英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

恋の策士が策に溺れる・・・

2010-12-01 | イギリス

ジェーン・オースティン「マンスフィールドパーク」

冒頭、オースティンお決まりのお家柄紹介です。「3人姉妹がおりました。2番目は玉の輿に乗り准男爵バートラム氏に嫁ぎ広大な屋敷マンスフィールドパークの女主人に。1番目はバートラム氏から聖職禄を与えられた牧師と結婚、夫と死別するが今もマンスフィールドパークに居を構えています。3番目は海軍の軍人といわゆる家名を汚す結婚をやっちゃって今や子沢山の貧乏暮らし。」この3番目の長女が今回のヒロイン、ファニー・プライスです。このファニー、伯父バートラム氏の計らいでマンスフィールドパークで暮らすことになったのですが、1番上の伯母からはとことん苛められ、バートラム氏の4人の子どもたちが食事にお呼ばれしてもファニーだけはいつもお留守番。みんなが舞踏会に出かけてもファニーだけはいつも暖炉に火も入れてもらえない寒い部屋でお留守番・・・、と、シンデレラの様なお話かいな?といった前半です。こんなマンスフィールドパークにロンドンでいかにも遊びなれしているクロフォード兄妹が登場し、平穏だったパークに恋の嵐が駆け抜けるといったのが中盤の展開・・・かな? このファニーちゃん、健気でいい子なのですが、何にでも赤面してイジイジ、イヤイヤばっかり。「ひっぱたきたくなるタイプの女の子」だもんだから、途中ちょっとうんざりしちゃいます。けれども自他共に認めるプレイボーイ、ヘンリー・クロフォードが自分の仕掛けたトラップに自らどっぷり嵌まり、さらに以前のトラップに引っかかって幸せを逃がしてしまう後半はなかなかに楽しめます。
数年ぶりにポーツマスにある実家に帰ったファニーが、すっかり上から目線で貧しい(でもちゃんと女中がいる家なのですが・・)我が家にあきれ果て、マンスフィールドパークに早く帰りたいと願うシーンもなかなかに俗っぽくって面白かったな。

オースティン作品はまったくと言っていいほど、その時代の世界情勢や時事に絡んだ話題は出てこないのですが、このマンスフィールドでは中米での植民地情勢の悪化やナポレオン戦争最中の海軍のポーツマスにおける状況などが若干ですがバートラム卿の渡航やファニーの弟ウイリアムの登場などに併せて紹介されています。

翻訳はかなり硬くて読み辛い。最近出た筑摩文庫版の方が良かったかな。