英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

毎日が行き詰ったら・・・

2010-11-01 | イギリス

ジェイン・オースティン「ノーサンガー・アビー」


オースティンが最初に手がけた長編小説。出版社が原稿を買い上げたにも係わらずすぐには出版されず、彼女の死後になって刊行された作品です。
当時流行しオースティン自身も読みふけったというゴシック小説のパロディと言われるこの作品。冒頭、主人公キャサリンが、そのゴシック小説にありがちである特異な生い立ちや、秘密めいた境遇をまったく持ち合わせてはおらず、ごくごく平凡な女の子であると紹介されます。ここに若きオースティンの並々ならぬ自信が感じられて微笑ましくなります。どんな普通の女の子でも、自分が描けばちゃんとした面白い小説になるんだ!という自信ですね。そして「たかが小説」とよく言われる風潮に反発し、「小説」を書く作家の地位向上をこの作品の中でも強く訴えかけています。
物語は大きく前半後半に分けられています。前半はキャサリンがバースを訪問し、そこの社交界に顔を出し始め、ヘンリーと出会い恋に落ちるまで。後半はヘンリーの実家(ノーサンガー・アビー)に招かれ、そのアビー(僧院)という名前から空想たくましく屋敷に隠された秘密にドギマギしちゃう日々が描かれます。そしてラストは急転直下キャサリンは奈落の底に落とされることとなるのですが・・・・


ゲゲゲの鬼太郎の歌詞じゃないけれど、
学校も試験も、会社も仕事もないオースティンの世界は、病んだ現代人をちょっとだけ癒してくれるのです。と、言うか、オースティンが読みたくなったら、その人は相当毒素がたまっている証拠ですよ。ご自愛ください。