ポール・トーディ「イエメンで鮭釣りを」
イエメンのある大富豪から、イエメンの河で鮭釣りを可能にしたいという申し出がイギリスの不動産コンサル会社にもたらされる。顧客のリクエストに応えようとコンサル会社は、国立水産研究所に勤務するジョーンズ博士に白羽の矢を。砂漠の大地に、冷たい水でしか生きられない鮭を移すだなんて検討する価値もないと、博士はつれない返事を出すのですが・・・。このプロジェクトの話をダウニング街10番地の広報官が嗅ぎ付けたもんだから、話は一転あれよあれよと誰も止められないステージへと。
生真面目なジョーンズ博士が最初は拒絶し疑いを抱きながらも、コンサル会社の美人担当、そして同じく釣りを愛する大富豪との交流の中で、徐々にそのプロジェクトの中に積極的に係わり合う過程が描かれていくのですが・・・・。プロジェクトに係われば係わるほどジョーンズ博士と奥さんの関係は険悪になってくるし、首相官邸からの干渉も日増しに強くなってきます。
莫大な資金が当てられた巨大プロジェクトの顛末は?鮭は遡上するのか?イエメンの高地でフライフィッシングは実現するのか?・・・・・・ ジョーンズ博士の日記、関係者で交わされるeメール、手紙、プロジェクトを報じる記事、問題を追及する下院議事録、事情聴取記録、お蔵入りした自伝等々という体裁で語られる物語は、大真面目で、最高に可笑しく、そしてちょっと哀しい。
「釣りの前には階級も身分もない・・・・」
「釣りというのは信じることなんだよ」
この作品、ボランジェ・エブリマン・ウッドハウス賞受賞作とのこと。受賞者にはウッドハウス全集とブタ1頭が贈られたとか・・・
翻訳も読みやすく読後感も心地いい。今年前半で1番というのが個人的な感想です。
白水社の「エクス・リブリス」シリーズ。これからも楽しみです。
まりっぺさんもお薦め本がありましたら教えてくださいね。
いつも楽しく読ませていただいています。
新しい作家の本を買うのは(特にハードカバーは)すごく勇気がいるので、参考にさせていただいています。
今日初めてトラックバックさせていただきました。
それからブックマークにも入れてしまいました。
これからもいろいろな小説のレビューをよろしくお願いします。