◎ 要 請 書
2022年1月24日
「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会
東京「君が代」裁判原告団
事務局長 近藤 徹
東京都教育委員会教育長 藤田 裕司 殿「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会
東京「君が代」裁判原告団
事務局長 近藤 徹
<要請の趣旨>
1.卒業式・入学式等で「日の丸・君が代」を強制する東京都教育委員会(以下都教委という)の10・23通達(2003年)とそれに基づく校長の職務命令により、これまでに懲戒処分を受けた教職員は延べ484名にのぼります。この通達発出以降、東京の学校現場では「命令と服従」の構造によって自由で創造的な教育が失われています。
2.一連の最高裁判決(2011年5月~7月)は、起立斉唱を命じる校長の職務命令が、「思想及び良心の自由」の「間接的制約」であることを認め、処分取消訴訟の最高裁判決(2012年1月、2013年9月)は、「間接的制約」に加え、
「戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要」「処分の選択が重きに失するものとして、社会観念上著しく妥当を欠き、…懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法」として減給処分・停職処分を取り消しました。最高裁が、都教委による累積加重処分に歯止めをかけたのです。
これらの最高裁判決には、都教委通達・職務命令を違憲として、戒告を含むすべての処分を取り消すべきとの反対意見(2012年1月宮川裁判官)を始め、都教委に対し「謙抑的な対応」を求めるなどの補足意見(2012年1月櫻井裁判官、2013年9月鬼丸裁判官、他多数)があり、教育行政による硬直的な処分に対して反省と改善を求めています。
また、最高裁(第一小法廷)は2019年3月、東京「君が代」裁判四次訴訟において、東京高裁判決を不服とした都教委の上告受理申立を不受理とし、特別支援学校教員の卒入学式での4回目・5回目の不起立に対する減給処分(減給10分の1・1月)を取り消しました。
3.最高裁、東京高裁、東京地裁で確定した処分取消の総数は、77件・66名に上ります。都教委が、最高裁・東京高裁・東京地裁で「違法」とされた処分を行ったことは、教育行政として重大な責任が問われる行為です。今すぐ原告らに謝罪し、その責任の所在を都民に明らかにし、再発防止策を講じるべきです。その上で、10・23通達などの「日の丸・君が代」強制に係わる従来の都教委の施策を抜本的に見直すべきです。
4.しかるに、都教委は、2012年1月の最高裁判決の直後に「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について」(平成24年1月24日)を議決しました。その内容は一連の最高裁判決で校長の職務命令が、思想・良心の自由の「間接的制約」であること、「減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要」だとして減給・停職処分が取り消されたこと、反対意見、補足意見が多数出されていること等をことさら無視して、都教委に都合の良い部分だけを取り出して「日の丸・君が代」強制を合理化するものです。そして、その「議決」を根拠に、従来の姿勢を改めることなく最高裁判決にも反した減給を含む懲戒処分を出し続けています。
また、違法な処分を行ったことを原告らに謝罪することなく、最高裁判決・東京地裁判決で減給処分が取り消された現職の都立学校教員延べ20件・19名に新たに戒告処分を科し再処分をするという暴挙に及びました(2013年12月、2015年3月~4月、2018年2月、2020年12月)。
これらは最高裁などの判決の趣旨をねじ曲げないがしろにするもので断じて許すことはできません。猛省を迫るものです。
5.ILO・ユネスコ合同委員会(セアート CEART)は2019年3月、国旗掲揚・国歌斉唱に関し、東京における「日の丸・君が代」強制を念頭に日本政府に是正を求める「勧告」を採択しました。その中では、儀式への「参加を望まない教師」の「不服従の行為への処罰を避ける」ために「教員組織との対話の機会を設けること」を求め、更に研修(再発防止研修)について「懲戒や処罰の手段として使われることのないよう」に「見直し、変更」を求めています。そしてその取り組みを同委員会に「逐次報告する」よう勧告しています(括弧内は同勧告より引用)。
同勧告が、都教委が発出した10・23通達とそれに基づく教職員の処分、再発防止研修など一連の施策を批判し、「対話の機会を設ける」などの見直しを求めていることは明白です。
6.昨年度(2021年3月)に行なわれた卒業式では、新型コロナ感染拡大の中、大幅に式を短縮して、斉唱しない「君が代」をCDで流し、教職員を職務命令で起立させる異常なものでした。これに対しマスメディアなどから厳しい批判が寄せられました。
10・23通達発出から18年3ヶ月余が経ちました。長期にわたり学校現場に異常な混乱をもたらした10・23通達を撤回し、卒業式・入学式が各学校の創意工夫を尊重し、自由で創造的で真に子どもたちの卒業・入学を祝福するための式になるよう強く求めます。
7.貴教育委員会が、一連の司法の判断を重く受け止め、責任ある教育行政としての立場を自覚するとともに、問題解決のため下記申し入れを誠実に検討し、回答することを要求します。
<要請事項>
1 東京都教育委員会が2003年10月23日に発出したいわゆる「10・23通達」を撤回すること。
2 同通達に基づく一切の懲戒処分・厳重注意等を取り消すこと。
3 最高裁判決(2012年1月、2013年9月、2019年3月)、東京高裁判決(2015年12月4日)、東京地裁判決(2017年9月15日)に従い、10・23通達に基づく全ての減給・停職処分を取り消し、該当者に謝罪すること。
4 2013年12月、2015年3月・4月、2018年2月、2020年12月の現職教職員延べ20件・19名に対する戒告という再処分を撤回し、該当者に謝罪すること。
5 10・23通達に基づく校長の職務命令を発出しないこと。
6 新型コロナ感染の急拡大の中、2022年3月・卒業式、4月・入学式で「国旗(「日の丸」)掲揚、国歌(「君が代」)斉唱」を実施しないこと。式次第に「国歌」を入れないこと。
7 卒業式、入学式で同通達に基づく新たな懲戒処分を行わないこと。
8 同通達に係わり懲戒処分を受けた教職員に対する「服務事故再発防止研修」を行わないこと。
9 卒・入学式等での「君が代」斉唱時に生徒の起立を強制し、内心の自由を侵害する「3・13通達」(2006年)を撤回すること。卒業式、入学式で生徒に内心の自由を告知するなどの各学校の創意工夫に介入しないこと。
10 「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について」(平成24年1月24日)の都教委の「議決」を撤回すること。
11 最高裁判決に従い、「紛争を解決する」ための具体的改善策を策定すること。
12 ILO・ユネスコ合同委員会の勧告(2019年3月)に従い、「教員組織」や該当者との「対話の機会」を持つこと(括弧内は同勧告より引用)。
13 都教育庁関係部署(人事部職員課、指導部指導企画課、教職員研修センター研修部教育経営課など)の責任ある職員と被処分者の会・同弁護団との話し合いの場を早期に設定すること。
14 本要請書を教育委員会で配付し、慎重に検討し、議論し、回答すること。
<連絡先> 「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会・東京「君が代」裁判原告団
事務局長 近藤 徹
<回答期限> 2022年2月18日(金)。上記近藤まで文書及びFAXで回答すること。
事務局長 近藤 徹
<回答期限> 2022年2月18日(金)。上記近藤まで文書及びFAXで回答すること。
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