◆ 自治の私物化を許さない
府・市議会が「協定書」を否決
第二回万博、リニア、カジノを呼び観光客を増やし、大阪都構想は住民投票で、と主張する橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)だが、大阪府議会と大阪市会はそれぞれ10月27日本会議を開き、「都構想」の協定書を否決した。橋下市長の大阪都構想批判を『新社会大阪』(11月号)で明らかにしているのでその概要を転載する。
◆ 住民説明不足75%
住民の意識はどうなのか、10月1日付の『読売新聞』が9月下旬に行った世論調査の結果を報じている。その記事の見出しはこうなっている。
「大阪都構想『賛成』53%、大阪市民 維新手法『評価せず』68%」、
「都構想理解進まず 住民へ説明不十分75%」。
なかなか興味深い調査結果である。
都構想への賛否は、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせて53%で、「反対」と「どちらかといえば反対」を合わせて40%となっている。
ところが、都構想の内容についての認識では、「良く知っている」が6%、「ある程度は知っている」が39%で合計45%。
これに対して「あまり知らない」38%、「全く知らない」17%、合計55%となっている。
つまり、中身を知らないままに「賛成」としている市民が少なからずいるということだ。
これについて、橋下は「車を選ぶ時にエンジンの仕組みなんか、皆さんは知る必要ない…問題があったら買い替えたらいい」と言う。
確かに協定書は672ページにのぼる膨大なもので、その全部は一人ひとりの市民が知る必要はないとしても、この比喩にはすり替えがある。
車は買い替えることができても、「大阪都」は、そうはいかないのだ。
◆ 権限も財源も吸上げ
想定される特別区には、何ら「特別」な権限も付与されるわけではない。
これまで大阪市が有していた都市計画の決定権限は大阪府に召し上げられ、街づくりは中核市以下となる。地方交付税は大阪府分と特別区分は一括して府に交付され、配分は府が行うことになる。
はたして、特別区がその事務分担に見合うだけの財源を保障されるのかどうか、おそらく、特別区が府にコントロールされてしまうのではないか。
東京でも都区の財政調整の権限は都知事が持っているが、東京都は財源が豊かな不交付団体であり、都区が共通の利益を分け合うことが出来る。しかし、財源の乏しい大阪府と特別区の間では激しい分捕り合戦が必至である。
ちなみに、5つの特別区のうち、「東区及び南区は裁量経費はもとより基準財政需要額を賄う財源さえない状況」(第16回法定協提出資料)であることを維新自身が認めている。これをみても、「都構想」に道理はないといえよう。
都市計画税も事業所税も全部が府税となり、特別区に対する交付金は府の裁量に委ねられることになる。
◆ 特別区は窓口業務だけ
特別区が単独で処理しえない事業は一部事務組合で担うこととされている。名前は「一部」だが、行政事務の大半が一部事務組合で担うこととなり、特別区は単に窓口業務だけになってしまうのではないかと市幹都OBは危惧している。
そして、これでは二重行政の解消どころか、屋上屋を重ねるだけとなってしまう。
一部事務組合には議会が設置されるが、その議員は直接選挙ではなく、構成する自治体の議会から選ばれるため、住民の意見は反映されにくいものとなる。
事務執行を担う職員の人数は、同じ人口規模の東京都の特別区と比較して、大阪府の特別区は1000人以上も少なく、近隣の中核市と比較しても人ロ一人当たりの職員数は半分以下に過ぎない。
議員数も少なく、湾岸区は能勢町や河南町と同数で、中央区も岬町・熊取町より少ない。
このように、協定書は問題山積であり、とても住民投票にかけられるような代物ではない。
10月10日の府議会本会議で、法定協の府議メンバーを会派比率に応じた構成に変更するよう求めた動議が可決された。
松井知事が再議を求めたのに対し、議会は再度同じ議決をして、維新は法定協でも少数派になった。単独では、ばたばたと進めた維新だが、今度は開催しないという手に出るだろう。
◆ 専決処分はできない
次の議会に再提出しても、議会構成が変わらない以上、可決はあり得ない。また、非常手段として統一自治体選挙の投票日に合わせて住民投票を行うという専決処分を強行することをにおわせている。
統一自治体選挙の投票日は4月12日に決まっている。住民投票は実施の60日前に告示する必要があり、2月12日には告示しなければならない。ところが、選挙のある年は議会の開催時期が早い。本来専決処分は議会休会中に災害対策など緊急を要する場合に認められるものであり、議会開会中にもかかわらず行うことはできない。
「住民投票の実施を求める住民投票」も、直接請求が成立しても市会で否決されることは読み込み済みのパフォーマンスに過ぎない。
維新に残された方法は、統一自治体選挙で府議会と大阪市会で過半数を獲得することだけである。それだけに、今度の選挙はかつてなく大きな意味を持つことになる。都構想を阻止するためのべターな選択をしなければならない。(あ)
『週刊新社会』(2014/11/18)
府・市議会が「協定書」を否決
