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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「最大の人権侵害」「最悪の非行」である戦争を学習することは「非行克服」に繋がる

2018年03月11日 | こども危機
  =本の紹介(週刊新社会)=
 ◆ 『朝霞、校内暴力の嵐から生まれたボクラの平和学習』
   中條克俊 著(梨の木舎 定価1800円十税)


 ◆ 校内暴力の克服
 著者は、1981年に埼玉県朝霞の公立中学に赴任。当時の赴任先は、校内暴力が吹き荒れていた。
 敗戦後、朝霞の町は、陸軍予科士官学校の跡地に米軍のキャンプ・ドレイクがつくられ、占領軍が駐留、朝霞の南栄通りが「埼玉の上海」といわれ、歓楽街が出現、基地の町と化す。
 赴任先の朝霞二中は天井は穴ぼこだらけ、壁紙は剥がされ、机の上は落書き、傷だらけ、出入り口の戸もベニア板が剥がされていた。中條さんがまずやったことは、机を二段重ねた上に立っての天井の張り替えであった。
 この日以降も同様なことが毎日続く。生徒たちの行動はエスカレートし、自転車の廊下乗り回し、爆竹・火遊び、トイレ・ガラス・扉の破損急増。まさに学校は角廃嘘の様相」を呈す。
 あきらめムードが広がるなかで「朝霞二中を建て直してこそ、わが子の立派な教育ができる」というある保護者の一言で教員は救われ、教員と保護者によるクリーン作戦を開始、1年後ようやく生徒の問題行動は止んでいき、荒れた学校から脱却。
 ◆ 授業づくりに目覚める
   -地域学習・平和学習と「教育観」


 教員4年目に地域に根差す先輩の地域学習に参加、地域の課題は日本の、世界の課題に繋がるという教えに導かれながら、やがて平和学習を柱にした教育実践に入っていく。
 著者の教育観は、個人の自立による連帯社会の主体の形成であり、人間性ある社会を求め続けていくこと、弱肉強食、競争一辺倒の社会、社会的弱者を「自己責任」とする大人社会を変革することという。
 著者たちは、「最大の人権侵害」「最悪の非行」である戦争を学習するこどは「非行克服」に繋がるとして、修学旅行先に古都奈良・京都よりも広島を提案。
 原爆は広島を一挙に廃嘘と化し、十数万人に上る死者・被害者を生んだ。原爆に対抗しで軍国日本が女学生らを動員しでつくらせたのが「風船爆弾」。敗戦後50年の95年に向け、朝霞の戦争の歴史に眼を向け、かつての「軍国乙女」に体験を語ってもらい生徒に聞かせた。
 以後、戦争体験者からの聞き取りは頻繁に授業に取り込まれ、生徒たちは実感をもって戦争を理解していく。
 日教組の組合員で、埼玉教組の教文部長などを歴任した著者は、日教組提唱の日韓中3国の平和教材実践教育交流集会に幾度にもわたり報告、2009年中国で開催の第4回交流集会で「アジアで原爆観を共有するために、原爆投下をどう理解するか」のテーマを設定し、報告。
 従来、日本の侵略に苦しめられた韓国、中国などの民衆は、広島、長崎に原爆が投下され、戦争は早期に終結されたとか、「自業自得」論を有していた。が、核戦争が人類の滅亡を意味する現代において、核が戦争を抑止するかどうか疑問といった認識へと転化することを期待しての報告であった。
 著著には軍国日本がアジアを侵略・植民地支配した加害認識がある。
 保健体育で必修の武道に「銃剣道」が組み込まれたこと、木銃で相手に突ぎを入れる銃剣道は、戦時中の軍事訓練の流れをくみ、教育が戦前回帰に向かっていると警告する。
 (女性史研究家 鈴木裕子)

『週刊新社会』(2018年2月6日)

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