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七生養護金崎裁判 判決要旨

2008年02月28日 | 平和憲法
 ★ 七生養護 金崎裁判 判決要旨

 【平成20年2月25日午後1時10分 判決言渡(722号法廷)】
 平成18年(行ウ)第236号懲戒処分等取消請求事件
 民事第36部合議B係【渡邊弘(裁判長)福嶋政幸,別所卓郎】
 原告:金崎満被告 :東京都(処分庁:都教委)

主  文

1 東京都教育委員会が平成15年9月11日付けで原告に対してした懲戒処分及び分限処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由

第1 事案の概要


 東京都立七生養護学校(本件学校)の校長であった原告が,①平成11,13,14年度の学級編制において,仮決定を受けた重度・重複学級の一部を編制しないで虚偽の報告を行い,不正に教員の加配を受けたこと,②勤務時間を切り上げて,平成13,14年度の本件学校の運動会と学習発表会の後の反省会で職員と共に飲酒し,同14年11月,職員旅行に参加する等,不正な認整をしたこと,③所属職員の平成14年度長期休業中の大学等公開講座等の研修申請を不適切に承認したことから,平成15年9月11日,地方公務員法32条,33条違反により,都教委から停職1か月の懲戒処分(上記①,②による)と,同法28条1項3号に該当するとして,東京都公立学校長を解く旨の分限処分(上記①~③による)を受けたことから,原告が本件各処分の取消を求めた事案。

第2 本件の争点及び当事者の主張

1 上記①~③の事実は認められるか否か。

 ①の事実について,被告は,原告が本件学校において重度・重複学級の生徒として申請した生徒を普通学級に恒常的に所属させ,決定通知を受けた重度・重複学級を編制せず,加配を受けた教員を定数以上に普通学級に配置し,障害の程度に応じた指導が行われない不適正な状態を生じさせたと主張する。原告は,情緒障害児に対する指導のため,予め都教委に対して重度・重複学級の枠組を利用した「情緒障害児学級」の試行を申請して,平成11年3月,都教委から学級編成につき仮決定通知を受け,それ以降,毎年度、都教委が定めた学級編制基準の要件に従い,上記の試行の枠組の中で,個々の生徒の状況に応じ,柔軟に櫓別指導や集団に合流した指導をしていたものである等と主張する。
 ②について,被告は,本件学校の運動会及び学習発表会の際,原告は労基法34条1項等の趣旨に反して校長としての勤務時間割振りの権限を不正に行使し,休憩時間を勤務時間の最後(16:30~17:15)に変更して職員と飲酒したり,午後4時30分ころに職員旅行に出発する等不正な調整をしたと主張し,原告は,本件学校では養護学校の特殊性から所定の時間帯に休憩時間が取れず,まして,運動会や学習発表会等の学校行事の際,所定の休憩時間をとることは不可能であったため,校長の権限を適切に行使したものだ等と主張した。
 ③について,被告は,旧教育公務員特例法20条2項の研修(承認研修)として,同法や被告の教育庁通知が認めていない,知人の農園での農作業実習,陶芸製作の実習,出身校における部活動の指導及びアスレチック施設での研修という教員の申請を違法に承認したと主張し,原告は,同法上,研修の承認権限は校長にあるので,これを適切に行使したものだと主張した。

2 本件各処分には裁量権の逸脱濫用があるか。
 原告は,本件各処分は,重すぎて平等原則に違反する,適正手続を欠く,処分理由に掲げられない本件学校での性教育の問題を実質的な理由とするということから,都教委の権限の逸脱濫用にあたると主張し,被告は,公務員の懲戒処分につき与えられた裁量権行使について逸脱・濫用はないと主張した。

3 本件各処分は地方公務員濫49条1項に違反するか否か。
 原告は,本件各処分は上記の性教育問題を実質的理由としてされたことが明らかであるのに,処分理由書には記載されておらず,処分事由を明らかにした説明書の交付を要求している地方公務員法49条1項の要件を欠き違法であると主張し,被告は,本件各処分の理由としては上記①~③のみで十分であり,性教育の問題を処分理由とはしていないと主張した。

第 3当裁判所の判断

1 本件学校では,重度・重複学級につき,被告教育庁の通知によって学級の設置に必要とされる条件(特別な教育課程の編成と担当教員,教室の明確化等)を形式的には充たしていた。原告は,かねてから,極度の情緒不安定と暴力,授業妨害等の問題行動があり,個別の指導をすることが必要な情緒障害児について,当該生徒や他の生徒の安全確保や情緒の安定化を図るための対応を検討していたが,被告の都教委とも協議の上,重度・重複学級の制度を活用して,個別指導,小集団指導を中心に,必要に応じて普通学級との合同の学習時間を設定する等,生徒の状態に即した流動性のある学級運営をする「情緒障害児学級」を立案し,それに対して被告の都教委から本件の重度・重複学級の設置が認められたという経緯に照らせば,被告が本件各処分で問題視する柔軟な学級運営について,原告が重度・重複学級を仮決定どおりに編成していなかったとか,学級を減じていたと評価するのは適切ではなく,上記①の事実を認めることはできない。
 一方,②については,教員の勤務時間に関して,労働基準法や学校職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例の趣旨に反した休憩時間の割振りを行い,校長の調整権限を越えた勤務時間の調整を行った事実が認められる。また,③については,承認研修は旧教育公務員特例法によって職務専念義務の例外として認められたものであり,原告は,同法とこれに基づく被告の通達,通知に違反して承認を行ったものと認められる。

2 本件各処分にあたって,被告は,上記①の事実が最も違法性が高いとの判断に基づき処分を量定したと認められるところ,当該事実に誤認があることは上記1のとおりであるから,上記②及び③の事実が認められることを前提にしても,本件各処分は,いずれも重きに失し,被告の裁量権を濫用ないし誤って行使して発せられたものといわざるを得ない。

3 以上から,その余の点を判断するまでもなく,本件各処分は取り消されるべきものである。
以上

『こころとからだの学習裁判支援』
http://kokokara.org/pdf/shoko/2008_0225.pdf

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