ちょっと前にご近所に古本屋が出来ました。どうも何処かから引っ越して来たようです。そこは以前は雑貨屋さんの店舗だったので大きな窓から本棚の列が見えます。前を通る度に入ろうと思うのだけど、どうしてもドアを開ける勇気がでません。それは、ドア正面に座って店番しているお婆さんの姿が堪らなく怖いからなのです。いつも格子柄の着物姿で凛とした姿勢で正面を向く視線は、隣のコンビニの駐車場からもはっきりと判ります。「冷やかしで店に入るな!」「雨に濡れた傘を店に持ち込むな!」・・・、罪深い気弱な私に、お婆さんは目だけでプレッシャーを与えてくれます。そう言えば、店内にお客の姿を見たこともないのです。
ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本」
NY在住の駆け出しの脚本家ヘレーン・ハンフが49年、ロンドン、チャリングクロス84番地にある古書店に手書きを書く。~こういう本で良い物があったら送ってくださいな。ただし料金は1冊5ドルを超えないように~ この注文に担当フランク・ドエル氏は丁寧な返事を書く。そこから始まる大西洋を跨ぐ手紙のやり取り。ヘレーンの手紙は時にフランクをからかい、励まし、そして感謝する。古書店の店員たちはそんなNYからの手紙を楽しみにするように・・・。戦後間もないロンドンは戦勝国にもかかわらず食糧は依然配給制。ヘレーンは古書店へのクリスマスプレゼントとして肉や卵を差し入れます。そして感激したフランクの奥さん、他の店員たちもNYに手紙を書くようになるのです。繰り返されるロンドンへの招待を、ヘレーンは来年は、来年は、と延ばし延ばし・・・。いつの日か手紙のやりとりは20年も続いていました。最後に古書店から届いた手紙には・・・・。
オーダーされる本のタイトルも興味深いし、だんだんと変化していくコンプリメンタリー・クローズも微笑ましい。本当に薄い文庫本ですが、記憶に残る本となりました。
さて、我が家の近所の古本屋さん。窓にホームページのアドレスが書かれています。検索してみると・・・・、けっこう、と言うか、かなり硬派なお店です。たぶん、商売はネット上で大半が行われているようです。
よし、今度は勇気を持ってドアをくぐってみよう。お婆さんに負けないぞ!
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