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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

アイヌと沖縄の人々の先住民性を政府・文科省も認める検定

2016年04月13日 | こども危機
 ◆ 検定結果(5)「国内植民地」記述が定着
   皆さま    高嶋伸欣です


 次の話題は、北海道と沖縄の近現代の歴史について、「本土(本州)」から差別され続けてきた実態を詳しく説明した1~2ページのコラムの結びの1節に「国内植民地」という小見出しが掲げられ、その最後の本文に、「これらの地域は、国内植民地ということができる」という記述が、今回も無傷で残ったということです。その教科書は、今回も『高校日本史A』(実教出版)です。
 1.この小見出しと本文記述を私が強く意識したのは、『高校日本史A』の2001年度検定合格本の2ページコラム「地域社会の形成と発展 北海道と沖縄」(78~79p)のまとめの1節に「国内植民地」という小見出しがあるのに魅かれたからでした。
 「アジア太平洋戦争」という記述について、検定ではなかなか認められてこなかった経過がある中で、「国内植民地」という用語がよくぞあっさりと登場できた、という思いでした。
 それに、北海道と沖縄を「国内植民地(内国植民地)」とする位置付けは、私自身が以前から主張していたことでもあったので、我が意を得たという気分でした。
 2.けれども、この記述がこのまま定着できるかは、気がかりでした。これ以後の検定で、こじつけの理由を用いて削除させられる可能性がある、と想像したためです。
 そこで、この部分があまり注目されていないのをいいことに、こちらから積極的に話題にするのはしばらく控えることにしました。
 3.その後の2005年度検定合格本『高校日本史A 新訂版』でも、この記述はそのまま維持されました(82~83P)。さらに現行版に当たる2011年度検定(全面改定)本でも、コラム全体が1ページ(56P)に縮小されましたがこの記述は、小見出しを含めて残されました。
 そして今回の2015年度検定でも、この部分に検定意見が付くことなく、「国内植民地」という表現・用語は残ったのです。
 4.ここまでくれば、もう広く話題にしても大丈夫ではないか、と考えました。そうすることで、他社の教科書やマスコミなどでも「国内植民地」という表現・用語を積極的に使用して良い状況をさらに定着させたい。
 そのような思いから、今回、このことを紹介することにした次第です。

 5.さらに、別の理由もあります。
 実は今、沖縄では、国連の人権規約委員会が日本政府に対して「アイヌ及び琉球・沖縄の人々を先住民として明確に認める」ように求めた勧告(2008年、以後10年、14年にも更新)をめぐって、翁長知事への攻撃にからめた「日本会議」系の「(同)勧告の撤回を実現させる」運動が展開されているのです。
 6.その動きが具体的に表面化したのは。昨年12月22日に豊見城市議会が「先住民族勧告撤回を求める意見書」を多数決で可決したことです。同市は市長が「日本会議」に所属していることを明言し、市議会議員にも多数の「日本会議」メンバーが居ることで知られています。
 さらにそうした行動の中心人物たちによって、3月20日に同市内で「国連先住民族勧告の撤回を実現させる沖縄県民の会」の設立決起大会が開催され200人が参加した、と報道されています(『琉球新報』3月21日)。
 7.上記の「意見書」には、
 「私たちは沖縄戦において祖国日本・郷土沖縄を命がけで日本人として守り抜いた先人の思いを決して忘れてはならない」
 「私たち沖縄県民は米軍統治下の時代でも常に日本人としての自覚を維持しており、祖国復帰を強く願い続け、1972年(昭和47年)5月15日祖国復帰を果たした。そしてその後も他府県の国民と全く同じく日本人としての平和と幸福を享受し続けている」
 とあります。
 「沖縄を命がけで」「守り抜いた」とは、歴史の偽造そのものです。
 「他府県の国民と全く同じく日本人としての平和と幸福を享受し続けている」とは、安倍政権でも言わない戯言です。「幸福の科学」の論理?
 8.豊見城市議会の与党会派は、県内の40市町村議会に同様の「意見書」の採択をするように働きかけています。
 9.さらに、20日の決起大会では、教育現場で沖縄方言「しまくとぅば」の普及の取り組みがされていることに対し「沖縄の子供たちは日本人としての自己認識を持てなくなるどころか、日本に侵略された少数民族としてのアイデンティティが形成されてしまう」「沖縄を日本文化圏から切り離す非常に危険で巧みな工作」だと指摘し、「全国の県議会、市町村議会に同様の意見書採択の協力を要請する」と決議しています(『世界日報』3月23日)。
 10.以上のことから、全国の「日本会議」系市町村長や地方議会議員のいるところでは、こうした「意見書」や陳情・請願等が提起される可能性があります。
 そうした時に、『高校日本史A』の北海道と沖縄は「国内植民地」とも言える、という記述の存在と定着ぶりを指摘し、「日本政府・文科省もこうした認識を認めている証拠であるのだから、勧告が不当とは言えない」という反論の展開が可能になります。
 11.政府による教科書検定は廃止すべきですが、強行されるのであればそれを逆手にとっての「活用」をすることがあっても良い、というのが私の論法です。
 運動では、こちらの論理を強く掲げるだけでなく、相手の土俵に踏み込んで彼らの足元や周辺の矛盾点などを衝くことで、分裂させたり沈黙させたりすることが可能な場合が少なくありません。
 12.なお多くの方はすでにご存知かと思いますが、国会では2008年に「アイヌ民族を先住民とすることを求める決議」が採択され、そのことが大半の中学校教科書にも記載されています。
 *この「決議」と『高校日本史A』の「国内植民地」記述とを結び付け、沖縄の「9・29県民大会決議を実現させる会」では、文科省に対して「検定基準」に「アイヌ・沖縄条項」を新たに設けるよう、要求をしています。4月5日の文科省交渉の場で、上記「国内植民地」記述の存在を指摘したところ、教科書課の担当者は全く気づいていなかった様子でした。
 沖縄からのこの件での働きかけについては、別途に機会をみて報告します。

   また長くなりました。 文責は高嶋です。  転載・拡散は自由です


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