《再雇用拒否撤回2次訴訟第10回口頭弁論(2011/11/21)陳述》<1>
◎ 懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否等をされたという不平等
第1 省略
第2 採用拒否等をされたのは,ほとんどが不起立者であること
1 別紙(被告準備書面(3)別紙に一部○印を付したもの)のとおり,再雇用・非常勤採用申込者については圧倒的多数が採用されている。
すなわち、原告らが申し込んだ平成19年度から20年度の間に、合計637人が採用を申し込み、そのうち595人が採用されたので、合格採用率は93.4%である。そして、不合格または取り消しとして採用拒否等をされた6.6%のうちほとんどが、次のとおり不起立者である。
2 平成18年度(2007年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は226人であり,合格者は216人,取消は2人である。したがって,採用拒否等は12人である。
(2)上記採用拒否等12人のうち,取消2人は原告G,同Tである。そして,不合格者10人のうち6人は,原告I,同I,同O,同T,同N,同Wである。また,1人は,不起立による採用拒否等を不当として別件訴訟を提起した南葛飾高校定時制のS氏(東京地方裁判所平成21年1月19日判決・渡邉弘裁判長)である。さらに,3人は,訴外I子氏,訴外S氏,訴外H氏であり,不起立による採用拒否等の処分取消訴訟の原告になっている者である。
したがって,不起立以外での採用拒否者はいない。
3 平成19年度(2008年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は10人で全員が合格したが,1人だけが取り消された。したがって,採用拒否等は1人である。
(2)非常勤教員採用申込者は176人であり,合格者は159人,取消は1人である。したがって,採用拒否等は18人である。
(3)上記再雇用の採用拒否者1人は,原告Kである。また,非常勤教員採用の不合格者18人のうち8人は、原告A、同A、同A、同S、同S、同T、同N、同Hである。また,不起立により採用拒否等になったが訴訟提起まではしなかった者として,訴外H氏及び東京都立園芸高等学校の教員の2人がいる。
したがって,拒否理由が不起立以外の可能性のある採用拒否者は0人から最大でも8人であるが、そのうち1人は、健康上の問題があるものであった。
4 平成20年度(2009年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は6人で,5人が合格した。したがって,採用拒否等は1人である。
(2)非常勤教員採用申込者は219人であり,合格者は209人である。したがっで,採用拒否等は10人である。
(3)上記非常勤教員採用の不合格者10人のうち7人は,原告K,同T,同N,同H,同M,同M,同Mである。
したがって,拒否理由が不起立以外の可能性がある採用拒否者は0人から4人だけである。
5 以上のとおり,大多数が採用されているにもかかわらず,不起立者が狙い打ち的に採用拒否等をされる結果になっており、明らかに不平等である。
第3 懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否されたこと
1 さらに言えば,懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否等をされたという不平等がある。
2 過去には,争議行為での2回の停職処分者や交通事故で懲戒処分を受けた者も採用されているのは争いのない事実である。
不起立は,積極的行為でも,犯罪行為でもない。まさに「選考の公平さに疑問がある」(東京地裁平成20年2月7日判決)と言わざるを得ない状況である。
3 さらに,訴外において東京都に対する情報公開を行い,平成23年3月23日に一部開示決定を得て取得した情報によると、原告らの採用拒否の際及び近接した時期においても、以下の通り懲戒処分を受けた者がいずれも採用されている。
(1)平成19年度(2008年3月退職者)では,戒告1回の者は9人も合格しており,停職1回の者1人も合格している。
(2)平成20年度(2009年3,月退職者)では,戒告1回の者2人の他,処分の種類は不明であるが何らかの懲戒処分を受けた者2人も合格している。さらには、停職2回の者も1人合格している。
