徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

ミトコンドリアと真核生物

2010年10月13日 | 生命
引き続き生命進化の話である。先に述べた生命発生は普遍的な話で、水と紫外線と熱水噴出があれば地球以外の惑星でも容易に起こりそうな現象である。特に温度に着目すると4℃以上の海水と300℃以下の熱水が硫化鉄の泡を介して触れ合えばよいので、20℃前後の生ぬるい環境が必要という訳ではなく、生命の発生条件は拡大する。
さて、問題はその後である。真菌たる原核生物はATPを生成するプロトンポンプをその細胞膜上に持っており、その細胞膜に穴が開くと電位差の維持が出来なくなり即死する。よって、それを細胞壁で頑丈に守る必要がある。また幾何学の基礎では、球の表面積は直径の二乗に比例し、体積は三乗に比例する。細胞膜上にプロトンポンプを持つ原核生物はその幾何学上の制限により大きくなれないのである。直径が大きくなると体積に相対して表面積が少なくなり細胞を維持するエネルギー生成が出来なくなるのである。また頑丈な細胞壁は捕食を不可能にする。原核生物の生存戦略は、大きくなって敵を捕食する弱肉強食原理ではなく、小さいまま早く増殖しリソースを奪う事である。早く増殖するには単純なDNAである必要があり、生命の複雑化という道筋は辿れない。原核生物は進化の袋小路で行き止まるのである。
リン・マーギュリスは1967年6月に有名な細胞内共生説を発表した。我々の細胞内の組織であるミトコンドリアや植物の葉緑体は、元来は別の生命であったのが捕食の際に取り込まれ共生を始め、今に至っているという説である。現にミトコンドリアは細胞核とは別の独自のDNAを持っており母系遺伝をすることは良く知られている。
ミトコンドリアは数ミクロンの大きさで、ひだひだの二重壁を持ち、非常に効率的にATPを生成する組織であり、これは元々独立した原核生物であった。我々の細胞内にはこのミトコンドリアが細胞あたり100-数千個存在しており、全部で体重の約10%を占める。原核生物と真核生物の違いは字義からくる核の違いより、このミトコンドリアによる差が大きい。
ミトコンドリアを持つ真核生物はそのエネルギー代謝を細胞膜ではなくミトコンドリアが受け持つことで幾何学的2/3乗則の呪縛から解き放たれ、硬い細胞壁も不要とした。ここに細胞の巨大化、捕食及び多細胞化の道が開けたのだ。つまり弱肉強食の進化への道がミトコンドリアにより開始したのである。そしてこの共生というイベントが偶々起こったことで知的生命への可能性が開けたが、これは必然的な事象ではなく奇跡的な偶然と捕らえたほうが良い。恐らく地球外生命探査を続けると原核生物様の生命体はある確率で見つかるであろうが、真核生物タイプが見つかるかどうかは疑わしい、この件は地球外知的生命体探査(SETI)問題であるフェルミ・パラドックスの結論とも関わる問題である。

生命の発生

2010年10月13日 | 生命
原初問題への疑問が私の知的興味の主なものである。宇宙の始まり、生命の始まり、人類の始まり、文明の始まり、日本人の始まり等々...
宇宙の始まりの次は生命の始まりの謎であろう。実は生命は比較的簡単に発生するのである。ところがそこから我々にいたる道筋で奇跡に近いような偶然が働いている。
生物の分類で最も基本的なものは界・ドメインである。全ての地球上の生物は、真菌界(原核生物)、真核生物界、古細菌界の3ドメインに分類される。古細菌(アーキア)は最近になって見つかったドメインで以前は真菌とごっちゃになっていた。
この3ドメインの生物に共通する機構がDNAとプロトンポンプによるATP代謝である。すべての生物はDNAを持つ。実は後に述べることになる”わがままな遺伝子(R.ドーキンス)”によると生物がDNAを持つのではなく、生命の本体はDNAでそれが生物の殻をまとっているという、とんでもない真実が語られている。そしてプロトンポンプ。ATP(アデノシン3燐酸)は生体内のエネルギー通貨であり呼吸、発酵により生成されATPがADP(アデノシン2燐酸)と燐分子に分解するとき生命活動に必要なエネルギーを放出する。このATPを生成するのがプロトンポンプであり、全生命に共通のメカニズムとなっている。プロトンポンプは膜に開いた穴に付随するタンパク質で、この穴をプロトン(水素イオン)が通過するとタンパク質の腕が回転し一回転で3個のATPを生成する。プロトンがこのプロトンポンプチャンネルを通過するのは膜の内外の電位差である。膜の外側が正電位で内側が負電位を持つ場合、正の電荷を持つ水素イオンは外から内に流れ込もうとし、プロトンポンプを回す。つまり生体エネルギーは膜(細胞膜)の内外の電位差によって生じるのである。
この電位差によるエネルギー生成は全生命に共通であり生命発生のヒントを与えている。最近生命の発生のステージとして深海底のブラックスモーカー:熱水噴出孔が注目されている。約40億年前の地球には、いたるところに熱水噴出孔があった。そして海水は太陽からの紫外線(オゾン層無し)で分解し軽い水素は宇宙へ拡散し海は酸化していった。一方マントルからの熱水は還元電位を維持しており海との間に電位差を生じる。また、噴出孔付近には硫化鉄の微小な泡が膜構造を形成する。ここにプロトンポンプの原型であるATPアーゼがくっつけばATPの生成が始まるのである。これらの事は”Power,SEX,Suicide:ミトコンドリアが進化を決めた、N.レーン”のひき写しである。詳しくはそちらを参照されたし、であるが原初生命がフルメタルジャケットであったとしたら驚きである。ちなみに、今でも熱水噴出孔のあたりでは白瓜貝や蟹、バクテリア等の生物が繁殖している。太陽光の全く射さない深海底で生命活動を維持できるのは未だに熱水の酸化・還元電位を利用しているからである。

