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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

李明博政権への審判と市民派ソウル市長の当選

2011年11月24日 | 格差社会
 連載【韓国の新自由主義に抵抗する】労働情報
 ◆ 李明博政権への審判と市民派ソウル市長の当選
 ~市民運動勢力の新しい政治実験のはじまり
李泳采●恵泉女学園大学教員

 8月、呉世勲(オセフン)前ソウル市長が無償給食実施の可否を問う住民投票で敗れ辞任したことに伴い、10月26日、ソウル市長選挙の投開票が行われた。
 韓国では「市民運動の父」とも呼ばれる弁護士・朴元淳(パクウォンスン・55歳、弁護士)氏が、与党ハンナラ党の女性議員・ナギョンウォン(47歳)氏に圧勝し(朴元淳53・40%、ナギョンウォン46・21%)、韓国社会は新しい民主政治のページをめくった
 韓国の全人口の1/3(1千200万人)を占めるソウル市。市長は「小大統領」とも呼ばれるほど強大な影響力を持っている。特に今回の市長選は、12月の大統領選挙と来年4月の総選挙を控えた前哨戦でもあったという意味で、与・野党どちらも譲ることのできない重要な選挙であった。
 結果的に敗れた李明博政権と与党ハンナラ党は計り知れない政治的打撃を受けた。野党民主党も勝利はしたものの独自候補を出せず市民派候補を支援するしかなかった点では、与野党含めた既成政党に変化を迫る画期的な選挙結果であったと言えるだろう。
 今回の市長選では、近年のどの選挙よりも若者の投票率が高く、朴元淳氏に対する支持率も高かった。
 実際の得票率でも、朴元淳氏は20代(69・3%)、30代(75・8%)、40代(66・8%)から高い支持を得、ナギョンウォン氏を圧倒。これは、激しさを増す福祉切り捨てや貧困拡大の最大の被害者である青年失業層と中産層が、李明博政権とハンナラ党の政治に強い不満を持っていることを改めて証明している。
 また市長選を通じて、来年の大統領選挙で有力候補として名前の挙がっている安哲秀(アンチョルス)ソウル大教授とパククンへ・ハンナラ党議員の政治的影響力も再確認されることとなった。
 市民派の朴元淳氏が出馬宣言をしたとき、彼の支持率はわずか5%に過ぎなかった。むしろ、同時期に市長選出馬の可能性があったベンチャー企業CEOでソウル大教授でもある安哲秀氏の支持率は50%を上回っていた。結局、安哲秀氏の不出馬と朴元淳氏への支持宣言により、朴元淳氏が当選したわけだが、ハンナラ党の追い上げにより、投票日直前の3日前には逆転の可能性さえ予想されていた。
 この時、安哲秀氏が再び朴元淳支持を表明し、これが選挙の勝敗を決したという世論調査の結果がある。これは、今後の市政運営と支持基盤にも影響を及ぼしかねない要因となるだろう。
 一方、大統領選の最も有力な候補であるパククンへ氏(ハンナラ党)は今回のソウル市長選では影響力の限界を見せたものの、同日7ヵ所で開かれた地方補欠選挙では、全地域でハンナラ党が圧勝、政治的影響力の存在を示した。来年の総選挙と大統領選挙に向けて、安哲秀氏とパククンへ氏の動向がますます注目されるだろう。
 386世代(60年代生まれで、80年代に大学に通い、90年代当時30代だった世代)と呼ばれる「民主化運動を経験した闘士たち」が政界入りしたものの、真の民主化を果たすことに失敗した経験は近年の脱政治化を招いた一因でもあった。
 今度は、韓国社会の民主化を支えているもう一つの軸である市民運動勢力による新しい政治実験が始まったと言える。
 だがこれに失敗したら不信と失望から、ややもすると市民民主主義の草の根を根本的に右傾化させる危険性もはらんでいることを忘れてはいけない。しかし、この成功が来年の総選挙と大統領選挙での政権交替につながる点を考慮するなら、すべての進歩勢力が力を合わせなければならないだろう。
 朴元淳新市長が当選の言葉として語った「常識が非常識に勝つ」新しい時代が到来することを期待している。

『労働情報』(827号 2011/11/15)

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