◆ <公取批判>(1)査問すべきは馳文科大臣!
皆さま 高嶋伸欣です
1.俄かに慌ただしく新聞で報道されていますが、とうとう教科書会社の謝礼金問題で、公正取引委員会が独占禁止法違反の可能性があるとして、動き出しました。
そこまで大騒ぎすることなのか疑問で、これまでの様々な教科書問題を見てきた立場からは、背後に政治的なあるいは特定の政治家の売名行為的画策の気配など、不明朗な様子が透けてみえます。
とはいえ、弱い立場の教科書会社は、強権的な公取の調査や尋問への対応、それに義務制教科書発行の22社をいきなり最初から一からげにして「容疑」対象者として報道する、政府・公取寄りの『読売』『産経』などによる世論扇動との対応など、厳しい状況に追い込まれつつあります。
2. そこでこの際『がんばれ・マケルナ教科書業界!』という意味をこめながら、独禁法に違反しているのは文科省・馳大臣であるし、公取自身も法律歪曲の違法機関ではないか! という「反撃」をこの機会に展開していこうと思いたちました。
3 そのような「反撃」を展開することにしたのも、もとはと言えば、私たちが2001年1月以来、藤岡信勝などによる「つくる会」が自分たちの扶桑社版や育鵬社版の採択に向けて、独禁法違反の行為を繰り返していたのを公取が黙認し続けていたからなのです。
私たちは藤岡氏などの違法行為について公取委に指導等をするように、何度も証拠資料を添えて申し入れてきましたが、ほとんどが無視されたままでした。
4.我々が指摘したケースの大半は、安倍晋三氏たち自民党タカ派文教族が露骨に支援している「つくる会」系の教科書の売り込み、採択の働きかけにおいての不正行為を証明するものだったのです。
ところが今回、「つくる会」系教科書会社は、金銭の謝礼は支出していないらしいという見通しになった途端、公取と文科省・馳大臣は俄かに「正義」を振りかざし始めたのです。
5.そこで今回の動きを、改めて公取と馳大臣などに「正義面をしていられることなのですか?」と、「逆襲」するチャンスと位置づけたという訳です。
仮に万が一、公取が排除命令や警告を強引に出した場合、異議申し立てをできる材料にも活用が可能な話題も含まれているはずです。
6. 以下、順次具体的に文科大臣・文科省や公取の教科書採択問題での不作為や違法行為の責任について問い質していくことにします。
少し細かい事柄が出てくることになりますが、ご容赦下さい。
7.第1弾は、公取は馳文科大臣こそ最初に査問すべきだ、という話題です。
8.なお、最初に本題に入る前に、今回の騒ぎの発端となった三省堂の謝礼5万円相当という話題に触れておきます。確かに、教科書検討会議の謝礼が5万円という額には「多めすぎないか」とう疑問が浮かぶかもしれませんが、週末などの勤務日以外の1~2日を費やすのであれば、1万円以上の謝金は社会通念上、必ずしも不自然ではないと思われます。
9.検定審議会の数時間の会議の場合、出席した委員への謝金(日当)は幾らなのでしょうか。検定の際の現場教員や大学研究者を「調査員」として委嘱し、チェックをしてもらう場合の謝金は、10年以上前の時で、教科書1冊当たり1万円でした(真剣にチェックをしている調査員からは「安すぎる」との不満の声が上がっていましたが、教科書課からは「1万円の範囲でやってもらえればいいです」との返事があったのですが)。
10.ともあれ、文科省は、自身が教科書会社に対して実施した調査で、各社や関係の教育委員会から報告させた結果をまとめ、意見聴取の会議などが開催されても、採択が左右されることは無かったと結論づけていたはずです。
11.ところが、公取が調査に乗り出したら、馳文科大臣はその結論に対して「私は残念ながら不正はなかったと言われている報告については『本当かな』と、懐疑的な思いで見ています」と、12日の記者会見で明言したのです(文科省HPによる)。
12.文科大臣が、教科書会社を庇うのではなく、あら捜しをして落ち度を見つけ、痛めつける根拠が明らかになるのを、まるで期待しているかのような口振りです。
公立高校の国語教師の経験があるとのことですが、現職教員の時代にどのような生徒指導をしたのでしょうか。問題行動のあった生徒に「お前、本当のことを言っていないだろう」と迫るのと、「どうしてそのようなことをしてしまったのかなあ、聞かせてくれないかなあ」と声を掛けるとでは、大違いのはずです。
文科大臣としての言動を「懐疑的な思いで見」たくなります。
13.そのように思うのも、馳大臣自身が「つくる会」系育鵬社版教科書の採択を応援する不公正な行動をしている事実が判明しているからです。
