『美しい国』へ学校一変?
改正教育基本法が成立
「愛国心」などが新たに盛り込まれた改正教育基本法が、十五日夕の参院本会議で可決、成立した。文部科学省は今後、関連法の見直しや、教育振興基本計画策定に着手する。「教育の憲法」の約六十年ぶりの改正は、学校現場の在り方や、国と地方の関係を一変させる可能性がある。 (社会部・早川由紀美)
■教育内容
改正教育基本法に「愛国心」「公共の精神」などの徳目が教育の目標として盛り込まれたことに従い、学校教育法にある教育の目的、目標もこれに沿った形に書き換えられる。
現在、中央教育審議会で進められている学習指導要領の見直し作業も再開。小学校国語での古典暗唱や、音楽での文部省唱歌の指導の重視など、既に伝統重視をうたう法改正を部分的には“織り込み済み”の形で、審議は進められている。
高校の必修科目の世界史で履修漏れが続出、日本史では必修化を求める声もある。伊吹文明文科相は参院教育基本法特別委で「歴史的な事実を教えることで、結果的に国を愛する態度が養われてくる。教育基本法の理念に従い、学校教育法を改正し、学習指導要領を変えていく」と答弁。日本史の扱いも焦点だ。
■地方との関係
教育内容の基準を定める国と、これを実施する地方自治体。両者の関係も大きく変わる可能性がある。
改正法をめぐる国会答弁では、国会で決めた法律や、それに基づく政令、学習指導要領などの大臣告示を「国民全体の意思」とし、これと違う場合「不当な支配」にあたるとした。現場からは「地方が国の意向をくむ形で、法や告示に従っているか厳密に確認する監視体制が強まるのでは。授業を監視カメラで見る事態になっても不思議ではない」(高校教諭)といった不安の声も出る。
いじめや未履修問題での教育委員会の対応が問題となったことも、国の関与強化の流れを後押しする。国と教育委員会の関係などを定めた地方教育行政法は、文科相は都道府県教委に対し是正改善措置要求ができるとしていたが、一九九九年、地方分権推進一括法で削除された。都道府県教育長の承認権もなくなっている。
伊吹文科相は、是正改善措置要求を「(見直しを)考えていく一つのポイント」としたが、「国の関与の仕方については強めた方がいいという意見とそうじゃないという意見がある。国と地方の関係の見直しは慎重にやる」と話している。
■教育振興基本計画
改正法では、教育施策の基本方針を定める教育振興基本計画の策定を政府に義務づけている。二〇〇三年の中央教育審議会答申では計画期間を「五年が適当」とし、政策目標の例として「全国的な学力テストを実施し、その評価に基づいて学習指導要領の改善を図る」「いじめ、校内暴力などの『五年間で半減』を目指す」などを挙げている。〇八年度の概算要求に間に合うよう、来夏までには策定する見通しだ。
文科省が期待するのは、少子化の中でも安定した教育関連予算を確保することだ。同省関連の前例としては、〇一-〇五年度の第二期に二十一兆円余が投じられた科学技術基本計画がある。
ただ、改正法で振興計画を立てるのは「政府」だ。参院教育基本法特別委員会の参考人質疑で愛知県犬山市教育委員の中嶋哲彦・名古屋大学大学院教授は「防衛庁も含め、どんな省庁も計画に加わることができる」と指摘。市場原理導入を求める産業界の意向が振興計画に過度に反映されることを、懸念する専門家もいる。
『東京新聞』(2006/12/16朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061216/mng_____kakushin000.shtml
改正教育基本法が成立
「愛国心」などが新たに盛り込まれた改正教育基本法が、十五日夕の参院本会議で可決、成立した。文部科学省は今後、関連法の見直しや、教育振興基本計画策定に着手する。「教育の憲法」の約六十年ぶりの改正は、学校現場の在り方や、国と地方の関係を一変させる可能性がある。 (社会部・早川由紀美)
■教育内容
改正教育基本法に「愛国心」「公共の精神」などの徳目が教育の目標として盛り込まれたことに従い、学校教育法にある教育の目的、目標もこれに沿った形に書き換えられる。
現在、中央教育審議会で進められている学習指導要領の見直し作業も再開。小学校国語での古典暗唱や、音楽での文部省唱歌の指導の重視など、既に伝統重視をうたう法改正を部分的には“織り込み済み”の形で、審議は進められている。
高校の必修科目の世界史で履修漏れが続出、日本史では必修化を求める声もある。伊吹文明文科相は参院教育基本法特別委で「歴史的な事実を教えることで、結果的に国を愛する態度が養われてくる。教育基本法の理念に従い、学校教育法を改正し、学習指導要領を変えていく」と答弁。日本史の扱いも焦点だ。
■地方との関係
教育内容の基準を定める国と、これを実施する地方自治体。両者の関係も大きく変わる可能性がある。
改正法をめぐる国会答弁では、国会で決めた法律や、それに基づく政令、学習指導要領などの大臣告示を「国民全体の意思」とし、これと違う場合「不当な支配」にあたるとした。現場からは「地方が国の意向をくむ形で、法や告示に従っているか厳密に確認する監視体制が強まるのでは。授業を監視カメラで見る事態になっても不思議ではない」(高校教諭)といった不安の声も出る。
いじめや未履修問題での教育委員会の対応が問題となったことも、国の関与強化の流れを後押しする。国と教育委員会の関係などを定めた地方教育行政法は、文科相は都道府県教委に対し是正改善措置要求ができるとしていたが、一九九九年、地方分権推進一括法で削除された。都道府県教育長の承認権もなくなっている。
伊吹文科相は、是正改善措置要求を「(見直しを)考えていく一つのポイント」としたが、「国の関与の仕方については強めた方がいいという意見とそうじゃないという意見がある。国と地方の関係の見直しは慎重にやる」と話している。
■教育振興基本計画
改正法では、教育施策の基本方針を定める教育振興基本計画の策定を政府に義務づけている。二〇〇三年の中央教育審議会答申では計画期間を「五年が適当」とし、政策目標の例として「全国的な学力テストを実施し、その評価に基づいて学習指導要領の改善を図る」「いじめ、校内暴力などの『五年間で半減』を目指す」などを挙げている。〇八年度の概算要求に間に合うよう、来夏までには策定する見通しだ。
文科省が期待するのは、少子化の中でも安定した教育関連予算を確保することだ。同省関連の前例としては、〇一-〇五年度の第二期に二十一兆円余が投じられた科学技術基本計画がある。
ただ、改正法で振興計画を立てるのは「政府」だ。参院教育基本法特別委員会の参考人質疑で愛知県犬山市教育委員の中嶋哲彦・名古屋大学大学院教授は「防衛庁も含め、どんな省庁も計画に加わることができる」と指摘。市場原理導入を求める産業界の意向が振興計画に過度に反映されることを、懸念する専門家もいる。
『東京新聞』(2006/12/16朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061216/mng_____kakushin000.shtml
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