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スカーレット・トマス「Y氏の終わり」
もはやこの手に取ることが出来るとは考えてもいなかった幻の本、ルーマス著「Y氏の終わり」。大学院生アリエルは、偶然にも立ち寄った古本屋で、その本を見つけてしまうのです。その本、読んだ者は必ず非業の死を遂げるという、呪われた本という言い伝えがあったのですが・・・・。
出てきます、出てきます。ダーウィンに、サミュエル・バトラー、ハイデッガーにデリダ、アインシュタインにシュレーディンガー・・・。まさかこの本で量子力学やビッグバンのおさらいをするとは思ってもいませんでした。そして、知らなかったな・・「ホメオパシー」。ホメオパシーとは、同種療法と訳されるもので、約200年前にドイツの医師ハーネマンによって提唱された療法だとか。その症状を引き起こしていると思われる物質を、あえて与えて治療しようとするものです。(酒を飲みすぎた次の日に迎え酒をやる、とはちょっと違う・・・・) 日本では馴染みがありませんが、欧米では根強い人気があるということです。キモはとにかく物質を信じられないくらい希釈するということ。そして震盪・・・みたいです。
誰もが持っており、様々なメタファーで形作られる「トロポスフィア」。ここへアリエルが行き来できるようになると・・、突然に、物語りは加速度的に、よりミステリアスに進み始めます。思考=物質、そして時間=距離となる、このトロポスフィアがちょっと今風で笑えます。歪んだ空間を前にしたコントロールパネルの機能などは、あたかもゲームセンターにあるガンダムの操縦席といった印象か・・・。3Dロールプレイングゲームのノリですね。ネズミの神様「アポロ・スミンテウス」は、バレエ「くるみ割り人形」に出てくるネズミの大将を思い出しちゃうし・・・、アリエルを追い詰める2人組みは、私の中では「ブルース・ブラザース」をどうしても連想してしまって、どうも緊迫感が・・・・。
裏切られ、肩すかしをくらい、失笑したり、置いてきぼりくらったり、引き込まれたり・・・といった忙しい読書体験でした。結局、アダムといっしょにたどり着いたのは・・・・、誰でも知っている・・・あそこ・・でしたか・・・。
色々と忘れ物をしちゃった後のような読後感です。
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