育鵬社版の中学歴史・公民教科書の採択運動の中心になっているのが「日本教育再生機構」(理事長 八木秀次・麗澤大学教授)です。同機構は『教育再生』という月刊の会報(情報誌)を発行しています。
その2016年1月号(90号)に、馳大臣と八木氏との対談記事6ページ分が、掲載されています。馳氏の肩書は「文部科学大臣」とあって、対談の日時と場所は、「平成27年11月11日、文科大臣室にて」と明記されています。
この会報のことは、同機構のHPで誰でも見ることができます。
14.2015年夏の教科書採択で、育鵬社版は前回の4%から6%に採択率を伸ばしたものの、「10%にして見せる」と豪語していた目標には、遠く届きませんでした。安倍政権下で最大限に政治的影響力を及ぼしたはずだったのにです。
そこで、採択結果が出た後の『教育再生』では、八木理事長が「次回(採択)に向けて一層の研鑽を積んでいく所存です」(2015年9月号)と次の採択に向けた組織的活動に着手していることを表明しています。
さらに、上記の90号以後では、同機構の今後の「活動の三本柱」の一つとして「次回採択では、更なる飛躍を目指します」と繰り返しています。
15.このことからだけでも、馳大臣が育鵬社版という特定の教科書の採択への働きかけに加担していることは明らかです。そこから当然のこととして、教育行政の最高責任者である文科大臣が協力している教科書であるのであれば、他社のものよりもすぐれているのではないかと、採択関係者にイメージ付けすることになります。
16.まして、最近の教育委員会制度の改編で、政治家である市町村長や知事が教育委員の人事権を明確に持つことになりました。採択権をもつ教育委員が政治的状況を判断の材料にする可能性は十分に想定されます。その場合に、政党人でもある文科大臣が協力している教科書であるというイメージ付けは、強力な営業的効果、影響力を発揮するはずです。それも政治的な色合いを伴いながらです。
17.こうした金銭や物品等の供与以外の手段で、有利な取引条件を構築することも、現在の独占禁止法では「不公正な取引方法」16類型の一つに含めています。
18. 類型8・「ぎまん的顧客誘引」がそれです
「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」
*『教育再生』90号への馳大臣の対談掲載は、この下線部分に該当します。
19.さらに、この「日本教育再生機構」は育鵬社による教科書の編纂・発行・販売(採択)を共同で実行している組織で、独禁法でいう共同事業者とみなされ、独禁法の適用を受ける存在であるとする司法の判断が、すでに出されているのです。
20.それは、愛媛県・今治市での育鵬社社版教科書の採択は違法であるする愛媛教科書裁判の判決文に以下のように記されているものです(2015年12月15日、松山地方裁判所民事第2部 西村欣也裁判長)。
<平成25年(行ウ)第8号 教科書採択無効確認等請求事件・判決>
第3 塔裁判所の判断
2認定事実
(2)本件教科書の評価等
イ(イ)本件教科書は、「新しい歴史教科書をつくる会」から分裂した
「日本教育再生再生機構・教科書改善の会」が作成したものであるとこ
ろ、両会が作成する図書の関しては、皇国史観、侵略戦争の肯定、国家
主義の重視といった右派の主張が盛り込まれているとの批判もある(甲
30)。
*上記の下線部分です
21.この裁判所の判断を裏付けるかのように、前出の『教育再生』90号では「日本教育再生機構とは」という特設ページの「活動の三本柱」の説明の中で育鵬社版歴史・公民教科書を「作成し」と、明記してあります。91・92号でも同様です。
22. もはや、「日本教育再生機構」は育鵬社と共に、独占禁止法によって公正な販売・営業活動を義務付けられた事業者(教科書会社)の一部であることは明らかなのです。
23.そうであるならば、馳大臣が特定の教科書の発行・販売をしている事業者の営業活動の支援行動をすることで、「不公正な取引方法」に加担した責任は免れ得ないことになります。
24.にもかかわらず、公取はこの事態を野放しにしているのです。
馳大臣も、それをいいことに知らぬふりをしながら、教科書会社を猜疑心で見渡し、「正義」を振りかざして恥じていないのです。
上記90号の対談の話題の一つは「高徳の教科化」を通じて道徳教育重視を図るということです。さながら、安倍政権下の教育行政の特性を具現化したかのようなブラック・ユーモアに、私には思えます。
以上 文責は高嶋です 転載・拡散は自由です
皆さま 高嶋伸欣です
