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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

今国会での個人通報制度の即時批准を求める要請

2011年05月17日 | 人権
 ◎ 今国会での個人通報制度の即時批准を求める要請

内閣総理大臣 菅 直人 殿
法務大臣   江田 五月 殿
外務大臣   松本 剛明 殿
2011年5月2日
人権NGO 言論・表現の自由を守る会

要請内容
まだ参政権が確立していない日本において、
国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、
人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です。
人類普遍の基本的人権を尊重し、
国際自由権規約第一選択議定書(個人通報制度)の批准について御決断いただき、
東日本大震災による大地震・津波被害と原発震災の被災者の人権尊重の立場で
復興にのぞみ、今国会における可及的すみやかな批准を要請します。

 国民の世界標準の人権保障を求める声は、刑事弾圧事件や冤罪事件の被害者や労働、女性、教育など様々な分野から強く上がっています。また、2008年には国連自由権規約委員会から、参政権を確立させる課題として、公職選挙法や国家公務員法などの改正を求める勧告も出されており、憲法98条を遵守した人権の国際標準の適用が強く求められています。
 1,日弁連主催の2・25大集会の成功
 2月25日には、国連自由権規約や女子差別撤廃条約などの選択議定書(個人通報制度)の早期批准をめざして日本弁護士連合会と東京三弁護士会、共催の"今こそ、個人通報制度の実現を!2・25大集会"が開催されました。
 江田法務大臣は、この集会にメッセージをお寄せくださり、「人権分野においてより一層国を開き国際世論と向き合っていくことも我が国にとって貴重な取り組みであると考えています。個人通報制度は民主党のマニュフェストで国民の皆様に実現をお約束している課題であり法務省においても通報事案への具体的対応の在り方や体制整備等のあり方について検討を行っているところです。この制度を導入することによって国内的には人権尊重の意識がより醸成されるとともに、国際的に日本が人権の尊重に積極的であると発信していくと考えます。今後外務省と関係省庁とも連携しながら導入に向けて具体的な検討を進めてまいります。」と表明いただきました。
 山花郁夫外務大臣政務官もご出席くださり、個人通報制度批准の2つの意義を指摘された上で、「昨日江田法務大臣と懇談し、主たる所掌は外務省と法務省で、何とか進めていこう。いつまでにという報告をできるに至っていないが、スケジュール感が見えるような形にしていきたい」とのご挨拶をいただきました。
 民主党の辻めぐむ衆議院議員は、「マニュフェストに批准を約束した。政権獲得後速やかに批准すると約束しており、民主党法務部門担当として実現に向けて働きかけを強めていく」と決意表明して下さり、
 また、人権問題を市民と考える議員連盟幹事長の牧野聖修衆議院議員も駆けつけてくださり、722人の全国会議員に本集会への参加を呼び掛けた事を報告いただき、「さらに力を合わせて即時批准に向けてがんばる」と力強い決意表明をしてくださいました。
 中谷大輔衆議院議員も「事件当事者から貴重な話をきくことができた。(批准は)国を開くグローバルスタンダードにかなうもの」と発言いただき、
 社民党党首福島みずほ参議院議員は、これまで実現を粘り強く取り組んできた経験から「即時批准めざします」と力強い決意表明がありました。
 服部良一衆議院議員からは「今日もなお批准されていないことは残念である」「今後政府に働きかけを強めていく」との意見表明が代読されました。
 公明党山口那津男参議院議も、いまだに個人通報制度が批准されていないことについて「国連人権理事国である我が国としてふさわしくない」と批判し、「早期実現を期す」という大変力強いメッセージを寄せてくださいました。
 日本共産党仁比聡平元参議院議員も駆けつけて「何としても個人通報制度の即時批准を後押ししたい」とご発言いただきました。
 宇都宮健児会長は、「隣の韓国も批准している。G8参加国では日本だけ批准していない。民主党のマニュフェストに掲げられたが、まだ残念ながら実現していない。市民と一緒になって実現する運動を強力に進めていきたい」と開会の挨拶をしました。
 今年の国会議員みなさんのご挨拶とメッセージは、昨年の日比谷公会堂での大集会より、さらに力強く決意が述べられ、集会成功のために11500枚の日弁連作成のチラシを、全国に配布し、最高裁長官と1000人の最高裁職員をはじめ、都高教、新聞社など様々な団体個人に参加を呼びかけてきた私たちは集会の成功に大いに励まされました。
 2,震災復興と国際人権規約
 (1)自由権規約の活用

