◆ 国際イメージ低下
「アパルトヘイト美化」曽野氏コラム
産経新聞に掲載された作家曽野綾子氏のコラムが、1990年代に撤廃された南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策を許容・美化しているとして海外で大きく報じられている。
曽野氏が安倍晋三首相の私的諮問機関の元委員だったこともあり、日本の国際イメージ低下も懸念されている。一方、国内メディアの扱いは小さく、国際感覚の欠如が浮き彫りになっている。(鈴木伸幸)
◆ 「首相の元助言者」海外メディア批判
曽野氏のコラムは、「労働力不足と移民」と題して十一日付朝刊に掲載。少子高齢化が進む日本は介護分野での人手不足解消に、移民受け入れを緩和すべきだとした上で「もう二十~三十年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと記した。
AP通信(AP)やロイター、AFPといった国際通信社が東京発で長文の批判記事を打電した。
「安倍首相の元助言者がアパルトヘイトを容認、首相を困惑させる」(ロイター)といった見出しだ。曽野氏は二〇一三年十月末まで第二次安倍内閣の教育再生実行会議の委員だった。
通信社電は、菅義偉官房長官が記者会見でコラムへの直接の言及は避けたものの、移民政策について「日本は法の下の平等が保障されている。適切に対応する」と話したことにも触れた。
南アのモハウ・ペコ駐日大使がアパルトヘイト政策は人道に対する犯罪で正当化されないと断言し、コラムは「恥ずべきで突拍子もない」と産経新聞に抗議したことも続報で流れた。
さらに曽野氏が一三年八月に雑誌で出産後に復職する女性を批判して物議を醸したことや、日本の移民政策の排他性なども詳報した。
米国では、リベラルなニューヨーク・タイムズだけでなく、保守色が強いウォールストリート・ジャーナルも通信社電を掲載。シンガポールのストレーツ・タイムズなどアジア各国の英文メディアにも載った。英国でもインディペンデントなど有力紙が自社電も交えて報じた。
◆ 腰引ける国内 国際感覚なし
それに比べると、日本のメディアは、南ア大使の抗議などを短く伝えるだけだ。過去にも、山谷えり子国家公安委員長兼拉致担当相が「在日特権を許さない市民の会」との関係を取り沙汰されたり、高市早苗総務相と極右団体代表との写真がネット上で批判されたりした時も、同様の「内外格差」があった。
南ア情勢に詳しい京都精華大の楠瀬佳子教授は、曽野氏のコラムについて「虐げられてきた黒人の歴史からすれば、人種隔離の容認なんてありえない。ある種の無知かもしれないが、許される話ではない」と指弾する。
国内メディアの報道ぶりについても「メディアの扱いも含め国際感覚が欠如している。経済優先で突っ走り『国としてどうあるべきか』といった議論を積み重ねてこなかったから、日本人は軽率になる」と手厳しい。
評論家の佐高信氏は「曽野氏は殻を破れていない子ども。世間にもまれず、甘やかされてきたから、自分の常識のなさが分からない。それでいてベストセラー作家だから、日本メディアは批判しにくい。お友達で周囲を固め、異論に耳をふさぐ安倍首相と似ている」と指摘した。
『東京新聞』(2015/2/17【ニュースの追跡】)
「アパルトヘイト美化」曽野氏コラム
産経新聞に掲載された作家曽野綾子氏のコラムが、1990年代に撤廃された南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策を許容・美化しているとして海外で大きく報じられている。
曽野氏が安倍晋三首相の私的諮問機関の元委員だったこともあり、日本の国際イメージ低下も懸念されている。一方、国内メディアの扱いは小さく、国際感覚の欠如が浮き彫りになっている。(鈴木伸幸)
◆ 「首相の元助言者」海外メディア批判
曽野氏のコラムは、「労働力不足と移民」と題して十一日付朝刊に掲載。少子高齢化が進む日本は介護分野での人手不足解消に、移民受け入れを緩和すべきだとした上で「もう二十~三十年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと記した。
AP通信(AP)やロイター、AFPといった国際通信社が東京発で長文の批判記事を打電した。
「安倍首相の元助言者がアパルトヘイトを容認、首相を困惑させる」(ロイター)といった見出しだ。曽野氏は二〇一三年十月末まで第二次安倍内閣の教育再生実行会議の委員だった。
通信社電は、菅義偉官房長官が記者会見でコラムへの直接の言及は避けたものの、移民政策について「日本は法の下の平等が保障されている。適切に対応する」と話したことにも触れた。
南アのモハウ・ペコ駐日大使がアパルトヘイト政策は人道に対する犯罪で正当化されないと断言し、コラムは「恥ずべきで突拍子もない」と産経新聞に抗議したことも続報で流れた。
さらに曽野氏が一三年八月に雑誌で出産後に復職する女性を批判して物議を醸したことや、日本の移民政策の排他性なども詳報した。
米国では、リベラルなニューヨーク・タイムズだけでなく、保守色が強いウォールストリート・ジャーナルも通信社電を掲載。シンガポールのストレーツ・タイムズなどアジア各国の英文メディアにも載った。英国でもインディペンデントなど有力紙が自社電も交えて報じた。
◆ 腰引ける国内 国際感覚なし
それに比べると、日本のメディアは、南ア大使の抗議などを短く伝えるだけだ。過去にも、山谷えり子国家公安委員長兼拉致担当相が「在日特権を許さない市民の会」との関係を取り沙汰されたり、高市早苗総務相と極右団体代表との写真がネット上で批判されたりした時も、同様の「内外格差」があった。
南ア情勢に詳しい京都精華大の楠瀬佳子教授は、曽野氏のコラムについて「虐げられてきた黒人の歴史からすれば、人種隔離の容認なんてありえない。ある種の無知かもしれないが、許される話ではない」と指弾する。
国内メディアの報道ぶりについても「メディアの扱いも含め国際感覚が欠如している。経済優先で突っ走り『国としてどうあるべきか』といった議論を積み重ねてこなかったから、日本人は軽率になる」と手厳しい。
評論家の佐高信氏は「曽野氏は殻を破れていない子ども。世間にもまれず、甘やかされてきたから、自分の常識のなさが分からない。それでいてベストセラー作家だから、日本メディアは批判しにくい。お友達で周囲を固め、異論に耳をふさぐ安倍首相と似ている」と指摘した。
『東京新聞』(2015/2/17【ニュースの追跡】)
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