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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

全国一斉学力テスト=教育の商品化(1)

2007年06月05日 | 平和憲法
 ◎ 全国学力テストは教育のさらなる商品化とグローバル企業による支配への道(1)

 「戦後レジームの清算・教育再生」をめざすという安倍政権の下、何十年も行われることのなかった全国一斉学力テストがあっけなく復活してしまった。全国的な反対運動を押し切って実施した60年代学力テストが、違憲という判決を受け、それ以来実施されずにいたものが、グローバリゼーションの時代といわれる今日、それが行われたことは今までと全く異なる質を持った深刻な問題が日本の教育状況の中に生じていくということを意味せざるを得ない。以下、3つの観点から、この事を論じていきたい。

①イギリスの「全国」学力テスト状況
 第一に押さえておくべきことは、「全国テスト」では全くないということである。
 UKのうちスコットランドは先ずリーグテーブルを廃止し、現在はテストそのものを止めている。
 イングランドと歩調を合わせてきたウエールズも14歳以下の外部テストを廃止したし、セカンダリー・スクールでの結果の公表も止めた。
 主流派のイングランドでも、2000年代初頭から、「リーグテーブル廃止」の論調が高まっていたが、最近はテスト結果が業績評価につながるため、校長たちが生徒にカンニングを誘導するという事態にまで至り、全国校長会から「廃止」の提言がされている(2006年)。

 更に最近では、「与党系のシンクタンクや学校監査機関“教育水準局”トップが代表を兼ねる委員会が実施方法の見直しを提言」(4月21日 朝日新聞)と伝えられたように、教育行政当局からさえも見直しの声が上がっているのである。

②ベネッセの売り込み
 今回の全国学力テストを請け負ったベネッセは、模擬試験も作成し各地の学校にセールス活動を展開したが、試験結果にもとづくランク付けという圧力下にある校長たちの殆どは、これを受け入れざるを得ないだろう。このように私企業がいよいよ公教育の中枢部分への進出する道筋をつけたという点で、今回の全国学力テストは重大な意味合いを持っている。
 けれども、これは更に深刻な局面への第一歩でしかない。効率と競争を基本原理とする「改革」が世界の主流となり、グローバル教育企業の成長を促し、これをWTOのGATS協定が支える、という現状を考え合わせてみよう。
 これは、モノではなくサービスの自由なアクセスを非差別的約束表で保証するものである。そこには運輸、金融、健康、建設等あらゆる部門が網羅されており、教育も例外ではない。
 たとえば外資が日本国内の不動産を入手するのと同様の自由が教育分野にも求められる事になる。公教育への補助金すら「貿易障壁」として摘発されるかもしれない。
 だから、大半の国々は先ず高等教育のみを開放するという慎重策を取っている。「自由貿易の旗手」アメリカでさえも、そうしているのは、GATSが教育の公共性や自立性を根底から揺るがしかねないことを、どの国も強く認識している事を示している。

 こうした中で日本は、初等・中等・高等教育から成人教育まで全てを気前よく約束表に載せてしまったのである。
 外圧の中で、日本の教育が内容の豊かさをいよいよ喪失し、協調的な社会作りを促進・維持するために果たし得る役割も縮小を強いられて、単にビジネスの対象物つまり商品化をいっそう強いられることになるのは明らかではないか。             (N.O)以下次号に続く

『YouSee 210号』から

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