1.俄かに慌ただしく新聞で報道されていますが、とうとう教科書会社の謝礼金問題で、公正取引委員会が独占禁止法違反の可能性があるとして、動き出しました。
そこまで大騒ぎすることなのか疑問で、これまでの様々な教科書問題を見てきた立場からは、背後に政治的なあるいは特定の政治家の売名行為的画策の気配など、不明朗な様子が透けてみえます。
とはいえ、弱い立場の教科書会社は、強権的な公取の調査や尋問への対応、それに義務制教科書発行の22社をいきなり最初から一からげにして「容疑」対象者として報道する、政府・公取寄りの『読売』『産経』などによる世論扇動との対応など、厳しい状況に追い込まれつつあります。
2. そこでこの際『がんばれ・マケルナ教科書業界!』という意味をこめながら、独禁法に違反しているのは文科省・馳大臣であるし、公取自身も法律歪曲の違法機関ではないか! という「反撃」をこの機会に展開していこうと思いたちました。
3 そのような「反撃」を展開することにしたのも、もとはと言えば、私たちが2001年1月以来、藤岡信勝などによる「つくる会」が自分たちの扶桑社版や育鵬社版の採択に向けて、独禁法違反の行為を繰り返していたのを公取が黙認し続けていたからなのです。
私たちは藤岡氏などの違法行為について公取委に指導等をするように、何度も証拠資料を添えて申し入れてきましたが、ほとんどが無視されたままでした。
4.我々が指摘したケースの大半は、安倍晋三氏たち自民党タカ派文教族が露骨に支援している「つくる会」系の教科書の売り込み、採択の働きかけにおいての不正行為を証明するものだったのです。
ところが今回、「つくる会」系教科書会社は、金銭の謝礼は支出していないらしいという見通しになった途端、公取と文科省・馳大臣は俄かに「正義」を振りかざし始めたのです。
5.そこで今回の動きを、改めて公取と馳大臣などに「正義面をしていられることなのですか?」と、「逆襲」するチャンスと位置づけたという訳です。
仮に万が一、公取が排除命令や警告を強引に出した場合、異議申し立てをできる材料にも活用が可能な話題も含まれているはずです。
6. 以下、順次具体的に文科大臣・文科省や公取の教科書採択問題での不作為や違法行為の責任について問い質していくことにします。
少し細かい事柄が出てくることになりますが、ご容赦下さい。
7.第1弾は、公取は馳文科大臣こそ最初に査問すべきだ、という話題です。
8.なお、最初に本題に入る前に、今回の騒ぎの発端となった三省堂の謝礼5万円相当という話題に触れておきます。確かに、教科書検討会議の謝礼が5万円という額には「多めすぎないか」とう疑問が浮かぶかもしれませんが、週末などの勤務日以外の1~2日を費やすのであれば、1万円以上の謝金は社会通念上、必ずしも不自然ではないと思われます。
9.検定審議会の数時間の会議の場合、出席した委員への謝金(日当)は幾らなのでしょうか。検定の際の現場教員や大学研究者を「調査員」として委嘱し、チェックをしてもらう場合の謝金は、10年以上前の時で、教科書1冊当たり1万円でした(真剣にチェックをしている調査員からは「安すぎる」との不満の声が上がっていましたが、教科書課からは「1万円の範囲でやってもらえればいいです」との返事があったのですが)。
10.ともあれ、文科省は、自身が教科書会社に対して実施した調査で、各社や関係の教育委員会から報告させた結果をまとめ、意見聴取の会議などが開催されても、採択が左右されることは無かったと結論づけていたはずです。
11.ところが、公取が調査に乗り出したら、馳文科大臣はその結論に対して「私は残念ながら不正はなかったと言われている報告については『本当かな』と、懐疑的な思いで見ています」と、12日の記者会見で明言したのです(文科省HPによる)。
12.文科大臣が、教科書会社を庇うのではなく、あら捜しをして落ち度を見つけ、痛めつける根拠が明らかになるのを、まるで期待しているかのような口振りです。
公立高校の国語教師の経験があるとのことですが、現職教員の時代にどのような生徒指導をしたのでしょうか。問題行動のあった生徒に「お前、本当のことを言っていないだろう」と迫るのと、「どうしてそのようなことをしてしまったのかなあ、聞かせてくれないかなあ」と声を掛けるとでは、大違いのはずです。
文科大臣としての言動を「懐疑的な思いで見」たくなります。
13.そのように思うのも、馳大臣自身が「つくる会」系育鵬社版教科書の採択を応援する不公正な行動をしている事実が判明しているからです。