第二回万博、リニア、カジノを呼び観光客を増やし、大阪都構想は住民投票で、と主張する橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)だが、大阪府議会と大阪市会はそれぞれ10月27日本会議を開き、「都構想」の協定書を否決した。橋下市長の大阪都構想批判を『新社会大阪』(11月号)で明らかにしているのでその概要を転載する。
◆ 住民説明不足75%
住民の意識はどうなのか、10月1日付の『読売新聞』が9月下旬に行った世論調査の結果を報じている。その記事の見出しはこうなっている。
「大阪都構想『賛成』53%、大阪市民 維新手法『評価せず』68%」、
「都構想理解進まず 住民へ説明不十分75%」。
なかなか興味深い調査結果である。
都構想への賛否は、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせて53%で、「反対」と「どちらかといえば反対」を合わせて40%となっている。
ところが、都構想の内容についての認識では、「良く知っている」が6%、「ある程度は知っている」が39%で合計45%。
これに対して「あまり知らない」38%、「全く知らない」17%、合計55%となっている。
つまり、中身を知らないままに「賛成」としている市民が少なからずいるということだ。
これについて、橋下は「車を選ぶ時にエンジンの仕組みなんか、皆さんは知る必要ない…問題があったら買い替えたらいい」と言う。
確かに協定書は672ページにのぼる膨大なもので、その全部は一人ひとりの市民が知る必要はないとしても、この比喩にはすり替えがある。
車は買い替えることができても、「大阪都」は、そうはいかないのだ。
◆ 権限も財源も吸上げ
想定される特別区には、何ら「特別」な権限も付与されるわけではない。
これまで大阪市が有していた都市計画の決定権限は大阪府に召し上げられ、街づくりは中核市以下となる。地方交付税は大阪府分と特別区分は一括して府に交付され、配分は府が行うことになる。
はたして、特別区がその事務分担に見合うだけの財源を保障されるのかどうか、おそらく、特別区が府にコントロールされてしまうのではないか。
東京でも都区の財政調整の権限は都知事が持っているが、東京都は財源が豊かな不交付団体であり、都区が共通の利益を分け合うことが出来る。しかし、財源の乏しい大阪府と特別区の間では激しい分捕り合戦が必至である。
ちなみに、5つの特別区のうち、「東区及び南区は裁量経費はもとより基準財政需要額を賄う財源さえない状況」(第16回法定協提出資料)であることを維新自身が認めている。これをみても、「都構想」に道理はないといえよう。
都市計画税も事業所税も全部が府税となり、特別区に対する交付金は府の裁量に委ねられることになる。
◆ 特別区は窓口業務だけ
特別区が単独で処理しえない事業は一部事務組合で担うこととされている。名前は「一部」だが、行政事務の大半が一部事務組合で担うこととなり、特別区は単に窓口業務だけになってしまうのではないかと市幹都OBは危惧している。
そして、これでは二重行政の解消どころか、屋上屋を重ねるだけとなってしまう。
一部事務組合には議会が設置されるが、その議員は直接選挙ではなく、構成する自治体の議会から選ばれるため、住民の意見は反映されにくいものとなる。
事務執行を担う職員の人数は、同じ人口規模の東京都の特別区と比較して、大阪府の特別区は1000人以上も少なく、近隣の中核市と比較しても人ロ一人当たりの職員数は半分以下に過ぎない。
議員数も少なく、湾岸区は能勢町や河南町と同数で、中央区も岬町・熊取町より少ない。
このように、協定書は問題山積であり、とても住民投票にかけられるような代物ではない。
10月10日の府議会本会議で、法定協の府議メンバーを会派比率に応じた構成に変更するよう求めた動議が可決された。
松井知事が再議を求めたのに対し、議会は再度同じ議決をして、維新は法定協でも少数派になった。単独では、ばたばたと進めた維新だが、今度は開催しないという手に出るだろう。
◆ 専決処分はできない
次の議会に再提出しても、議会構成が変わらない以上、可決はあり得ない。また、非常手段として統一自治体選挙の投票日に合わせて住民投票を行うという専決処分を強行することをにおわせている。
統一自治体選挙の投票日は4月12日に決まっている。住民投票は実施の60日前に告示する必要があり、2月12日には告示しなければならない。ところが、選挙のある年は議会の開催時期が早い。本来専決処分は議会休会中に災害対策など緊急を要する場合に認められるものであり、議会開会中にもかかわらず行うことはできない。
「住民投票の実施を求める住民投票」も、直接請求が成立しても市会で否決されることは読み込み済みのパフォーマンスに過ぎない。
維新に残された方法は、統一自治体選挙で府議会と大阪市会で過半数を獲得することだけである。それだけに、今度の選挙はかつてなく大きな意味を持つことになる。都構想を阻止するためのべターな選択をしなければならない。(あ)
『週刊新社会』(2014/11/18)
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