宇宙の始まりと質量・エネルギー保存則

2010年10月13日 | 物理
我々は幸せな時代に生きている。宇宙の構造と成り立ちは人類が文明を持って以来の最大の謎である。その知見がこの直近30年の間に大幅に進んでおり、それ以前の人類の知らなかった宇宙に関する謎が解き明かされつつある。ソクラテスもニュートンも孔子も老子もカントもヘーゲルもこの答えを知らずに悶々として死んだのであるが、幸いにも私はこの件に関してある納得をすることが出来ている。過去7000年の間に生きた全人類の、誰もが知りたいと思いながら知らずに死んでいった真実を、今の時代に生きる我々は知ることが出来る。これは幸せなことである。
宇宙の原初に関して私の基本的な疑問はビッグバンによって無から宇宙が生まれたとしたら質量・エネルギー保存則はどうなるんじゃい!という点であった。無から有が生まれるとしたら保存則は否定される。ちなみに質量とエネルギーは例のE=MC2で変換可能であるので、ここでは同一のものとして問題は無い。
宇宙の始まりをざっとおさらいすると、プランク距離の範囲で沸き立っている粒子対が微小確率でトンネル現象を起こしプランク距離を逸脱しその相転移による過冷却エネルギーの解放でインフレーションが起こり、その後膨張を続けている、というものである。
Wikiを見ても上記の様な説明で終わっているし、最近のニュートン(雑誌)の宇宙特集でもそんなものであった。しかしこれでは納得できない。無から有の宇宙が飛び出してきたのか?保存則は否定されるのか? プランク距離内における粒子対の発生は納得できる。なぜなら対はプランク時間内に再結合してトータル・ゼロに戻るからだ。
インターネットもこの30年間における革命的な発明である。私は上記の疑問に関する答えをインターネットで知ることが出来た。負の値を持つ重力エネルギーがその答えである。
重力エネルギーが負の値を持つことは球殻内での重力ポテンシャルの思考実験で説明できる。球殻内では何処でも無重力であるが球殻自体は収縮しようとする。これは無重力に向かってポテンシャルを減少させゼロに収束する事を示す。つまり最もくっついた状態が最大のエネルギー状態=0でそれ以外は負のポテンシャルエネルギーを持つことになる。
ここまで書けば、答えはお解かりであろう。トンネルを起こした原初の粒子対はプランク長を超えて飛び離れる際に負の重力エネルギーを持つことになり保存則を保持するために正の質量・エネルギーでこれを埋め合わせる事が必要になる。そこで新しい物質が生まれ爆発的に離散することで、より大きな負の重力と正の質量が連鎖的に増大する。これが宇宙の誕生である。
これは結局のところ宇宙の総エネルギー(質量)は、重力エネルギーとの差し引きで、今でもほぼゼロ(プランク質量)であるという事である。私も貴方も実は重力エネルギーの影のような存在なのである。保存則は満たされた、そしてこの事実が不毛な真実かどうかは、見解の分かれるところである。

ブログについて

2010年10月13日 | 日記
娘にブログを始めたことを教えたら、自分の考えていることや感じたことを書いて欲しいと言われた。親ばかでは無いが、わが娘は妙に感性が尖がった部分があり侮れない。ご指導を受けてそんな事を書き綴って見たい。
趣味の一つに読書があるが、だいたい週に5冊ほどハードカバーの本を図書館で借りてくる。それを読みきるかどうかはまちまちで、読んでしまうこともあれば、全く手を付けないこともある。読書は好きである、私が知らない新しい知識、アイデア、概念が吹き出てくるような本と出合った時には読後に深い満足感を感じる。
このブログに色々書いて見たくなった。宇宙の始まりと質量・エネルギー保存則、量子の謎、エンタグルメント、生命の発生、ミトコンドリアと真核生物、非ダーウィン進化論、わがままな遺伝子、鳥と恐竜の肺、裏返しの眼の構造と脳の左右逆転、ニューラルネットワーク、脳の構造と働き、脳の恋愛スイッチ、意識とは何か、脳とカオス、人体の体節構造、水辺における人類の発祥、ミトコンドリア・イブ、文明の発生と気候変動、鉄・病原体・銃、アンティキテラ、出雲と大和、卑弥呼と天照、邪馬台国と宇佐神宮、魏志倭人伝、問題と縄文、天皇家と伽耶王朝、渡来人・台湾漢民族との類似、ソーラーシステムは買いか?、自作井戸堀、CO2温暖化説の欺瞞、太陽黒点と気候・スベンスマルク説、フェルミ・パラドックス...
そう、知識は人生を豊かにするという単純なものでもない。例えば、わがままな遺伝子とフェルミ・パラドックスの指し示す概念は不毛な地平を示しており、知らない方がきっと安心して死ねる。追々その内容も含めて述べていくことにしよう。何れにせよ、私は知らないで死ぬより、知ることを欲す。