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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京「君が代」裁判第4次訴訟の傍聴報告

2016年05月03日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ☆ 次回第10回口頭弁論5月6日(金)16時 東京地裁527号法廷
  =3月4日、「君が代」裁判第四次訴訟第9回口頭弁論から=
 ◆ 不安・悩みを乗り越えて不起立へ


 たくさんの方が傍聴に来てくださり、ありがとうございます。10余名の方が法廷に入れなかったこと、申し訳ありません。
 始めに原告のKさんが弁論に立ちました。民間企業から都立高校教員になったKさんは、日々の教育活動の中で、教員の責任ある仕事に生きがいを感じていきます。そのような時に「10・23通達」が出されました。通達後初めての卒業式では、「君が代」斉唱時に立つか立たないかを「処分」という言葉とともにつきつけられることになります。
 式の前日の夕方、答辞を読むことになっている卒業生がKさんのところへお礼を言うために訪ねて、「先生のことも出てくるからよく聞いていてね」と嬉しそうに帰っていきました。
 しかしその時のKさんの頭の中は、この理不尽な職務命令を受け入れるかどうかで一杯で、心から祝う気持ちになれない罪悪感がありました。同業の夫と明け方近くまで話し込み、結局式の直前に、これからどうなるかわからない不安の中で立つことを決心しました。
 「私は強い人間だから我慢して立つことくらいできる。こんな通達には絶対に屈しない」とKさんは心を決めました。
 それでも「君が代」の間はこぼれる涙をどうすることもできずにボロボロ泣きながら立っていて、その後このことに触れると、発作のように涙が溢れ喋れなくなる状態になったといいます。「自分はちっとも強くないと初めて知りました」と語っています。
 通達後初めて迎えた卒業式は、Kさんにとってそのように辛いものでした。
 その後Kさんは、竹本源治の『戦死せる教え兒よ』の詩とともに教育活動に励みます。
 40代の終わりに夜間定時制高校に異動します。そこでの生徒を取り巻く環境は、初任校と比べても、はるかに過酷なものだったそうです。一日1食しか食べられない生徒、よくぞここまで生きてきた、と思うような生徒もたくさんいたそうです。担任として彼らと接しているうちに、そんな生徒一人ひとりには、社会に出てからたとえ一人でも自信を持ってやっていけるだけの基礎的な力や自分で考える力をつけることが何より大事であること、自らのために努力すれば報われる社会、戦時中のように「お国」のためでなく、それぞれが自分自身のために人生を生きる社会を私たち大人が保障しなければならない、思うようになったと語っています。
 卒業までの4年間をかけて必死で生徒たちに語ってきたなかで、2013年3月の卒業式で初めて静かに座ったのです。
 ◆ 価値多元性こそ教育の要請である
 続いて、S弁護士が弁論に立ちました。
 S弁護士は、今から半世紀前の1968年8月20日にソ連の戦車7000台と62万人の軍隊侵攻によって、「プラハの春」が制圧されたことから弁論を始めました。
 その2か月後のメキシコオリンピックでは、チェコスロバキアの女子体操選手チャスラフスカが床運動でソ連選手と同点になったことを話しました。表彰台では、2つの国の国旗が並んで掲揚台に上がり、二人とも国旗に向かってまっすぐに立っていましたが、やがてソ連の国歌が演奏されるとチャスラフスカは首を右に曲げ国旗から顔を背けました。ソ連国歌が演奏されているあいだずっと、その姿勢をとり続けました。ソ連の国旗に敬意を表することができなかったのです。演奏が終わると姿勢を充に戻しました。彼女は満面の笑顔で歓声に応えました。その姿は衛星中継で世界中にテレビ放送されました。そして多くの人々に感銘を与えました。
 S弁護士は、チャスラフスカの例を出して、被告都教委の「自国のものであれ、他国のものであれ、国旗・国歌に敬意を表しないのは、周囲から批判を受ける行為である」という主張を批判したのです。
 チャスラフスカの例をとると、このようなことを言う人は逆に世界中から批判を受け、笑い者になったことでしょう。この裁判で被告が主張しているのはそういうことだと言いました。
 「2003年10月23日以来、都立学校の多くの教職員たちが葛藤し悩み苦しんできました。長い教職員人生のなかで懲戒処分に脅かされる機会が毎年必ず訪れてくることの重みと辛さは、想像をはるかに超えるものがあります。処分が重いか軽いかにかかわらず重く辛い試練です。それでもなお起立斉唱命令に従えないという思いに教職員たちは駆られます。それは、価値多元性こそが教育の本質的要請であると思うからです。起立斉唱しなければならないという特定の価値観を生徒たちに教え込んではならないという教職員としての職責意識があるからです」と語り、
 「10・23通達が出されてから12年余りが経ちました。都立学校における価値多元性の否定をこのまま続けていてよいものかどうか。どうか裁判所にはあらためて慎重にお考えいただきたいのです」と弁論を締めくくりました。
 報告集会では、傍聴した法科大学院生が「お2人とも感動的な陳述。通達は、生徒から自分で考える機会を奪っていることがよく分かった」と発言し、大きな拍手を受けました。
『ぽこあぽこ』 東京「君が代」裁判第4次訴訟原告団 第10号(2016年3月14日発行)
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