《暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える》から
▼ 「フライデー」が放射能汚染状況を独自調査
~海・農地の汚染をもみ消し、汚染水問題への矮小化が横行~
フクシマ原発事故については、特に東京五輪開催決定以降、その問題が「汚染水」にのみ”矮小化”され、周辺地域の土壌の汚染状況、除染により発生した汚染物質の保管方法や福1の1~4号機の収束に向けた作業の進捗状況等については、政府・東電からの情報発信もなければ、大手マスコミ各社もこれを全くと言っていい程に報じない有り様である。
現状でもこの有り様ゆえ、「秘密保全法」が成立した暁には「テロ」の危険性名目にて一切の情報が遮断され、フクシマ原発に関する情報については何も知らされないどころか、これを探る動きさえも国家権力によって合法的に排除されるであろう。
さて、フクシマ原発による周辺地域の汚染状況について、雑誌「フライデー」が独自調査を行ない、同調査結果を報じているので、以下に転載した記事をご覧いただきたい。
同記事にあるように、福島原発沖1.5kmの地点にて採取された海底の泥は「1キロ当たり585ベクレル」という値であり、国の基準値(セシウム134)である「1キロ当たり60ベクレル」の10倍近く汚染しているのがその実態である。
東電が福島原発近海で「海底の泥」ではなく「海水」を測定し、「放射性物質は不検出」と公表し、大手マスコミ各社もこれを何の疑問も呈さずにそのまま報道しているが、東電も大手マスコミも”確信犯”的に海洋汚染の事実を隠蔽していることは明らかであろう。
即ち、いつもの政府・東電・マスコミによる”隠蔽の構図”である。
東京海洋大学の神田穣太教授が指摘しているように、「海水」は希釈されてしまうため、特殊な方法で測定しないと放射性物質はほとんど検出されない一方で、海底の泥への堆積物は着実に汚染しているのがその実態なのである。
また、フライデーによる独自調査では、福島原発沖から南に50kmほど離れたいわき市の久ノ浜における海底の泥の測定の結果、原発沖1.5kmの地点よりはるかに高い「1キロ当たり894ベクレル」という数値が確認されたということであるが、いわき市と言えば、以下の毎日新聞記事にあるとおり、2年7か月ぶりに試験操業が再開されたところである。
漁師たちは「漁業の町の再生に一歩踏み出せる」と気勢を上げ、「まずは地元の人に味わってもらい風評被害を払拭して全国の人にも食べてほしい」と話してるということであるが、ハッキリ言ってトンでもない話である。
いわき市沖の海底にて深刻な放射能汚染が進行しているにも拘らず、「セシウムがキロ当たり100ベクレルまでならOK」という、いつもの安直すぎる測定方法にて、ここ数日中にも日本全国に深刻に汚染された福島産の海産物が出回ることになるであろう。
今回はいわき市での話であるが、その他の漁港でもまったく同様の構図にて汚染魚が悠々と検査をパスし、「安全」と称して全国の消費者の食卓に並んでいるのである。
無論、これは地元の漁協が悪いという話ではなく、元はと言えば「安全神話」を喧伝している政府・福島県(佐藤雄平)・大手マスコミらの”大嘘”がその直接的原因であり、本来であれば地元漁協に対して手厚く営業補償すべきものを、この”悪徳連中”どもが「安全」と称して、地元に操業再開するしか道がないように仕向けているのがその諸悪の根源である。
海ばかりではない。
フクシマ原発周辺の農作地についてもその構図はまったく同様である。
フライデーによる調査の結果、福島県北部の農村の稲刈り間近の田んぼにて、田の土を測定すると「2359ベクレル」(キロ当たり)という汚染レベルであり、同田んぼの空間線量についても「1.2マイクロシーベルト」と除染基準値である「0・23マイクロシーベルト」を大きく超える値が検出されたのである。
この数値は、この田のすぐ隣に除染作業の収集物を1000t分詰め込んだフレコンバッグが放置(周辺の空間線量1.7マイクロシーベルト)されていることも影響しているであろうが、このようなとても安全とは言えない汚染土壌にて平然とコメが生産され、何食わぬ顔で市場に出荷されていくことに改めて”危機感”を感じる次第である。
