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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

子どもの貧困の原因は「子育て世代の非正規労働者増加」

2016年03月02日 | 格差社会
 ◆ 「子どもの貧困」倍増の背景は?
   大人の18%超が生活保護以下の世帯収入
(THE PAGE)


 山形大人文学部の戸室健作准教授は、全国の子育て世帯の貧困率が過去20年間で倍増し13.8%に達しているとの研究結果をまとめた。
 研究結果では、子育て世帯に限らない全世帯での貧困率も20年間で18.3%と倍増したことが判明。拡大しつつある「貧困」の背景と、取りうる対策について、戸室准教授に聞いた。
 ◆ 子どもの貧困率は全国的に増加し、地域間格差は縮小傾向
 戸室准教授の論文によると、全国の子育て世帯の貧困率を示す「子供の貧困率」は1992年に5.4%だったが、2012年には13.8%と、この20年で2倍以上に拡大していた。子育て世帯に限らない全国の貧困率も、1992年の9.2%から、2012年には18.3%と倍増していた。
 2012年の「子供の貧困率」を都道府県別で比較すると、沖縄が最も高く37.5%。しかし地域間の格差は年々縮まっており、貧困率上位10位の県と下位10位の県を比較すると、1992年の5.37倍から、2012年には2.35倍と縮小している。
 戸室准教授は「貧困が改善したのではなく、むしろ貧困が地方特有の問題ではなくなり、全国一般の問題に拡大してきているということ」と分析する。
 ◆ 全世帯の18%、子育て世帯の14%が「生活保護基準以下」
 政府は一般的に「貧困率」を算出するとき、国民の所得を高い方から低い方へと並べ、その「中央値の半分未満の所得層」を「貧困」と呼ぶ「相対的貧困率」を用いている。
 一方で今回戸室准教授は、「生活保護の収入以下で暮らしている世帯」「貧困層」と考え、貧困率を算出した。つまりこの調査結果は、「日本では全世帯の18.3%、子育て世帯の13.8%が生活保護基準以下の収入で暮らしている」と言い換えることができる。
 戸室准教授は「生活保護は国公認の貧困の救済基準。生活保護基準を使うことで、国との救済義務対象となる貧困層が明確に分かり、生活保護が国の救済措置として機能しているかどうかが可視化できる」と説明する。
 論文では、生活保護基準以下の収入で暮らす全世帯のうち15.5%しか生活保護を受給していないという結果を明らかにしている。
 生活保護基準以下の収入しかない世帯の多くが生活保護を受給していない理由については、生活保護は手元に7万円程度の現金や車などの資産を持っていると受給できない場合があることや、生活保護を申請させないことで財政負担を避けようとする自治体の「水際作戦」の影響が考えられるという。
 ◆ 子どもの貧困の原因は「子育て世代の非正規労働者増加」
 なぜ、日本はこんなに貧しくなったのか?戸室准教授はその根本的な原因として、日本全体の労働環境の悪化に目を向ける。
 「生きていく上での基本は働いて賃金を得ることですが、現在労働者の約4割が非正規労働者です。子育て世帯は就労世帯でもあるため、賃金の低下が子どもの貧困に直接関係します」。つまり、「子どもの貧困」の増加は、子育て世代での非正規労働者の割合が増えたことが原因だと指摘する。
 戸室准教授は、子供の貧困をこのまま放置すれば「地域経済が悪化し、負のスパイラルに陥る」と警鐘を鳴らす。
 「(子供の貧困の原因となる親世代の)低賃金の非正規労働者が多く存在すれば、待遇のいい正社員の賃金もワーキングプアにひきずられて低下します。企業は、同じ仕事をしてくれるのなら、賃金2分の1や3分の1で済む非正社員を選ぶからです」
 その結果、地域経済に何が起きるか。「今いる正社員に対してサービス残業を強いたり、賃金カット、非正社員に置き換えるなど労働条件が悪化します。すると地域がワーキングプアだらけになり、賃金低下で消費意欲も低下し、物が売れなくなり、ますます人件費がカットされ、さらに消費が低下し・・・といった悪循環でどんどん地域経済全体が沈下していく」。
 戸室准教授は、子どもの貧困の背景にある、社会全体の貧困率の上昇に目を向ける必要を強調する。
 ◆ 「国の抜本的な労働政策の変化が必要」
 近年「子どもの貧困」が注目され、貧困世帯の子どもに食事や学校用具などを提供する運動が各地で広がっている。戸室准教授は、そのような動きを評価しつつ、抜本的な解決には国の労働政策の変化が必要だと訴える。
 「地方独自で貧困世帯をなくすには限界があり、国が率先して削減努力をする必要があります。非正規労働活用を規制したり、最低賃金を上げたりする政策です」
 また、国だけでなく自治体側にもできることがあると指摘する。
 「自治体の民間委託先の会社で、低賃金労働によるワーキングプアが生まれることがあります。自治体は、委託先の会社で社員に適正な賃金が支払われているかどうかを入札時の評価項目に入れるなど、率先してワーキングプア削減の模範を見せる必要があります。生活保護については、現在自治体が一部負担しているのを全額国庫負担とすることで自治体の『水際作戦』をなくせるのではないでしょうか」
 戸室准教授は「根本を変えないと立て直せない」と、貧困対策の必要性を強調した。
 (安藤歩美・中野宏一/THE EAST TIMES)

『blogos』(2016年02月23日)
http://blogos.com/article/162336/
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