 2008年の自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査を受け、日本政府は34項目にわたる日本の人権保証システム全体に対して厳しい勧告を受けました。
 日本政府に対して、戸別訪問の禁止や文書配布の禁止規定などを持つ公職選挙法や、一般公務員の市民的政治的自由を刑罰で禁止している国家公務員法を名指しで懸念を示した上で、「参政権に対する非合理的な法律を撤回せよ」(資料※パラグラフ26)と勧告しています。
 日本では、政府に批判的なビラを配布したことによって逮捕・起訴され最高裁においても有罪とされており、まさに"弾圧ラッシュ"の状態です。こうした人権状況が、原子力発電に対する『安全神話』を引き起こす大きな原因になっていると考えます。
 まだ参政権が確立していない日本の政府が、国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です
 また、希望ある復興の道を切り開くために不可欠だと考えます。

 (2)社会権規約の活用
 復興の基本的な施策は、住宅・衣食・労働・教育・医療等の政策と万全の人権保証の予算措置が不可欠です。この法的根拠となるのが、憲法と共に社会権規約です。
 これについては、阪神・淡路大震災被災者と関係者の皆さんの告発とレポートなどをもとに審査し、国連は2001年に社会権規約の第2回日本政府報告書審査を経て勧告しました。(資料※※)しかし、日本政府はこれに対する勧告も、原発に関する勧告もいずれも実施していません。それどころか、翌年には国連の勧告に対して反論(資料※※※)し、その後10年間にわたってさぼり続け、経済的・身体的・社会的弱者の被害をさらに拡大し、今回の震災被害を拡大し、自然災害の上に甚大な被害を与えました。
 阪神・淡路大震災後の日本政府の対応について国連:経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は、『最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けられず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居していることに懸念を表明し、「家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである」「多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない」』と指摘し、『「阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。」「これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。」』と、住宅問題について改善を提起しました。
 今回の震災復興会議の報道からは、社会権規約も自由権規約もこどもの権利条約とこどもの権利条約に関する2つの選択議定書などについても、日本政府が批准している人権条約はもちろんのこと、日本政府報告書に基づいて審査された結果、国連が勧告した内容についても一切報じられていません。
 これらの国際人権条約は法的には憲法と同等もしくは憲法以上の拘束力を持つものです。
 震災支援の住宅建設・確保や、食料や衣類、生活基盤、医療、教育、労働などとともに親を亡くした子供たちの保護やこどもの貧困に関する重要な予算措置根拠となる法律です。
 また、委員会は原子力の問題についても、「原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念を示し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進するよう」勧告し、「原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを」日本政府に対して要求していました。
 日本政府(自民党・公明党政権)は翌年に、この勧告(最終見解)に対して国連に意見し、その後においてもさらに原発安全神話を強化し、震災弱者の深刻な問題を放置してきたのです。
 災害復興においても原発事故の対応においても、国際人権の水準で構想を構築するためには、人権保障の基礎的提言として、まず国連の勧告を受け入れることが、全ての法的根拠を示こととなり、国民に希望ある道を指し示すためには国連の勧告の実施が不可欠です。
これ以上被害を拡大することは人道上許されません。
 国際人権規約を活用する道を開くためには、個人通報制度の批准が不可欠であり大変急がれています。大震災と原発人災による未曾有の被害を、人権保証の立場で国際法に基づいた法的根拠を明確にして希望ある社会を構築していくために不可欠だと考えます。
 日本政府が個人通報制度を批准することによって、世界人権宣言と自由権規約・社会権規約等の人権条約を遵守し活用する立場を表明することとなり、アジアと国際社会において日本政府が人権の尊重に積極的であると発信することは、日本にとってのみならずアジアと世界の人々にとっても希望ある選択です。
 (3)原発事故への活用
 この度の未曾有の東日本大震災においては、14,704人もの方が亡くなり、未だ10,969人もの人もの方が行方不明で、今日も家族のみなさんが不安に打ちのめされながら、見つかることを必死に祈り、その願いに答えようと懸命の捜索が続けられています。
 この巨大地震と大津波の未曾有の自然災害のうえに、福島第一原発爆発による放射能汚染は危機的状態を未だ脱していません。これまでの人災による放射能汚染と避難生活を強いられた上に、さらなる放射能汚染の「人災」が被災者を打ちのめしています。とりわけ乳幼児とこども達には、被爆による命に係わる健康被害の恐怖が襲い掛かっています。
 文部科学省が、福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が年間20mSvの被曝を基礎として、毎時3.8μSvと決定し通達しましたが、これは、こどもの命にかかわり、絶対に許されません。政府・文科省・教育委員会が、こども達と保護者に対して、放射線の高濃度汚染を強いることは許しがたい犯罪行為です。到底この基準は容認できません。ただちに憲法と国際人権条約で保障されている生存権を保障し、国際的な安全基準と勧告等に基づき、健康と生命の安全が保障される数値に是正し、その安全確保のために必要な措置を取ることを要請します。
 3,今こそ個人通報制度の国会上程と批准の実現を
 菅総理大臣、江田法務大臣、松本外務大臣におかれましては、ぜひ今国会における個人通報制度の批准についてご決断ください。
 大臣以外、719人の全国会議員に対して「今国会において個人通報制度を批准し、国際標準の人権保証を構築し、被災者と国民の願いにこたえよう」とご提起ください。
 現在の国難ともいうべき困難を極めた事態の中で、日弁連をはじめ、人権NGOも強力な力を発揮し、国連および国際人権関係者からも大きな歓迎を受けるでしょう。
 当会も、微力ですが全力で協力することをお約束いたします。
   以上

