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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

活断層上の泊原発は「砂上の楼閣」どんなにエネルギー事情が厳しくとも、危険でダメなものはダメ

2022年06月04日 | フクシマ原発震災
 ▼ 「やったー!」傍聴席から声が響く
   ~札幌地裁、泊原発1~3号機の運転差し止め命令
(レイバーネット日本)

*※写真=記者会見開始前、泊原発に関する自作の紙芝居を披露する斉藤武一・原告団長。
泊原発地元・岩内町在住の斉藤さんは、差し止め請求が認められた30km圏内の原告44人のうちの1人

 「それでは判決を言い渡します。主文:1.被告〔注:北海道電力〕は、別紙2一部認容当事者目録記載の原告ら(一部認容原告ら)との関係で、別紙3原子炉目録記載の原子炉1号機ないし3号機を運転してはならない
 26の傍聴席を求めて150人が並ぶ中、5倍の確率ながら傍聴券を引き当て、筆者は法廷内に入ることができた。5月31日、午後3時ちょうど。メディアによる代表撮影を終えた後、前置きもなく、いきなり言い渡しが始まった。
 札幌市中央区、北海道の行政・経済の中心部に位置する8階建ての裁判所合同庁舎の最上階にある札幌地裁805号法廷に、谷口哲也裁判長の朗々とした声が響き渡る。
 まっすぐ前を見据え、堂々たる態度。判決に自信を持っていることがありありとうかがえる。
 「やったー!」と傍聴席から女性の声が響く。しかし谷口裁判長は、制止するでもなく「判決要旨及び骨子のみ朗読します」とかまわず続ける。
 主文と「判決理由及び骨子」の朗読は15分で終了した。午後3時15分、閉廷。
 北電の本社は、裁判所と同じ札幌市中央区大通にある。大人の足なら歩いてもせいぜい10分だろう。
 その距離同様、北電は司法を「至近距離」だと思っていたはずだ。だが、その油断と驕りは「忖度なき司法」に打ち砕かれた。
 「判決理由及び骨子」が読み上げられている間、筆者はチラリと、右側の被告席を見る。北電側代理人は明らかにうなだれていた。
 この裁判を通じて、1201名の原告が求めていたのは、泊原発の
   (1)運転差し止め、
   (2)廃炉、
   (3)使用済み核燃料の泊原発構外への撤去
 ーーだった。
 このうち(1)の運転差し止めは原発から30km圏内の住民が請求したものに限って認められた
 (2)の廃炉は棄却
 (3)の使用済み核燃料の泊原発構外への撤去は棄却されたが、その理由が興味深い
 「適切な撤去先及び保管の条件が満たされない場合には、撤去により、かえって撤去先の周辺住民に人格権侵害のおそれが生じる可能性すら認められる」(「判決理由及び骨子」より)。
 要するに「使用済み核燃料は、日本中どこに持ち出そうと危険に変わりないから、持ち出しは認めない」というものだ。
 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、国が推進する地層処分を中止して、地上で暫定保管を行うよう求めた2015年の日本学術会議の提言の正しさを、司法が認める形になった。
 運転差し止めについて、30km圏外の人々からの申し立ては棄却されたが、差し止めは認められればその効果は全体に及ぶ。原告の中が勝訴した人、敗訴した人に別れる賠償訴訟と異なり、差し止め訴訟は1人でも請求が認められれば勝訴と評価して差し支えない。
 「泊原発の危険性に対する私たちの主張を、裁判所に認めていただけたと考えている。10年経っても原子力規制委員会から要求された審査資料さえ揃えられない北電の当事者能力の低さに対し、裁判所がついにしびれを切らしたと思う」。
 原告の1人である小野有五・北海道大学名誉教授(地質学)は、レイバーネット報道部の取材に対しこのようにコメントした。
 小野名誉教授は、泊原発直下を走るF-1断層が活断層であるとする資料を規制委に提出し、審査を遅らせる上で多大な貢献をした地質学者である。
 筆者は、小野名誉教授の案内で泊原発付近の地層見学会に参加したことがあるが、まるで海水浴場を思わせるような柔らかい砂が断層を形成し、小野名誉教授が指で断層部分の砂に触れるとぽろぽろとこぼれ落ちるのがわかった。
 泊原発は「砂上の楼閣」に過ぎない--当たり前の事実が、今日、司法によって認められた。
 脱炭素、そしてウクライナ戦争によるエネルギー高騰のダブルパンチで、世界的にも脱原発は風前の灯になりかけている。「どんなにエネルギー事情が厳しくとも、危険でダメなものはダメ」と忖度なくノーを突きつけた今日の判決は、こんな世界情勢だからこそ、一層輝きを増している。
 北電は「判決は到底承服できない。直ちに控訴の手続を取る」とのコメントを発表した。
 判決後の記者会見では「他の電力会社は勝訴、敗訴にかかわらず会見を開いている。会見も開かず短いコメントだけの北電の姿勢をどう受け止めているか」(週刊金曜日)との質問が出た。
 「北電のだらしなさ、自信のなさの反映」だと原告・弁護団は明快だった。
 終始明るい雰囲気の記者会見だった。

 ※ 判決文、「判決理由及び骨子」は、脱原発弁護団全国連絡会ホームページから見ることができる。
 (文責:黒鉄好)

 ●脱原発弁護団全国連絡会 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan
 ●「泊原発廃炉訴訟 判決全文」 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/wp-content/uploads/2022/05/20220531%E6%B3%8A%E5%88%A4%E6%B1%BA%E6%9C%AC%E6%96%87.pdf
 ●「判決理由及び骨子」 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/wp-content/uploads/2022/05/220531%E6%B3%8A%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf
『レイバーネット日本』(2022-06-01)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0531tomari
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