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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー(2)

2014年06月23日 | フクシマ原発震災
たんぽぽ舎です。【TMM:No2194】2014年6月10日(火)

  《人民新聞 6月5日号 No.1517より》
 ▼ 福島を忘却させるための情報隠し
   自民党政権の福島を忘れさせよう作戦

 小出裕章(京大原子炉実験所)(下・2回連載)

 ◇ 事故原発で働く外国人労働者
 原発がどうなっているのかを示すデータの発表が、どんどん少なくなっています。私自身も、情報が得にくくなって、手探りで現状を把握せざるを得なくなっています。
 汚染水問題にしても、私は2011年の事故当初から地下水が汚染され海に流れ出ていることを指摘してきましたが、東電と政府は2013年末になってようやくその事実を認め、その後も漏水事故が断片的に報道されるだけです。
 これらは、自民党政権の福島を忘れさせようという作戦展開の結果です。これまで以上に意識して情報を集め、発信しなければならない私たちの責任は、重くなっています。
 なかでも、福島の子どもたちの甲状腺検査結果を、本人にも知らせないという情報統制は、目にあまります。
 福島の人は、復興をめざす人も含めてみんな不安を抱えています。国に捨てられてしまったのだから、福島に踏みとどまるしかないという苦しい選択の中で、生活をしているわけです。不安の中で生活しているからこそ、地域の汚染状況、子どもたちの健康状態について全ての情報を開示・提供することは、必要不可欠だと思います。
 被曝に関して今最も隠されていることは、たぶん外国人労働者の存在だと思います。事故原発の現場でどれほどの外国人労働者が働いているのか、断片的な情報しか漏れてきません。
 今年2月にタンクから約100㌧の高濃度汚染水があふれ出るという漏水事故がありましたが、ポンプを担当する労働者とタンクを監視する労働者の言葉が通じなかったのが、主な原因のようです。十分な意思疎通のできない人々が、現場で被曝しながら働いているのです。外国人労働者が事故原発で働いているとすれば、重大な問題です。人民新聞でも取材して事実を掘り起こして欲しいと思います。
 ◇ 原発の現状
 事故原発について最大の課題は、熔け落ちた核燃料をどうやって取り出すか、です。メルトダウンした核燃料がどこにどんな状態であるか、もわからないまま、とにかく冷やすために、3年以上水をかけ続けています。当然の結果として、汚染水が増え続け、東電は、タンクに貯めようとしています。
 でも、敷地全体が猛烈な汚染環境なので、時間と手間をかけてしっかりしたタンクを作る余裕がないのです。現場労働者の被曝線量が蓄積されるので、鋼板をもってきて、パッキンを挟んでボルトで締めるという簡易型タンクを、短時間で作業し終えるしかないのです。タンクへの配管作業もできないので、ホースでつなぐという現状です。
 結果、汚染水が漏れ出るという事故が容易に発生するのです。原発敷地面積は限られているので、タンクの増設もいずれ行き詰まります。近い将来、タンクに貯めた汚染水を海に流さざるを得なくなるでしょう。
 さらに言えば、原発建屋・縦坑・トレンチ・ピットという構造物は、全てコンクリート製なので、地震による破損箇所から、汚染水が日常的に流れ出ているはずです。毎日600トンの地下水が原発敷地の地下を流れているので、これが汚染水と混ざって海に流れ出ています。
 どうすればいいのか?ですが、もう、水による冷却を諦めるべき時期だと思います。そもそも使用済核燃料は、ガラス固化体にして、地下300メートルの固い岩盤を掘って保管するという計画を進めてきました。使用済核燃料は、「地下水と接触させない」ことが最も肝心な条件だからです。
 緊急事態で他に方法がなかったとはいえ、水による冷却は、やってはいけないことを意図的にやり続けているのです。3年も経ったのですから、崩壊熱は随分減っていますし、別な方法を模索すべきです。
 私は、1年ほど前から(1)金属による冷却、(2)液体窒素を使う冷却、(3)空冷方式などを提案してきました。水による冷却は、遠からず破綻します。別の冷却方法を大急ぎで模索すべきです。
◇ 4号機の使用済核燃料の取り出し
 メルトダウンした1~3号機から大気中に吹き出したセシウム137は、日本政府発表では、広島原爆168発分だとされています。ところが、4号機の使用済核燃料プールの中には、広島原爆に換算すれば約14000発分のセシウム137が保管されているのです。これが環境中に放出されれば、日本はおろか北半球全体が深刻な汚染を免れません。
 4号機の原発建屋は、水素爆発で最上階は吹き飛び、核燃料プールが埋め込まれている階の壁が壊れてしまい、燃料プールは宙吊りのような状態でかろうじて建っているのです。少しでも危険性の少ない場所に移動させることは、何としてもやり遂げねばならない重要作業です。
 ただし、建屋の爆発で燃料を移動させるための交換機、キャスクを吊り上げるためのクレーンも全て破壊され、使用できなくなりました。このため東京電力は、リスクを承知で建屋最上階を完全に撤去し、新たに巨大な建屋を建設してクレーンを設置し、燃料交換機を取り付けて、昨年11月にようやく取り出し作業を始めました。
 今後、キャスクを釣り落としたり、燃料棒が引っ掛かって抜けなくなったりというさまざまなリスクはありますし、労働者の被曝も伴うのですが、一刻も早くやり遂げねばならない絶対必要作業です。私は東電が大嫌いですが、この件に関して東電は、よくやっていると評価できますし、エールを送りたいとも思います。
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