否、”危機感”を通り越して、改めて「日本の食の安全は完全に崩壊している」との念を強くした次第である。
同記事末尾にて、東電は「汚染水問題を最大の経営課題として全社一丸となって対策に取り組む」「海底に関してもほぼ問題ない汚染レベル」「福島の漁民・農家の方々に迷惑をかけ、心からお詫び」とのコメントをしているが、そもそも論として”認識違い”も甚だしいと断じるべき話であろう。
東電の最大の経営課題は「4号機使用済み核燃料や各号機の核燃料物質の完全な封じ込め」であり、「汚染水問題」などはその作業のための前捌きに過ぎない話である。
また、海底の放射能汚染が深刻であるにも拘らず、海水のみを適当に調査して「問題なし」とする”隠蔽””矮小化”体質が改善されない限り、東電には事故の収束などとてもじゃないが不可能であろう。
さらに東電は漁業・農業関係者にお詫びの言葉を発しているが、同関係者に対しロクに損害賠償もしないばかりか、「風評被害」と称して「食べて応援キャンペーン」を展開し、全国民を一様に内部被曝させるという極悪犯罪行為を助長しているとの認識が全く欠落していると断じるより他ない話である。
これらの状況を鑑みると、情報隠蔽を繰り返し、「1億皆総被曝」に邁進する日本には、果たして「明るい未来」など存在するのであろうか?
チェルノブイリ原発では事故発生から3年目以降に周辺住民の健康被害が多々発生する事態となったが、311から既に2年半以上が経過し、国民の健康被害が顕在化するのも時間の問題であろう。
実際、”ホットスポット”である松戸・柏・つくば・取手など千葉県と茨城県の15市町に住む0歳~18歳の子どもを対象に実施した尿検査にて、85人中、実に58人(約7割相当)の尿から1ベクレル以下のセシウムが検出されたという検査結果が出ていることからも、国民の内部被曝は極めて深刻であることがわかるであろう。
多くの国民がまだ実感していないようであるが、そう遠くない将来、福島県周辺ばかりでなく、日本全土が阿鼻叫喚の巷と化すことであろう。
「ホンマ大概にせえよ」という話である。
※参考「【必読記事】 セシウム検査で判明した子どもの体内被曝の深刻度 ~これはもうアカンやろ~」
http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/5537300016525ad2a68f3f689b6ff82a
(転載開始)
▼ コントロールできてない福島「原発沖海水汚染」を独自測定
2013年10月19日(土) フライデー(「経済の死角」) ※取材:桐島瞬(ジャーナリスト)
福島県いわき市内の港を出港して約1時間。波間から巨大な建物群が見えてきた。東京電力、福島第一原発である。
本誌記者が乗った地元漁船は10月初め、福島原発沖1.5kmの地点まで近づいた。この日は休日のため敷地内には作業員の姿はほとんど見られない。2号機タービン建屋の海側のシャッターはめくれ、クレーンなどの重機は潮風にさらされたまま。錆の進行が激しいのか、排気塔や建屋の壁は茶色く変色した部分が目立つ。
採泥器を海底に沈め、泥をとる。
後日出た測定結果では、585ベクレル(1kgあたり。単位は以下同)を検出した。国の放射性物質放出基準値(セシウム134は60ベクレル)の、10倍近い数字である。東電が10月4日に発表した海水の測定結果では福島原発近海で放射性物質は不検出としているが、汚染物は海の底に溜まる。本誌は福島原発沖など3ヵ所を測定しそれぞれ海水からは放射性物質を検出しなかったが、海底の泥からは基準値以上を計測した(詳細は後述)。
安倍晋三首相も「(汚染水は)湾内0.3km2の範囲内で完全にブロックしている」と発言しているが、実際は「コントロールされている」どころではないのだ。漁船の船長は「東電や国は『安全だ』と言うばかりだ」とつぶやいた―。
流出の止まらない汚染水。8月19日に貯蔵タンクから約300tが漏れたのが発覚、10月9日には作業員が誤ってホースの継ぎ手を外し配管から漏れ出た。切り札として期待された、62種類の放射性物質を除去でき、一日に500tを浄化可能という多核種除去装置「ALPS」もトラブル続き。3月に試運転を開始したが、設計の不具合や器内の腐食などで10月5日には3つある系統はすべて停止した。
