酒井治はアラスカから戻って自然を描いた作品も描きましたが、偉大な自然から独自のイメージを広げ次のような作品を残しました。皆さんはこの絵を観て、神話や妖精物語のようだと仰ってくださいました。そこで、私も想像の翼を広げてこの絵から物語を作ってみました。
誰も立ち入ったことのない美しい森がありました。そこには森のお城があり、二人の娘がいました。名前はヘレナとリディアといいます。2人はいつもお父様やお母様に内緒で森の湖にやって来ては自分たちの未来について話をするのでした。
姉のヘレナは強くてたくましい王子様が現れることを望みました。妹のリディアは優しくて歌の上手い王子様が現れることを望みました。二人は毎日毎日湖のほとりで待ちました。
あるとき、妹のリディアが白い白樺の木を見つけました。それはすらりと伸びていい香りを森中に広げていました。リディアは「これは、私の木よ。これからは毎日この木に挨拶をするわ」といって気に腕を伸ばしました。姉のヘレナも大地に根をしっかりつけた大きな檜木を見つけていいました。「これは私の木よ。これからは毎日この木にキスするわ」と言って木に腕を伸ばしました。こうして2人は以前にまして、この場所が好きになりました。
一年が過ぎ二年が過ぎ、木は次第に大きくなり三年が過ぎたころには、二人の木は森のどの木よりも高く大きくなっていきました。そして木の精は人間の姿に変えて二人の前に現れました。
おしまい