 【資料】
 ※自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査 最終見解(勧告)2008年10月(抜粋)

パラグラフ26 委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、詩人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下での逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する。
         締約国(日本)は、規約19条及び25条の下で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」
※※ 社会権規約  経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会
2001年8月13日~31日 第26(特別)会期
 規約第16条及び第17条に基づく 締約国(日本)により提出された報告の審査
 経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解  2001年9月24日
   主な懸念される問題とそれに対する勧告(抜粋) 

パラグラフ22 委員会は、報告された原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念をする。
【勧告】パラグラフ49 委員会は、原子力施設の安全性に関連する問題に関し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進することを勧告する。さらに、締約国に対し、原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを要求する。
パラグラフ27  委員会は、阪神・淡路大震災後に兵庫県により計画し実行された、大規模な再定住計画にもかかわらず、最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居していることに懸念を有する。家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである。多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない。
【勧告】パラグラフ54 委員会は、締約国が兵庫県に対し、とりわけ高齢者及び障害者への地域サービスの向上及び拡大を勧奨することを勧告する。
パラグラフ28  委員会は、阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。
【勧告】55 委員会は、貧しい被災者が、住宅ローンの支払いを続けるために財産を売却せざるを得なくなることを防ぐために、それらの者が破壊された住宅を再建するために公的住宅基金あるいは銀行に対する債務の支払いを支援するため、締約国が規約第11条の義務に従って、効果的な措置を迅速にとることを勧告する。
※※※ 最終見解に関する締約国(日本政府)の意見
(2)パラ27、28の阪神・淡路大震災にかかる対策に関し、日本政府、兵庫県・神戸市等は、医療、避難所、食料、水、その他必需品の提供に加え、他の先進国にも例を見ない多種多様な施策により、被災者に対する生活支援を迅速かつ適切に行ってきたことにつき、貴委員会が正確に理解されるよう求める。
 例えば、被災した高齢者及び障害者に対して、「生活援助員」が入居世帯を支援する「高齢者・障害者向け地域型応急仮設住宅」の建設や、コミュニティの形成に配慮して、高齢者が孤独に陥ることなく共同生活ができるコレクティブハウジングの建設を行っている。さらに被災者の精神面のケアについても、これまでのコミュニティを維持するためグループで恒久住宅に移れる措置や保健婦に加え「生活援助員」による各家庭への訪問の実施など、きめ細かなケアを実施している。特に家族を失った被災者に対しては、「こころのケアセンターの設置」や「こころのケア推進員」の養成・派遣等の事業を実施しているほか、被災児童の心の安定を図る教育復興担当教員の配置を行うなど、きめ細かい支援を実施している。
 また、被災者の住宅債務の支払いについては、自力で住宅を再建する被災者に対する利子補給等の支援、既往債務の償還期間の延長、二重ローン債務者に対する一定割合の補助等の特例措置を講じてきた。
 日本政府は、これら多種多様な施策により、被災者に対する生活支援を適切に行ってきたと考えている。

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