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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

前川喜平(前・文科省事務次官)インタビュー(2)

2018年09月05日 | こども危機
  =前川喜平さん、教科書・教育問題を語る(2)(子どもと教科書全国ネット21)=
 ◆ 道徳について


 Q:道徳の教科化についてはどのようにお考えですか?

 前川:日本は、もともと全体主義的傾向があるんだけど、道徳の教科化を通じて、どんどん強化されていくと思うんです。道徳の学習指導要領は教科化する前から問題があります。だけど道徳の時間に使う教材は何を使ってもよいということになっていて、学校ごとに自由に使ってやってたから、あまり猛威をふるわなかったと思うんです。ところが、その学習指導要領に則った教科書がずらりと作られ、どれかを使わなきゃいけないという教科書使用義務が課されたのです。
 個人の自主性とか主体性というものよりも、集団の中の一員としての責任とか帰属意識とかが強調されていて、わがまま言うなとか、自己犠牲や自己抑制が美徳として讃えられる。
 社会というのは自分たちでルールをつくっていくことが大事なのに、これを自分たちがつくるということは書いてないんです。
 例えば、学校生活について自分たちでよりよい学校生活のルールを考えようというのだったらいいんだけど、もうルールはあるんだ、ルールに進んで従えと書いてある。そういう「個」よりも「集団」が先にあって、権力者に従う人間だけをつくるような中身になっていると思います。
 Q:教科になれば評価の問題が出てくると思うのですが、どうなるのでしょうか?
 前川:序列化、数値化した54321で評価はしないと文科省は言っています。40人1人ひとりの成長を先生がみていくんだけど、各学級ごとに4月~7月(8回程度の道徳授業)の成長を文章で書けというのは、相当難しいと思います。それを入学者選抜には使わないと、文部科学省は言い切っています。
 Q:「わたしたちの道徳」を作った時、局長だったと思うんですが・・。
 前川:私の言いたいことは全然通らなかったんです。
 もともとあの本を作れと言ったのは下村博文さんです。その前の「心のノート」じゃ不十分だ。読みもの資料をどんどん加えて、教科化する前の段階として国定教科書を作ろうとしたんです。下村さんの強いイニシアチブで始まり、下村さんのペースで、どうにもできなかったです。
 せめて自由についてはちゃんと書いてほしいと思ったんだけど、この自由がひどい話です。
 「うばわれた自由」という話なんだけど、封建時代のヨーロッパで森の番人が見張りをしていたところに勝手に狩りをしているやつがいる。そこへ行ってみると、この国の王子。王子であってもそんな勝手なことをしてはいけない、ととがめる。わがまま言っちゃいけないとか、決まりを守れとか、そういう教訓にしかなっていない、どこが自由についての物語なんだと思います。
 Q:道徳の学習指導要領についてはどうですか?

 前川:道徳の学習指導要領でも教科書でも、学校の一員としての自覚とか、学校としてのアイデンティティとか、中学校になると「よりよい校風をつくる」とか、徳目が書いてあります。これは非常に問題があると思います。
 結局、わが日本国の国民たるものこうでなければならないみたいな話になってくる。人間は一人ひとりがアイデンティティをもっています。一人ひとり違うわけですから。公立学校はとくに、どんなアイデンティティをもっている子どもでも受け入れるという最大限の多様性を持つべきです。
 道徳の教科書は何に基づいて検定するのか。
 文化や伝統を重んじることが不十分だといったら、パン屋を和菓子屋に変えただけで通っちゃう。
 高齢者に対する尊敬というのは、消防団のおじさんをおじ「い」さんにしただけでいい。かなりナンセンスな検定をしているわけです。
 (続)

 『子どもと教科書全国ネット21ニュース 120号』(2018.6)

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