「開発した東芝や東電は相次ぐ汚染水の対応に追われ、ALPSを管理できていません。通常は2ヵ月の教育が必要なのですが、人が足りず操作しているのは2日ほど実習を受けただけの素人ばかり。運転前に使ったゴム製のシートをタンク内に置き忘れ排水口を塞いでしまったり、ボタンを押し間違えて緊急停止させるなど、信じられないようなミスが続出しているんです」(原発作業員)
福島原発沖での調査を終え、今度は50kmほど南に離れたいわき市の久ノ浜に戻り海底の泥を採取した。
測定結果は、原発沖1.5kmの地点よりはるかに高い894ベクレル。
約70km離れた茨城県北茨城市の大津港では、73ベクレルを検出した。放射線量には場所によってかなりのバラつきがあるようだ。
東京海洋大学の神田穣太教授が解説する。
「事故直後の2ヵ月間で、海へ流れ出たセシウムは3500兆ベクレルになると推定されます。その後2年半の流出量は20兆ベクレルです。現在でも毎日30億から100億ベクレルの汚染水が漏れていると考えられますが、福島原発の港湾を出ると希釈されてしまう。海の水は特殊な方法で測定しないと、放射性物質はほとんど検出できません。海底に堆積したものが、海を汚染しているのです」
○稲刈り前の田の隣に汚染ゴミ
汚染が進んでいるのは、海だけではない。
福島県北部の農村。稲刈り間近の田んぼには、異様な光景が広がっていた。田のすぐ隣に、除染作業で収集した汚染された牛糞や落ち葉を詰め込んだ黒いフレコンバッグが、1000t分も放置されているのである。
田の土を測定すると、放射能は2359ベクレルにのぼった。空間の放射線量も汚染ゴミ周辺で毎時1.7マイクロシーベルト、田では1.2マイクロシーベルトを計測。除染基準値である0・23マイクロシーベルトを、大きく超える。
田の所有者が諦め気味に語る。
「昨年の夏から、田んぼの隣が仮置き場になっています。(自治体から)放射線量は高くなく、袋の下にはゴム製のシートを敷いて内部の水が漏れないようにしていると説明がありました。その言葉を信じるしかない……。米を作っても問題ないと言われているので震災後も農家を続けていますが、袋を他に持っていってくれとはとても言えません」
汚染ゴミの最終処分場は、いまだに決まっていない。1ヘクタールの土地を除染すると、約400個のフレコンバッグが必要となる。福島県の田や畑は農家によって10~20ヘクタールの広さがあるので、一軒でフレコンバッグ約4000個分の仮置き場が必要となるのだ。
この村で農業を営む、別の住民が話す。
「最終処分場どころか、汚染ゴミの量が多すぎて仮置き場の造成すら間に合っていません。民家の前や、道路の隣に放置されているものもある。みんな迷惑しているんです。そんな状況では、近くにゴミが置いてあっても自分だけ『他に持って行け』とは言えないでしょう」
汚染ゴミと隣り合わせで刈り取られた稲は、福島県の農協の審査を受け基準値(100ベクレル)以下なら全国へ出荷される。ゴミを放置せざるをえない自治体担当者も困惑気味だ。
「住民の合意を得るようにしています。ただ汚染物を近くに置きたくないのが本音。1回の話し合いでは決まりません」
こうした問題に対し、東電は以下のようなコメントを寄せた。
「汚染水問題は最大の経営課題として、全社一丸となって対策に取り組んでいきます。海底に関してもほぼ問題ないレベルです。長期の廃炉作業を安全確実に行うため、計画的なメンテナンスや設備のリプレイスを実施していく考えです。福島の漁民や農家の方々にはご迷惑をかけ、心からお詫びいたします」(広報部)
本誌が目にした汚染の現状と比べると、東電の謝罪はどこか空疎に響く。
「フライデー」2013年10月25日号より
『暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~』(2013年10月20日)
http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/f1181f0d2bd66e04c437367906dc9ed4
