占領70年の2015年を国民県民の主権と民族意識目覚めの年に
「平和的で責任ある政府が樹立されたとき,連合国の占領軍は、直ちに日本国から撤退しなければならない」(ポツダム宣言)。
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」(憲法前文)
=書評(草の根ニュース 米軍占領70年特集号)=
◆ 『永続敗戦論一戦後日本の核心』(白井聡・著)大田出版刊/定価1700円
〈「永続敗戦」それは戦後日本のレジームの核心的本質であり、「敗戦の否認」を意味する。国内およびアジアに対しては敗北を否認することによって「神州不滅」の神話を維持しながら、自らを容認し支えてくれる米国に対しては盲従を続ける。
敗戦を否認するがゆえに敗北が際限なく続く一それが「永続敗戦」という概念の指し示す構造である。今日、この構造は明らかな破綻に瀕している。
1945年以来、われわれはずっと「敗戦」状態にある。「侮辱のなかに生きる」ことを拒絶せよ。〉
以上は、同書の宣伝文である。
同書は以下の項目からなる。
第一章「戦後」の終わり/
第一節「私らは侮辱の中に生きている」一ポスト3・11の経験、
第二節「戦後の終わり」、第三節「永続敗戦」/
第二章「「戦後の終わりを告げるもの」一対外関係の諸問題、
第一節「領土問題の本質」、
第二節「北朝鮮問題にみる永続敗戦」
第三章「戦後の「国体」としての永続敗戦」/
第一節アメリカの影、
第二節「何が勝利してきたのか」一。
同書は「私らは侮辱のなかに生きている」との暗喩的で衝撃的なフレーズから始まる。2012年7月16日東京の代々木公園で行われた「さよなら原発10万人集会」における、大江健三郎氏が語った言葉だ。
大江氏のこの発言は、関西電力大飯原子力発電所の再稼働が高まる抗議を押し切る形で強行されたことに向けられた言葉である。
この福島第一原発の事故以降、次々と明るみに出てきた日本的無責任の体系一「想定外」「スピーディの隠蔽」「収束宣言」というまやかしの強行一こうした様々な事柄が示している全体をして、日本という国の社会がその「本当の」構造を露呈させたと著者はいう。こうした戦慄を催させる情勢のなかで著者は、ひとつの時代が確かに終わったという確信を持ったのである。
この事故で起きた地震・津波と事故は「パンドラの箱」を開けてしまった。それは「戦後」という箱で、直接的には「平和と繁栄」の時代が完全に終わったことを意味するとし、裏を返せぱ、「戦争と衰退」の時代の幕開けを意味せざるを得ないと著者は警告するのだ。
著者が「戦争が終わった」ことを確信するのは、震災・原発事故以来、この国の権力・社会が急速に一種の「本音モード」に入っている、と感ずるからである。
その端的な表れが、「原子力基本法」の改正で、<(中略)その第二、前項の安全の確保については、確立された高裁的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること目的として、おこなうものとする>ことに着目。
ここで問題視しているのが「我が国の安全保障に資すること」という文面である。この「安全保障」の文句の挿入が核武装を志向してきた自民党によって主導されたという事情、そして純粋な文面の水準においてだけでも、「これは戦後最大のタブーへの突破口を明確に開くものにほかならない」と、断言する。
つまり、時の自民党政権は集団的自衛権行使容認の閣議決定にみられるように、まさに「本音モード」を隠さなくなったのである。
一方、対米関係における永続敗戦は、すなわち無制限かつ恒久的な対米従属をよしとするパワーエリートたちの志向である。
岸信介は「真の独立」と言い、佐藤栄作は「沖縄が還ってこない限り戦後は終わらない」と言い、中曽根康弘は「戦後政治の総決算」を掲げ、安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を唱えてきた。
やや逆説的だが、これら永続敗戦レジームの代表者の真の意図が、これらのスローガンを決して実現させないことにあることは自明であり、今日、永続敗戦レジームの中核を担っている面々は、もはや「服従していることを自覚できないほど、敗戦を内面化している」と解説する。
このような論旨の中で著者は、「敗戦の否認」のジレンマ、つまり「敗戦国」という事実を動かす方法があるとすれば、もう一度戦争を行って勝利する以外には道はないと言わしめている。
同書は222ページ。各章、各節に「永続敗戦論」の論理的背景がくりかえし解説されている。論理が鋭いが故に難解な部分もあるが、冒頭の宣伝文がこの書を読み解く指標となるだろう。
同書は2013年3月刊。孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012年)とともに、必読の日本論として評価されている。解説;合田雄一
『草の根ニュース 86号 米軍占領70年特集号』(2015年4月28日)
