していただきたい」と述べました。
 しかし、困窮に陥る中、当事者が何度も強く救済を要請しているにもかかわらず、「各種学校だから」という形式論で救済施策から排除され続けている今の状況を「差別」と言わずに、なんといえばいいのでしょうか。
 高校無償化幼保無償化に続き、今回の「緊急給付金」対象からの除外を目の当たりにし、改めて、声を上げ行動する必要性を感じました。
 それは、差別に「慣れ」て「線の外」に置かれていることを当たり前のことと考えてしまうことが一番恐ろしいと思うからです。
 そういう中でも手を差し伸べ励ましてくれた日本の友人もいました。
 積極的に動いてくださった国会議員や記者の皆さん、そして、709人の「大学教職員声明」は私たちに大きな勇気と希望を与えてくれました。
 朝鮮学校に対する様々な差別や排除があることを多くの方々に知ってもらいたいです。
 世界的なパンデミックが続く中、一番大切なのは日本人と朝鮮人を含む外国人が手を取り合い、ウイルスに打ち勝っていくことだと思います。私たちはウイルスにも差別にも負けません。これからも頑張ります。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 136号』(2021.2)

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