▼ 「フライデー」が放射能汚染状況を独自調査
~海・農地の汚染をもみ消し、汚染水問題への矮小化が横行~
フクシマ原発事故については、特に東京五輪開催決定以降、その問題が「汚染水」にのみ”矮小化”され、周辺地域の土壌の汚染状況、除染により発生した汚染物質の保管方法や福1の1~4号機の収束に向けた作業の進捗状況等については、政府・東電からの情報発信もなければ、大手マスコミ各社もこれを全くと言っていい程に報じない有り様である。
現状でもこの有り様ゆえ、「秘密保全法」が成立した暁には「テロ」の危険性名目にて一切の情報が遮断され、フクシマ原発に関する情報については何も知らされないどころか、これを探る動きさえも国家権力によって合法的に排除されるであろう。
さて、フクシマ原発による周辺地域の汚染状況について、雑誌「フライデー」が独自調査を行ない、同調査結果を報じているので、以下に転載した記事をご覧いただきたい。
同記事にあるように、福島原発沖1.5kmの地点にて採取された海底の泥は「1キロ当たり585ベクレル」という値であり、国の基準値(セシウム134)である「1キロ当たり60ベクレル」の10倍近く汚染しているのがその実態である。
東電が福島原発近海で「海底の泥」ではなく「海水」を測定し、「放射性物質は不検出」と公表し、大手マスコミ各社もこれを何の疑問も呈さずにそのまま報道しているが、東電も大手マスコミも”確信犯”的に海洋汚染の事実を隠蔽していることは明らかであろう。
即ち、いつもの政府・東電・マスコミによる”隠蔽の構図”である。
東京海洋大学の神田穣太教授が指摘しているように、「海水」は希釈されてしまうため、特殊な方法で測定しないと放射性物質はほとんど検出されない一方で、海底の泥への堆積物は着実に汚染しているのがその実態なのである。
また、フライデーによる独自調査では、福島原発沖から南に50kmほど離れたいわき市の久ノ浜における海底の泥の測定の結果、原発沖1.5kmの地点よりはるかに高い「1キロ当たり894ベクレル」という数値が確認されたということであるが、いわき市と言えば、以下の毎日新聞記事にあるとおり、2年7か月ぶりに試験操業が再開されたところである。
漁師たちは「漁業の町の再生に一歩踏み出せる」と気勢を上げ、「まずは地元の人に味わってもらい風評被害を払拭して全国の人にも食べてほしい」と話してるということであるが、ハッキリ言ってトンでもない話である。
いわき市沖の海底にて深刻な放射能汚染が進行しているにも拘らず、「セシウムがキロ当たり100ベクレルまでならOK」という、いつもの安直すぎる測定方法にて、ここ数日中にも日本全国に深刻に汚染された福島産の海産物が出回ることになるであろう。
今回はいわき市での話であるが、その他の漁港でもまったく同様の構図にて汚染魚が悠々と検査をパスし、「安全」と称して全国の消費者の食卓に並んでいるのである。
無論、これは地元の漁協が悪いという話ではなく、元はと言えば「安全神話」を喧伝している政府・福島県(佐藤雄平)・大手マスコミらの”大嘘”がその直接的原因であり、本来であれば地元漁協に対して手厚く営業補償すべきものを、この”悪徳連中”どもが「安全」と称して、地元に操業再開するしか道がないように仕向けているのがその諸悪の根源である。
海ばかりではない。
フクシマ原発周辺の農作地についてもその構図はまったく同様である。
フライデーによる調査の結果、福島県北部の農村の稲刈り間近の田んぼにて、田の土を測定すると「2359ベクレル」(キロ当たり)という汚染レベルであり、同田んぼの空間線量についても「1.2マイクロシーベルト」と除染基準値である「0・23マイクロシーベルト」を大きく超える値が検出されたのである。
この数値は、この田のすぐ隣に除染作業の収集物を1000t分詰め込んだフレコンバッグが放置(周辺の空間線量1.7マイクロシーベルト)されていることも影響しているであろうが、このようなとても安全とは言えない汚染土壌にて平然とコメが生産され、何食わぬ顔で市場に出荷されていくことに改めて”危機感”を感じる次第である。
否、”危機感”を通り越して、改めて「日本の食の安全は完全に崩壊している」との念を強くした次第である。