(3)平成21年度(2010年3月退職者)では、戒告1回の者3人は合格しており、減給1回を受けた2人も合格している。また、停職1回の者、停職と戒告それぞれ1回の者、さらには停職2回に戒告1回の者ですら合格している。
4 このように,不起立でなければ,戒告のみならず減給を受けた者,さらには停職2回に戒告1回など複数回重い処分を受けた者でも採用されている。
一方で,原告ら不起立者は,たった1回の戒告ですら不採用となった。すなわち,懲戒処分を受けた者の中ですら,不起立者だけを特に差別して採用を拒否したのである。
第4 本件採用拒否等が明らかな平等権侵害であること
1 被告は,平成22年5月31日付被告準備書面の1(2頁)において,原告らを採用拒否などにした理由として,「原告らが,…卒業式の場において…校長が発出した起立斉唱を命じる職務命令に違反し,不起立に及んだということは,職務命令違反及び信用失墜行為という重大な非違行為に当たるものであり,勤務成績が良好であるとの要件を欠くと判断した」ことを挙げている。
しかし,上記のように不起立者だけが特に採用拒否されている結果からみても明らかなとおり,採用拒否の理由は不起立である。
2 原告らが起立しなかったのは,卒・入学式における君が代起立斉唱の一律強制に応じられないという「信条」を有していたからである。被告は,この不起立に着目し,日の丸掲揚・君が代斉唱の一律強制に応じられないという「信条」を有する原告らをあぶり出した。
そして,被告は,原告らと他の再雇用・非常勤採用希望者との間で,さらには懲戒処分を受けた者の中でも特別に,採用拒否という差別的な取り扱いを行ったのである。
原告らが申し込んだ3年間において,不起立者であれば100%不採用(30人中30人全員)となり,その他の者の不採用率は607人中最大でも12人のみである。つまり,申し込めば98%超の確率で採用された制度で,不起立者だけ全員が採用を拒否されたのである。かかる差別的取扱は,原告準備書面(12)でも既に述べたとおり,*憲法14条第1項後段の「信条」による差別に該当し,それは到底合理的な根拠に基づくものではない。
3 よって,被告による本件採用拒否等は,原告らの平等権を侵害し,違憲である。
◎ 懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否等をされたという不平等
代理人弁護士 林真由美
第1 省略
第2 採用拒否等をされたのは,ほとんどが不起立者であること
1 別紙(被告準備書面(3)別紙に一部○印を付したもの)のとおり,再雇用・非常勤採用申込者については圧倒的多数が採用されている。
すなわち、原告らが申し込んだ平成19年度から20年度の間に、合計637人が採用を申し込み、そのうち595人が採用されたので、合格採用率は93.4%である。そして、不合格または取り消しとして採用拒否等をされた6.6%のうちほとんどが、次のとおり不起立者である。
2 平成18年度(2007年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は226人であり,合格者は216人,取消は2人である。したがって,採用拒否等は12人である。
(2)上記採用拒否等12人のうち,取消2人は原告G,同Tである。そして,不合格者10人のうち6人は,原告I,同I,同O,同T,同N,同Wである。また,1人は,不起立による採用拒否等を不当として別件訴訟を提起した南葛飾高校定時制のS氏(東京地方裁判所平成21年1月19日判決・渡邉弘裁判長)である。さらに,3人は,訴外I子氏,訴外S氏,訴外H氏であり,不起立による採用拒否等の処分取消訴訟の原告になっている者である。
したがって,不起立以外での採用拒否者はいない。
3 平成19年度(2008年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は10人で全員が合格したが,1人だけが取り消された。したがって,採用拒否等は1人である。
(2)非常勤教員採用申込者は176人であり,合格者は159人,取消は1人である。したがって,採用拒否等は18人である。
(3)上記再雇用の採用拒否者1人は,原告Kである。また,非常勤教員採用の不合格者18人のうち8人は、原告A、同A、同A、同S、同S、同T、同N、同Hである。また,不起立により採用拒否等になったが訴訟提起まではしなかった者として,訴外H氏及び東京都立園芸高等学校の教員の2人がいる。
