英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ブライトン

2007-02-17 | イギリス
ちょっと俗物的な保養地として有名なブライトンは、ロンドンから鉄道で約1時間ほどのイギリス南岸にあります。ロンドンでの発着駅はヴィクトリア駅。イギリス鉄道の良い点は、往復料金がとても安いということ。例えば片道10ポンドの料金が、もっとも安い「チープ・デイ・リターンチケット」だと10ポンド!なんてすごく得した気分になっちゃったりします。でもひょっとしたら、「行った人は必ず帰る・・・」わけですから、片道料金にそもそも含んでいるとの考え方でしょうか。それからラッシュ時を避ければ基本的に指定席を取らなくてもまず座れます。座席は車両によって指定席、自由席に分かれているのではなく、指定予約が入った場合のみ席毎に指定席を示すカードが置かれます。レストランの予約席のイメージです。ドアは内側に取っ手がなく、外からしか開けられない構造となっています。観覧車のドアといっしょです。降りる時は窓を押し下げて外の取っ手を回して開けます。終着駅だといいですけど、途中で降りる場合はけっこう焦ります。ドアが万が一開かなかったらと思うとドキドキしますね。
ロンドンを発った列車はしばらくは住宅地を走りますが、すぐに田園地帯へと出ます。そしてガトウィック(2番目に大きい空港がある)を通って長閑な丘陵地帯を抜けるとすぐにブライトンです。ブライトン駅に着く直前の景色は同じ形の住宅が丘の稜線に連なって、ちょと圧巻。ロンドンから1時間、ベットタウンとしても発展してします。
駅を降り、ちょっと南へ足を運べばすぐに海岸です。海岸線に沿って大きな通りがあり、ホテルやショップが軒を並べ、水族館や博物館もあります。そして何よりもブライトンの景観を決めているのが、海に向って長く突き出ている大きな桟橋(pier)。この桟橋の上には遊園地、ゲームセンター、レストラン、パブ、色々なショップが乗っかっており、やや前近代的ではありますが、子供から大人までが楽しめるテーマパークとなっています。桟橋上にあるトイレに入ると・・・・、用を足すところの下が直接海となっていたり・・・と、違う意味でスリルを味わうこともできます。すぐ横は海水浴場なのに・・・ね。
長く続く海岸は砂浜ではなく、玉砂利の様な丸い小石の浜です。
このブライトンの土産物屋で必ず売っているのが、「ブライトンロック」と呼ばれるスティック型のペロペロキャンディ。日本で言うところの金太郎飴です。これをタイトルとし、ブライトンを舞台に描いたのが、

グレアム・グリーン「ブライトン・ロック」

20世紀文学の巨匠、グリーンの代表作です。主人公は地元のチンピラを束ねている「少年」。冒頭から支配する「殺される恐怖」。事件の真相を知ることとなったウェイトレスの無垢な「少女」。事件の真相に疑問を抱いた「あけすけな年増女」の登場。観光客で賑わうブライトンの裏通りで繰り広げられる「乾いた人間関係」。硫酸の入ったビンを絶えず持ち歩く「少年」の希望とは。少年は自らが生み出す「恐怖」から逃れられるのか。
善と悪、正義と打算があたかも波の様に交互に打ち寄せるような哀しい物語となっています。
ラストのシーンを含めて映画「さらば青春の光」のイメージがダブります。この映画もブライトンが重要な舞台として描かれています。モッズチームのエース(あのスティングが好演)が実はホテルのベルボーイとして「イエス、サー」と客にかしずく姿を見てしまった時の哀しみ・・・とかね。
ブライトンが出てくる映画、他にも「モナリザ」なんて良かったですね。桟橋での追いかけっこのシーンなんて・・・。あとミスタービーンのTVシリーズの中でもブライトンを舞台にしたのがありましたね。ビーンの靴が車の上に乗って、街中駆け回るっていうやつです。
また、かつてブライトンで開かれた歌謡コンクールで「恋のウォータールー」を歌い優勝したのが、あの「アバ」ですね。保守党や労働党の大会が開かれたりもします。

私にとってのブライトンの想い出は、燦燦とした太陽ではなく、実は霧です。桟橋の突端で海を眺めていると、突然海風が吹いてきて沖から白い壁が押し寄せて来ます。わーすごいと思った瞬間、あたりは真っ白な世界へ。3m先も見えないような濃霧でした。あれだけ濃い霧だと幻想的というより恐いですね。

現在のブライトンは「ゲイ」のメッカとなっています。通りによってはイケメン男子はたいてい「ゲイ」だそうです。ご注意あれ。



(注)鉄道設備の記述は92年当時の旧国鉄ものです。


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