同記事末尾にて、東電は「汚染水問題を最大の経営課題として全社一丸となって対策に取り組む」「海底に関してもほぼ問題ない汚染レベル」「福島の漁民・農家の方々に迷惑をかけ、心からお詫び」とのコメントをしているが、そもそも論として”認識違い”も甚だしいと断じるべき話であろう。
東電の最大の経営課題は「4号機使用済み核燃料や各号機の核燃料物質の完全な封じ込め」であり、「汚染水問題」などはその作業のための前捌きに過ぎない話である。
また、海底の放射能汚染が深刻であるにも拘らず、海水のみを適当に調査して「問題なし」とする”隠蔽””矮小化”体質が改善されない限り、東電には事故の収束などとてもじゃないが不可能であろう。
さらに東電は漁業・農業関係者にお詫びの言葉を発しているが、同関係者に対しロクに損害賠償もしないばかりか、「風評被害」と称して「食べて応援キャンペーン」を展開し、全国民を一様に内部被曝させるという極悪犯罪行為を助長しているとの認識が全く欠落していると断じるより他ない話である。
これらの状況を鑑みると、情報隠蔽を繰り返し、「1億皆総被曝」に邁進する日本には、果たして「明るい未来」など存在するのであろうか?
チェルノブイリ原発では事故発生から3年目以降に周辺住民の健康被害が多々発生する事態となったが、311から既に2年半以上が経過し、国民の健康被害が顕在化するのも時間の問題であろう。
実際、”ホットスポット”である松戸・柏・つくば・取手など千葉県と茨城県の15市町に住む0歳~18歳の子どもを対象に実施した尿検査にて、85人中、実に58人(約7割相当)の尿から1ベクレル以下のセシウムが検出されたという検査結果が出ていることからも、国民の内部被曝は極めて深刻であることがわかるであろう。
多くの国民がまだ実感していないようであるが、そう遠くない将来、福島県周辺ばかりでなく、日本全土が阿鼻叫喚の巷と化すことであろう。
「ホンマ大概にせえよ」という話である。
※参考「【必読記事】 セシウム検査で判明した子どもの体内被曝の深刻度 ~これはもうアカンやろ~」
http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/5537300016525ad2a68f3f689b6ff82a
(転載開始)
▼ コントロールできてない福島「原発沖海水汚染」を独自測定
2013年10月19日(土) フライデー(「経済の死角」) ※取材:桐島瞬(ジャーナリスト)
福島県いわき市内の港を出港して約1時間。波間から巨大な建物群が見えてきた。東京電力、福島第一原発である。
本誌記者が乗った地元漁船は10月初め、福島原発沖1.5kmの地点まで近づいた。この日は休日のため敷地内には作業員の姿はほとんど見られない。2号機タービン建屋の海側のシャッターはめくれ、クレーンなどの重機は潮風にさらされたまま。錆の進行が激しいのか、排気塔や建屋の壁は茶色く変色した部分が目立つ。
採泥器を海底に沈め、泥をとる。
後日出た測定結果では、585ベクレル(1kgあたり。単位は以下同)を検出した。国の放射性物質放出基準値(セシウム134は60ベクレル)の、10倍近い数字である。東電が10月4日に発表した海水の測定結果では福島原発近海で放射性物質は不検出としているが、汚染物は海の底に溜まる。本誌は福島原発沖など3ヵ所を測定しそれぞれ海水からは放射性物質を検出しなかったが、海底の泥からは基準値以上を計測した(詳細は後述)。
安倍晋三首相も「(汚染水は)湾内0.3km2の範囲内で完全にブロックしている」と発言しているが、実際は「コントロールされている」どころではないのだ。漁船の船長は「東電や国は『安全だ』と言うばかりだ」とつぶやいた―。
流出の止まらない汚染水。8月19日に貯蔵タンクから約300tが漏れたのが発覚、10月9日には作業員が誤ってホースの継ぎ手を外し配管から漏れ出た。切り札として期待された、62種類の放射性物質を除去でき、一日に500tを浄化可能という多核種除去装置「ALPS」もトラブル続き。3月に試運転を開始したが、設計の不具合や器内の腐食などで10月5日には3つある系統はすべて停止した。
