パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

先生はなぜ忙しいのか

2007年01月05日 | ノンジャンル
 先生はなぜ忙しいのか(8)
大量の文書 指導時間奪う


 学校の管理職は文書に忙殺されている。
 「これ、プレゼントしますよ」
 相次ぐいじめ自殺事件を受け、文部科学省が15日開いた有識者会議で、東京都杉並区立和田中学校の藤原和博校長(51)は、にこやかに告げると、池坊保子副大臣の前に文書の束を置いた。その数約400枚。2、3か月の間に国、都、区などから届いた報告や調査の依頼文書の一部だ。
 〈こんなに大量の文書を送りつけられて、どうやって子供たちとの時間を確保すればいいんだ〉。そんな藤原さんの心中が伝わったのか、副大臣は苦笑しながら「だから文書を減らしなさいと言ったじゃない」と、周囲にいた文科省の官僚に話したという。
                ◎
 「教育再生をするなら、まず学校に課す文書を10分の1に減らすことだ」
 社会のいまを学ぶ「よのなか」科などで、学校をもり立ててきたリクルート社出身の藤原さんが語気を荒らげる。文書の処理には、副校長や指導主事までもが追われているからだ。
 藤原さんは、文書の多い理由について、〈1〉本当に必要な調査、業務なのか精査しないままIT化した〈2〉「少年犯罪が増えたから心の教育や命の教育が必要だ」など、付け足し教育が増え、その度に実態と成果を調査している――と分析。その根本にあるのは「不信のシステム」だと強調する。現場に対する官僚の不信感が文書を増やすというのだ。
 「管理職の本来の仕事は、子供の学びの質を上げることに尽きる」とふだんから強調する藤原さんは、ある日、副校長の前で文書を破ってみせた。〈自分が調査結果を知りたいと思った文書以外は協力しないでいい。文書にかける時間は子供と教師指導に充ててほしい〉。そんな思いを込めた“暴挙”だった。
                ◎
 教育委員会も、手をこまぬいているわけではない。杉並区教委は文書を減らす手立てを探るため、区立の全小中学校と、区教委各課に先月、昨年度1年間に受け取った(送った)文書の数や種類、処理した担当者を調査した。
 その結果、小中学校が受けた文書の数は平均300件。これに対し、各課が送った文書は614件に達した。司書教諭配置状況調査、体育授業時の着替え実態、始業式・終業式に関する調査など、多くの文書を副校長が処理していたが、校長が把握しないまま、文書を受け取った教諭らが処理した例が300件以上もあったのだ。
 文書の3分の1は、学校がまだ落ち着かない年度初めの3か月に集中していることも、弊害が大きい。
 ダブリも多い。帰国生に関する実態調査は、区教委から複数の課が5月中に3回出し、7月には都教委も依頼。学校が受け入れるボランティアは「学生ボランティア」と「介助ボランティア」で区教委の担当課が違うため、それぞれが報告を求めていた。
 区教委事務局の佐藤博継次長(54)も「縦割り行政の弊害だ」と認める。学校側の負担を減らすため、区教委では副校長の複数配置の検討も始めている。(松本美奈)

 杉並区教委から小中学校に送られた文書(抜粋、カッコ内は担当課)
 4月
 ・嘱託員の勤務時間の割り振り(指導室)
 ・道徳授業地区公開講座調査(都教委→指導室)
 ・道徳教育推進状況調査(都教委→指導室)
 ・嘱託員の実態調査(指導室)
 ・学校サポーター利用計画枠調査(社会教育スポーツ課)
 ・学校サポーター計画書(社会教育スポーツ課)
 5月
 ・特色ある教育活動の調査(学校運営課)
 6月
 ・特色ある教育活動調査(指導室)
(2006年11月30日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20061130us41.htm

 先生はなぜ忙しいのか(5)
非効率生む事務細分化


 「改革のしがいがあるな」。昨年4月、横浜市立谷本(やもと)中学校に赴任した神谷(こうや)敏明校長(57)は、校内組織図を手につぶやいた。
 組織図には、学級担任や部活動のほか、生活指導など様々な校務の分担表が書いてある。その中で、本来なら事務職員が引き受けるべき事務が、いくつも教師に割り当てられていることに注目したのだ。しかも、備品の設置計画を立てる業務や転校手続きの業務などに細かく分けられ、それぞれ担当教員の名前が並んでいる。
 市内の小中学校などで30年余り事務職員を務めた神谷校長の目には「事務職員がやれば済む仕事がほとんどで、必要のない分類。なるべく多くの教員の名前が出るようにという平等意識が働いている」と映った。
 担当教員を決めることで、かえって効率が悪くなるという。例えば、転入生が来校しても、担当教員の授業中は、他の教員が対応できないため、待たせることもある。こうした事務の振り分けは、多くの学校で慣習化している。
                ◎
 来年度、神谷校長は自身をトップに新たな企画立案会議を設ける構想を練る。校内の事務全体を把握して、実務は事務職員を中心にし、状況に応じて手の空いた教員が手伝う柔軟な体制にするのが狙いだ。
 谷本中は生徒数626人と比較的規模が大きい。授業や部活動で多忙なうえ、事務が教員の余計な負担になっているとの問題意識もある。「教員の手を事務的な仕事から離し、教材研究や子供と接する時間を増やしてほしい」と願う。
 校内事務の再編には、事務職員に奮起を促す側面もある。かつての事務職員は給与計算が主な仕事だったが、電算化が進んだ今、力点は予算に置かれる。神谷校長は「少ない予算を効率的に配分するには、事務職員が学校経営に踏み込まないとだめだ」と役割の変化を説く。
                ◎
 一方、神谷校長は教育課程の見直しにも着手した。総合的な学習の時間や選択教科の集団指導体制への移行だ。
 現在、学級担任は、自分の教科のほかに「総合」や「選択」も担当。授業のない空き時間が少ない。これに部活動や学級事務が加わり、負担が重くなっている。「仕事を機械的に個人の上に乗せており、集団でやろうという視点がない」
 この現状を変えようと、来年度から、「総合」を学年単位、「選択」を教科単位の指導に替え、担任以外の持ち時間に余裕のある教員を充てるつもりでいる。
 全国公立小中学校事務職員研究会顧問で、公立小中学校では、全国で2番目の事務職員出身の校長だ。職員として採用されたころ、自分が校長になるとは夢にも思わなかったという神谷校長は「生徒が成果を実感できるような改革で他校にも刺激を与えたい」と意欲を見せている。(小坂一悟)

 小中学校の大半は1校1人 公立小中学校の事務職員は今年5月現在、3万4328人。義務教育標準法で都道府県ごとの定数を規定しており、ほとんどの場合、1校に1人となるが、大規模校には2人配置されることもある。主に、給与計算や予算、施設管理を担当する。なお、2000年の学校教育法施行規則の改正で、教員免許を持たない事務職員も校長になれるようになった。

(2006年11月25日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20061125us41.htm

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