したがって,拒否理由が不起立以外の可能性のある採用拒否者は0人から最大でも8人であるが、そのうち1人は、健康上の問題があるものであった。
4 平成20年度(2009年3月退職者)について
(1)再雇用新規採用申込者は6人で,5人が合格した。したがって,採用拒否等は1人である。
(2)非常勤教員採用申込者は219人であり,合格者は209人である。したがっで,採用拒否等は10人である。
(3)上記非常勤教員採用の不合格者10人のうち7人は,原告K,同T,同N,同H,同M,同M,同Mである。
したがって,拒否理由が不起立以外の可能性がある採用拒否者は0人から4人だけである。
5 以上のとおり,大多数が採用されているにもかかわらず,不起立者が狙い打ち的に採用拒否等をされる結果になっており、明らかに不平等である。
第3 懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否されたこと
1 さらに言えば,懲戒処分を受けた者の中でも,不起立者だけが特に採用拒否等をされたという不平等がある。
2 過去には,争議行為での2回の停職処分者や交通事故で懲戒処分を受けた者も採用されているのは争いのない事実である。
不起立は,積極的行為でも,犯罪行為でもない。まさに「選考の公平さに疑問がある」(東京地裁平成20年2月7日判決)と言わざるを得ない状況である。
3 さらに,訴外において東京都に対する情報公開を行い,平成23年3月23日に一部開示決定を得て取得した情報によると、原告らの採用拒否の際及び近接した時期においても、以下の通り懲戒処分を受けた者がいずれも採用されている。
(1)平成19年度(2008年3月退職者)では,戒告1回の者は9人も合格しており,停職1回の者1人も合格している。
(2)平成20年度(2009年3,月退職者)では,戒告1回の者2人の他,処分の種類は不明であるが何らかの懲戒処分を受けた者2人も合格している。さらには、停職2回の者も1人合格している。
(3)平成21年度(2010年3月退職者)では、戒告1回の者3人は合格しており、減給1回を受けた2人も合格している。また、停職1回の者、停職と戒告それぞれ1回の者、さらには停職2回に戒告1回の者ですら合格している。
4 このように,不起立でなければ,戒告のみならず減給を受けた者,さらには停職2回に戒告1回など複数回重い処分を受けた者でも採用されている。
一方で,原告ら不起立者は,たった1回の戒告ですら不採用となった。すなわち,懲戒処分を受けた者の中ですら,不起立者だけを特に差別して採用を拒否したのである。
第4 本件採用拒否等が明らかな平等権侵害であること
1 被告は,平成22年5月31日付被告準備書面の1(2頁)において,原告らを採用拒否などにした理由として,「原告らが,…卒業式の場において…校長が発出した起立斉唱を命じる職務命令に違反し,不起立に及んだということは,職務命令違反及び信用失墜行為という重大な非違行為に当たるものであり,勤務成績が良好であるとの要件を欠くと判断した」ことを挙げている。
しかし,上記のように不起立者だけが特に採用拒否されている結果からみても明らかなとおり,採用拒否の理由は不起立である。
2 原告らが起立しなかったのは,卒・入学式における君が代起立斉唱の一律強制に応じられないという「信条」を有していたからである。被告は,この不起立に着目し,日の丸掲揚・君が代斉唱の一律強制に応じられないという「信条」を有する原告らをあぶり出した。
そして,被告は,原告らと他の再雇用・非常勤採用希望者との間で,さらには懲戒処分を受けた者の中でも特別に,採用拒否という差別的な取り扱いを行ったのである。
原告らが申し込んだ3年間において,不起立者であれば100%不採用(30人中30人全員)となり,その他の者の不採用率は607人中最大でも12人のみである。つまり,申し込めば98%超の確率で採用された制度で,不起立者だけ全員が採用を拒否されたのである。かかる差別的取扱は,原告準備書面(12)でも既に述べたとおり,*憲法14条第1項後段の「信条」による差別に該当し,それは到底合理的な根拠に基づくものではない。
3 よって,被告による本件採用拒否等は,原告らの平等権を侵害し,違憲である。
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