「平和的で責任ある政府が樹立されたとき,連合国の占領軍は、直ちに日本国から撤退しなければならない」(ポツダム宣言)。
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」(憲法前文)
=書評(草の根ニュース 米軍占領70年特集号)=
◆ 『永続敗戦論一戦後日本の核心』(白井聡・著)大田出版刊/定価1700円
〈「永続敗戦」それは戦後日本のレジームの核心的本質であり、「敗戦の否認」を意味する。国内およびアジアに対しては敗北を否認することによって「神州不滅」の神話を維持しながら、自らを容認し支えてくれる米国に対しては盲従を続ける。
敗戦を否認するがゆえに敗北が際限なく続く一それが「永続敗戦」という概念の指し示す構造である。今日、この構造は明らかな破綻に瀕している。
1945年以来、われわれはずっと「敗戦」状態にある。「侮辱のなかに生きる」ことを拒絶せよ。〉
以上は、同書の宣伝文である。
同書は以下の項目からなる。
第一章「戦後」の終わり/
第一節「私らは侮辱の中に生きている」一ポスト3・11の経験、
第二節「戦後の終わり」、第三節「永続敗戦」/
第二章「「戦後の終わりを告げるもの」一対外関係の諸問題、
第一節「領土問題の本質」、
第二節「北朝鮮問題にみる永続敗戦」
第三章「戦後の「国体」としての永続敗戦」/
第一節アメリカの影、
第二節「何が勝利してきたのか」一。
同書は「私らは侮辱のなかに生きている」との暗喩的で衝撃的なフレーズから始まる。2012年7月16日東京の代々木公園で行われた「さよなら原発10万人集会」における、大江健三郎氏が語った言葉だ。
大江氏のこの発言は、関西電力大飯原子力発電所の再稼働が高まる抗議を押し切る形で強行されたことに向けられた言葉である。
この福島第一原発の事故以降、次々と明るみに出てきた日本的無責任の体系一「想定外」「スピーディの隠蔽」「収束宣言」というまやかしの強行一こうした様々な事柄が示している全体をして、日本という国の社会がその「本当の」構造を露呈させたと著者はいう。こうした戦慄を催させる情勢のなかで著者は、ひとつの時代が確かに終わったという確信を持ったのである。
この事故で起きた地震・津波と事故は「パンドラの箱」を開けてしまった。それは「戦後」という箱で、直接的には「平和と繁栄」の時代が完全に終わったことを意味するとし、裏を返せぱ、「戦争と衰退」の時代の幕開けを意味せざるを得ないと著者は警告するのだ。
著者が「戦争が終わった」ことを確信するのは、震災・原発事故以来、この国の権力・社会が急速に一種の「本音モード」に入っている、と感ずるからである。
その端的な表れが、「原子力基本法」の改正で、<(中略)その第二、前項の安全の確保については、確立された高裁的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること目的として、おこなうものとする>ことに着目。
ここで問題視しているのが「我が国の安全保障に資すること」という文面である。この「安全保障」の文句の挿入が核武装を志向してきた自民党によって主導されたという事情、そして純粋な文面の水準においてだけでも、「これは戦後最大のタブーへの突破口を明確に開くものにほかならない」と、断言する。
つまり、時の自民党政権は集団的自衛権行使容認の閣議決定にみられるように、まさに「本音モード」を隠さなくなったのである。
一方、対米関係における永続敗戦は、すなわち無制限かつ恒久的な対米従属をよしとするパワーエリートたちの志向である。
岸信介は「真の独立」と言い、佐藤栄作は「沖縄が還ってこない限り戦後は終わらない」と言い、中曽根康弘は「戦後政治の総決算」を掲げ、安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を唱えてきた。
やや逆説的だが、これら永続敗戦レジームの代表者の真の意図が、これらのスローガンを決して実現させないことにあることは自明であり、今日、永続敗戦レジームの中核を担っている面々は、もはや「服従していることを自覚できないほど、敗戦を内面化している」と解説する。
このような論旨の中で著者は、「敗戦の否認」のジレンマ、つまり「敗戦国」という事実を動かす方法があるとすれば、もう一度戦争を行って勝利する以外には道はないと言わしめている。
同書は222ページ。各章、各節に「永続敗戦論」の論理的背景がくりかえし解説されている。論理が鋭いが故に難解な部分もあるが、冒頭の宣伝文がこの書を読み解く指標となるだろう。
同書は2013年3月刊。孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012年)とともに、必読の日本論として評価されている。解説;合田雄一
『草の根ニュース 86号 米軍占領70年特集号』(2015年4月28日)
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