育鵬社版の中学歴史・公民教科書の採択運動の中心になっているのが「日本教育再生機構」(理事長 八木秀次・麗澤大学教授)です。同機構は『教育再生』という月刊の会報(情報誌)を発行しています。
その2016年1月号(90号)に、馳大臣と八木氏との対談記事6ページ分が、掲載されています。馳氏の肩書は「文部科学大臣」とあって、対談の日時と場所は、「平成27年11月11日、文科大臣室にて」と明記されています。
この会報のことは、同機構のHPで誰でも見ることができます。
14.2015年夏の教科書採択で、育鵬社版は前回の4%から6%に採択率を伸ばしたものの、「10%にして見せる」と豪語していた目標には、遠く届きませんでした。安倍政権下で最大限に政治的影響力を及ぼしたはずだったのにです。
そこで、採択結果が出た後の『教育再生』では、八木理事長が「次回(採択)に向けて一層の研鑽を積んでいく所存です」(2015年9月号)と次の採択に向けた組織的活動に着手していることを表明しています。
さらに、上記の90号以後では、同機構の今後の「活動の三本柱」の一つとして「次回採択では、更なる飛躍を目指します」と繰り返しています。
15.このことからだけでも、馳大臣が育鵬社版という特定の教科書の採択への働きかけに加担していることは明らかです。そこから当然のこととして、教育行政の最高責任者である文科大臣が協力している教科書であるのであれば、他社のものよりもすぐれているのではないかと、採択関係者にイメージ付けすることになります。
16.まして、最近の教育委員会制度の改編で、政治家である市町村長や知事が教育委員の人事権を明確に持つことになりました。採択権をもつ教育委員が政治的状況を判断の材料にする可能性は十分に想定されます。その場合に、政党人でもある文科大臣が協力している教科書であるというイメージ付けは、強力な営業的効果、影響力を発揮するはずです。それも政治的な色合いを伴いながらです。
17.こうした金銭や物品等の供与以外の手段で、有利な取引条件を構築することも、現在の独占禁止法では「不公正な取引方法」16類型の一つに含めています。
18. 類型8・「ぎまん的顧客誘引」がそれです
「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」
*『教育再生』90号への馳大臣の対談掲載は、この下線部分に該当します。
19.さらに、この「日本教育再生機構」は育鵬社による教科書の編纂・発行・販売(採択)を共同で実行している組織で、独禁法でいう共同事業者とみなされ、独禁法の適用を受ける存在であるとする司法の判断が、すでに出されているのです。
20.それは、愛媛県・今治市での育鵬社社版教科書の採択は違法であるする愛媛教科書裁判の判決文に以下のように記されているものです(2015年12月15日、松山地方裁判所民事第2部 西村欣也裁判長)。
<平成25年(行ウ)第8号 教科書採択無効確認等請求事件・判決>
第3 塔裁判所の判断
2認定事実
(2)本件教科書の評価等
イ(イ)本件教科書は、「新しい歴史教科書をつくる会」から分裂した
「日本教育再生再生機構・教科書改善の会」が作成したものであるとこ
ろ、両会が作成する図書の関しては、皇国史観、侵略戦争の肯定、国家
主義の重視といった右派の主張が盛り込まれているとの批判もある(甲
30)。
*上記の下線部分です
21.この裁判所の判断を裏付けるかのように、前出の『教育再生』90号では「日本教育再生機構とは」という特設ページの「活動の三本柱」の説明の中で育鵬社版歴史・公民教科書を「作成し」と、明記してあります。91・92号でも同様です。
22. もはや、「日本教育再生機構」は育鵬社と共に、独占禁止法によって公正な販売・営業活動を義務付けられた事業者(教科書会社)の一部であることは明らかなのです。
23.そうであるならば、馳大臣が特定の教科書の発行・販売をしている事業者の営業活動の支援行動をすることで、「不公正な取引方法」に加担した責任は免れ得ないことになります。
24.にもかかわらず、公取はこの事態を野放しにしているのです。
馳大臣も、それをいいことに知らぬふりをしながら、教科書会社を猜疑心で見渡し、「正義」を振りかざして恥じていないのです。
上記90号の対談の話題の一つは「高徳の教科化」を通じて道徳教育重視を図るということです。さながら、安倍政権下の教育行政の特性を具現化したかのようなブラック・ユーモアに、私には思えます。
以上 文責は高嶋です 転載・拡散は自由です
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