在日米軍基地問題：構造的差別の克服・解消の道筋

　◆ ＜基地引き取り論＞追加・『琉球新報』が社説で期待
　　　皆さま　　　　高嶋伸欣です

　昨日のメールで紹介しました「基地引き取り運動」の体験交流会の記事に続いて、『琉球新報』が「基地引き取り論・運動の広がりに期待する」との社説を、昨１７日に掲載しました。
　今まで沖縄の人々、ジャーナリストがのどまで出かかっていながら言い出せなかったことを、とうとう明確に言い出したと、私には思えます。
　かつて、米軍海兵隊の砲撃演習が大分県や北海道、富士山ろくなどの「本土」各地に分散実施されることになった時、「本土」各地の反対運動による集会に呼ばれて分散実施反対への同調を求められた沖縄からの参加者の、沖縄での報告会の発言が、思い出されます。　「これまで通り沖縄で砲撃演習をやれという要求であるのは明白なのに、我々に連帯行動を求めて来るのでは我々の立場は無いも同然だった。でも、これまでの無関心状況よりは改善されたとして、我々は我慢し、この連帯を維持するしかないのか？」というものでした。
　それから、約１５年。ようやくここまで来た！
　この沖縄からの改めての問題提起に「本土平和主義」はどう対応すれば良いのでしょうか？
　私は、機会があればこの社説と昨日の『朝日』社説を並べて、中学・高校・大学の授業で生徒・学生間での議論を促したいと思います。
　中学・高校の教科書には、講和条約以後の「本土」から沖縄への米軍基地「県外移設」が、現在の沖縄からの『県外移設』問題の元凶の一つであることに気付かせる記述を、今からでも追記されることを期待しています。
　＊１４日の大阪での集会のタイトル「県外移設から『県外移設』へ」はこの意味です。
　とりあえずご参考までに、『琉球新報』１７日の社説をお届けいたします。

　　　　文責は高嶋です　　　　転載・拡散は自由です

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　＜社説＞基地引き取り論　運動の広がりに期待する
　　　2016年5月17日 06:02　　　 『琉球新報』

　沖縄の基地問題は、軍事理論をめぐる悠長な論議ではない。人権の問題だ。構造的差別・植民地主義をなくすか、今後も続けるかという問いなのである。
　このことをあらためて鋭く意識させられる討議だった。在沖米軍基地の本土引き取りを考える大阪でのシンポジウムのことだ。
　基地の本土引き取り論を提唱する人々は、無邪気に日米安保と米軍基地を肯定するのではない。沖縄の米軍基地偏在は本土から移設した結果であり、本土からの基地押し付けであるという認識が大前提だ。つまり、日本人による差別だと自覚した上で、差別するという立場をやめたいという意思表示なのである。
　基地の由来についての知識と植民地主義に関する深い理解、鋭い人権意識が融合した結果だろう。その誠実な姿勢に敬意を表する。運動の広がりに期待したい。
　引き取り論は大阪、福岡に始まり東京、長崎、新潟へと広がっている。
　「引き取りの可能性はゼロ」という見方もあるが、仮にそうだとしても運動は無意味ではない。
　それどころか、圧倒的多数が拒否する過程そのものが、本土の利益のために沖縄を差し出すという構図を、分かりやすい形で示すのではないか。構造的差別の克服・解消に資するのは確かだ。
　「どこにも基地はいらない」という主張が従来言われてきた。
　「自分が苦しんでいるものを他人に味わわせるのは忍びない」という感情もある。
　確かに軍事基地は世界中で存在しない方が望ましい。しかしその論にとどまると、世界全体の平和が実現するまで沖縄は基地を負担し続けることになり、「他人には押し付けないが自分の子孫には押し付ける」ことになる。
　過去２０年、沖縄は不平等な日米地位協定の改定を求めてきたが、国民世論はほとんど動かなかった。圧倒的多数の日本人にとり、基地問題は「人ごと」だからだ。この「人ごと」の論理を突き崩さない限り、基地問題は動かない。
　日本人の８６％が日米安保の維持・強化に賛成している。割合は年々高まる一方だ。
　県外移設が具体化して初めて国民全体が安保の負の側面を直視することになろう。基地引き取りには「安保肯定論」との批判もあるが、高橋哲哉東大大学院教授の言う通り、「安保解消を目指す道筋としてむしろ不可欠」ではないか。そうした議論を深めたい。
『琉球新報』（2016年5月17日）
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-280301.html