「開発した東芝や東電は相次ぐ汚染水の対応に追われ、ALPSを管理できていません。通常は2ヵ月の教育が必要なのですが、人が足りず操作しているのは2日ほど実習を受けただけの素人ばかり。運転前に使ったゴム製のシートをタンク内に置き忘れ排水口を塞いでしまったり、ボタンを押し間違えて緊急停止させるなど、信じられないようなミスが続出しているんです」(原発作業員)
福島原発沖での調査を終え、今度は50kmほど南に離れたいわき市の久ノ浜に戻り海底の泥を採取した。
測定結果は、原発沖1.5kmの地点よりはるかに高い894ベクレル。
約70km離れた茨城県北茨城市の大津港では、73ベクレルを検出した。放射線量には場所によってかなりのバラつきがあるようだ。
東京海洋大学の神田穣太教授が解説する。
「事故直後の2ヵ月間で、海へ流れ出たセシウムは3500兆ベクレルになると推定されます。その後2年半の流出量は20兆ベクレルです。現在でも毎日30億から100億ベクレルの汚染水が漏れていると考えられますが、福島原発の港湾を出ると希釈されてしまう。海の水は特殊な方法で測定しないと、放射性物質はほとんど検出できません。海底に堆積したものが、海を汚染しているのです」
○稲刈り前の田の隣に汚染ゴミ
汚染が進んでいるのは、海だけではない。
福島県北部の農村。稲刈り間近の田んぼには、異様な光景が広がっていた。田のすぐ隣に、除染作業で収集した汚染された牛糞や落ち葉を詰め込んだ黒いフレコンバッグが、1000t分も放置されているのである。
田の土を測定すると、放射能は2359ベクレルにのぼった。空間の放射線量も汚染ゴミ周辺で毎時1.7マイクロシーベルト、田では1.2マイクロシーベルトを計測。除染基準値である0・23マイクロシーベルトを、大きく超える。
田の所有者が諦め気味に語る。
「昨年の夏から、田んぼの隣が仮置き場になっています。(自治体から)放射線量は高くなく、袋の下にはゴム製のシートを敷いて内部の水が漏れないようにしていると説明がありました。その言葉を信じるしかない……。米を作っても問題ないと言われているので震災後も農家を続けていますが、袋を他に持っていってくれとはとても言えません」
汚染ゴミの最終処分場は、いまだに決まっていない。1ヘクタールの土地を除染すると、約400個のフレコンバッグが必要となる。福島県の田や畑は農家によって10~20ヘクタールの広さがあるので、一軒でフレコンバッグ約4000個分の仮置き場が必要となるのだ。
この村で農業を営む、別の住民が話す。
「最終処分場どころか、汚染ゴミの量が多すぎて仮置き場の造成すら間に合っていません。民家の前や、道路の隣に放置されているものもある。みんな迷惑しているんです。そんな状況では、近くにゴミが置いてあっても自分だけ『他に持って行け』とは言えないでしょう」
汚染ゴミと隣り合わせで刈り取られた稲は、福島県の農協の審査を受け基準値(100ベクレル)以下なら全国へ出荷される。ゴミを放置せざるをえない自治体担当者も困惑気味だ。
「住民の合意を得るようにしています。ただ汚染物を近くに置きたくないのが本音。1回の話し合いでは決まりません」
こうした問題に対し、東電は以下のようなコメントを寄せた。
「汚染水問題は最大の経営課題として、全社一丸となって対策に取り組んでいきます。海底に関してもほぼ問題ないレベルです。長期の廃炉作業を安全確実に行うため、計画的なメンテナンスや設備のリプレイスを実施していく考えです。福島の漁民や農家の方々にはご迷惑をかけ、心からお詫びいたします」(広報部)
本誌が目にした汚染の現状と比べると、東電の謝罪はどこか空疎に響く。
「フライデー」2013年10月25日号より
『暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~』(2013年10月20日)
http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/f1181f0d2bd66e04c437367906dc9ed4
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